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平成16年 第7回 交通事故・調査分析研究発表会

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平成16年 第7回 交通事故・調査分析研究発表会

1 自動車乗車中事故時の乗員車外放出についての調査研究
 自動車乗車中の乗員が、事故時に車外に放出されると重い障害を受ける。平成15年のデータによれば、自動車乗車中乗員の死傷者死亡率(死者数/死傷者数)が0.4%であるのに対し、車外放出された乗員のそれは29%と非常に高い。
 車外放出で死亡している人のほとんどがシートベルト非着用者である。その中でも後席乗員のベルト着用者率(自動車乗車中死傷者のうちのシートベルト着用者の構成率)が著しく低く、また、18歳以下が多い。これまでも事故時の車外放出防止策としてシートベルト着用推進が謳われてきたが、依然としてシートベルト着用者率は低い。
 本報告では、車外放出事故についてマクロデータおよびミクロ事故例調査データの両面から分析をおこなって事故実態を明らかにした。また、平成15年5月~9月に各都道府県警察の協力のもと、車外放出の事故例調査を実施し、つくば地区で得られたミクロデータと合わせて分析した。その結果、改めて車外放出事故の危険性とシートベルト着用の重要性を認識した。今後、交通事故死亡者低減のためにも車外放出事故の防止対策を実施していく必要がある。
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2 事故多発地点緊急対策事業の成果と今後の交通安全対策の方向性についいて
警察庁と国土交通省は、全国の幹線道路において、事故が多発する個所を対象に実施した「事故多発地点緊急対策事業」の対策実施状況と当該個所における事故件数を把握するため、「事故多発地点緊急対策事業フォローアップ調査」を継続的に実施してきた。
 当センターでは、国土交通省の委託により、同調査結果の整理を担当してきており、その一環として、平成15年度調査結果をもとに、同事業により得られた成果に関する総括的な整理を行った。その結果、対策完了後には、対策実施前と比較して年平均事故件数が約1割削減された事を確認した。また、今後、事業の成果を重視した行政運営が推進されることに鑑み、対策の効果を事前に推定する際に活用可能な基礎資料の提供を目的として、「事故類型別対策効果原単位(案)」を設定した。
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3 出会い頭事故における人的要因の分析
 出会い頭事故の発生に際して、車両運転者がどのようなエラーを犯しているのかを分析した。その結果、エラーのほとんどは交差車両、信号、一時停止標識についてのものであることがわかった。
 またエラーをおかした要因の大部分は、過去の成功体験(事故を起こさなかったという自信)を通じて“判断基準の切り下げ”が生じ、安全確認を省略したり、あるいは冷静な判断・予測ができなかった結果であることもわかった。ただし、交差点の見通しの悪さが運転者の負担を増し、エラーを助長している場合も多く、こうした見通しの悪い交差点の解消も望まれる。
 見通しを補助する手段としてカーブミラーが設置されている交差点も多いが、残念ながら有効に活用されている場合は非常に少ないという結果を得た。結局、出会い頭事故に限らず、事故に遭わないためには普段から防衛運転に心がけ、“判断基準の切り下げ”を防止することが重要ということである。
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