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2020年学会発表論文

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2020年学会発表論文

高齢運転者の交通事故と人視点の交通事故予防の展望
【論文】日本交通科学学会「日本交通科学学会誌」

著者:小菅英恵

わが国では超高齢社会を迎え,高齢の免許保有者の増加に伴う自動車交通事故リスクの増大が懸念されている.高齢運転者の認知症や認知機能の障害は安全運転を阻害し,認知機能は加齢とともに低下するため,わが国では,認知症の疑いのある高齢運転者集団へのハイリスクストラテジーの対策が重点的に講じられている.本論では、全国規模の高齢運転者集団を対象としたコホート研究など先行研究の知見を踏まえ,公衆衛生学の予防の概念,および心理学における交通事故リスク低減の階層的行動制御の考え方を背景に,交通事故リスク低減の人間行動を整理し,高齢運転者事故予防の展望を論じる.

掲載:日本交通科学学会誌, 20,3-13. 
職場の安全教育のための事故報告書・人的要因項目の作成
【学会発表】日本交通心理学会・日本交通心理士会「日本交通心理学会第85回・日本交通心理士会第17回合同大会」(2020/11/7)

発表者:小菅英恵・西田泰

職場でエラー未然策を体系立てて検討する,あるいは効果的な安全教育を計画するには,当該営業所の事故発生に関わるエラーを分析する必要があり,そのためには,エラー防止に有用な事故の人的要因項目データを長期的に収集可能とするツールや仕組みが不可欠である.本実践報告では,事故報告書の人的要因項目の作成のための考え方やその手続きを報告する.

掲載:日本交通心理士会第17回大会発表論文集,11-14.
県単位での地域内リスクの定量的把握に向けた指標の検討: 地域の戦略的交通安全設計に向けたデータ分析(1)
【学会発表】日本交通心理学会・日本交通心理士会「日本交通心理学会第85回・日本交通心理士会第17回合同大会」(2020/11/7)

発表者:小菅英恵・三上杏奈・西田泰

本研究では,①地域居住者の事故危害,②運転者が居住地で第一当事者(1当)となる各交通事故リスクについて,交通事故統計データから標準化人身事故比と相対人身事故比を算出した.結果,千葉県の高齢運転者が居住地で1当となるリスクは,普通乗用運転者ではエリア間で差が見られない一方で,軽貨物運転者では特定エリアでリスクが高かった.本研究の指標は,県単位での交通事故対策の対象者のターゲッティングが可能である.

掲載:日本交通心理学会第85回大会発表論文集,9-12.
運転頻度等問診票を用いた高齢運転者の実態把握:地域の戦略的交通安全設計に向けたデータ分析(2)
【学会発表】日本交通心理学会・日本交通心理士会「日本交通心理学会第85回・日本交通心理士会第17回合同大会」(2020/11/7)

発表者:三上杏奈・小菅英恵・影澤英子・金丸和行

本研究では,地域の戦略的交通安全設計(小菅・三上・西田,2020)を前提に,高齢運転者に対する効果的な事故防止対策を検討するための基礎研究として,高齢者講習の「運転頻度等問診票」を用いて高齢運転者の実態を把握することを試みた.約9千人分の高齢者講習データを収集し,主にエリアというグループレベルにおいて,高齢運転者の運転車種,運転頻度,運転意識の差異がどのように表れるのかを確認した結果,運転頻度との関連が示されたほか,運転理由や代替移動手段,状況別運転においてエリアの特徴がみられた.また,高齢運転者の認知機能低下のグループレベルでは,運転の自信の程度の差異を確認した.

掲載:日本交通心理学会第85回大会発表論文集,13-16.
運転行動診断票を活用した地域高齢運転者の不安全な運転行動のパタン化:地域の戦略的交通安全設計に向けたデータ分析(4)
【学会発表】土木学会「第62回土木計画学研究発表会・秋大会」(2020/11/15)

発表者:小菅英恵・菱川豊裕・三上杏奈・谷口綾子・佐々木邦明

本研究は,戦略的交通安全設計に向けた基礎的資料の収集のため,「高齢者講習」受講者約9千人の運転行動診断票のデータを活用し,地域高齢運転者の不安全な運転行動のパタン化を試みた.探索的因子分析の結果,不安全な運転行動は4つの潜在因子が示され,また,階層的クラスター分析の結果,行動は7つに分類された.これらの結果から,高齢運転者の不安全な運転行動は,“運転技能”と全般的な“情報の統合・制御処理″に関する機能不全の影響を受けること,さらには,a正常加齢,b正しい運転知識の未修得,c日頃運転する車両による認知・操作特性,d運転頻度の減少による知覚運動協応技能の困難,e「認知機能検査」で測定した記憶力・判断力低下という,複数の変数が相互に影響し合い形成,表出することを実証的に明らかにした.

掲載:土木計画学研究・講演集 (CD-ROM),62,29-05.
交通事故・ヒヤリハット体験と事故実態の差異に着目した地域高齢運転者のリスク把握:地域の戦略的交通安全設計に向けたデータ分析(3)
【学会発表】土木学会「第62回土木計画学研究発表会・秋大会」(2020/11/15)

発表者:三上杏奈・小菅英恵・西田泰

都道府県レベルの広域を対象とした交通事故対策の設計では,優先して対策すべき運転者集団の把握が重要である.本研究では千葉県を対象とし,高齢運転者を運転車種と居住エリアで分類し,高齢者講習で収集された運転頻度等問診票のデータ(高齢者自らが事故・ヒヤリ体験を回答する主観データ)とITARDAの交通事故統計データ(事故実態:客観データ)を用い,各集団の主観リスクと客観リスクを算出した.結果,主観・客観リスクに着目することで,リスクを過小評価(客観的に交通事故危害の危険性が高いにも関わらず,運転者自身は危険な経験が少ないと回答)している運転者集団を特定することができた.本データ分析の方法は,広域内で優先的に事故防止対策を行うべき高齢運転者集団の特定を可能にするため,戦略的交通安全設計における有用性が期待できる.

掲載:土木計画学研究・講演集 (CD-ROM),62,29-03.