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平成15年 第6回 交通事故・調査分析研究発表会

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平成15年 第6回 交通事故・調査分析研究発表会

1 世界の主要な交通事故調査
交通事故の分析に欠くことのできない交通事故調査は、先進諸国においては1960年代から行われており、時代の要請や技術進歩によって変遷してきている。
 本報告では、FARSやCCISといった、アメリカやヨーロッパにおける交通事故調査の制度・内容等を明らかにするとともに、事故調査の標準化等を目指したSTAIRSやPENDANTの新しい方向性についても報告する。 ITARDAの活動が10年以上経過した現在において、先進諸国の事故調査とITARDAの現状を比較することにより、今後の我が国における事故調査のあり方を考える契機となることを目指した。
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2 マクロデータによる側面衝突乗員保護対応車体の乗員傷害軽減効果評価
 1998年以降の車には側面衝突時の衝撃吸収要件として乗員傷害値要件を満足することが義務づけられた。車両の側面に衝撃を受けた車において、この乗員傷害値要件を満足した乗員保護対応車体と従来の車を比べて、乗員の傷害軽減効果を明らかにすることとした。被衝突車の車体形状に注目するとともに、被衝突車が受ける衝撃程度を考慮しながら、死亡重傷者数の低減率を推定することとした。交通事故統合データを用いて分析した結果、乗員保護対応車体においては、それ以前の車に比べて約30%程度運転者あるいは前席同乗者の死亡重傷者数が減少することが確認された。
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3 電動車いすに係わる交通事故の分析と交通事故防止対策
 電動車いすに係る交通事故について、平成13年中の交通事故統合データ及び特別調査票(事故事例調査票)を活用した調査の結果を基に分析を行った。その結果、事故に関与している電動車いすは、80%以上がハンドル型(ハンドルで操作し、主に高齢者が利用)であることが判明した。また、高齢化社会の進展に伴い、電動車いすの事故が増加しており、その事故実態と事故原因を解明することにより、交通事故防止、被害軽減等を図るために各種低減を行うこととした。
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4 新規格軽自動車の衝突安全性向上
 1998年10月より車体が一回り大きくなり、衝突安全性の向上をうたった軽自動車が販売されるようになった。本報告では、当センターが保有するデータをもとに新型軽自動車(以下、新規格軽自動車)と従来規格軽自動車(以下、旧規格軽自動車)及び普通乗用車の傷害程度を比較分析したものである。分析の結果、新規格軽自動車は旧規格軽自動車と比較すると、事故に遇った場合の死亡率が半減し、普通乗用車並みの衝突安全性を有することがわかった。また、事故形態が前面衝突の新規格軽自動車と旧規格軽自動車の車体変形と乗員傷害の事故事例を紹介する。
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5 カーブ区間における事故防止対策の方向性
 様々な安全対策がなされていながらも、死亡割合が依然として高い「カーブ」という道路線形に注目し、事故例調査データ並びに現地調査、アンケート調査から、カーブ区間での事故の特徴や事故多発地点の実状について把握し、今後のカーブ区間における事故防止対策の方向性について考えることとした。その結果、事故を起こしてしまうか起こさなくて済むかは、運転に必要な「見る」という動作が出来ていても、「カーブを確実に通過出来る走行」をしているか、していないかという基本的な動作が大きな鍵を握っていることがわかり、今後の事故防止策には、視覚に訴える対策(警戒標識、視線誘導標、減速レーンマーキング等の設置)だけではなく、直接からだへカーブの存在を事前に知らせる対策を付加させることなどにより、「見る」という基本動作を確実にすることを促した上で、安全に通過出来る速度まで減速させ、車線を逸脱しない走行に誘導する必要性があると考えられた。
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6 自動車の走行環境(路面湿潤)と車外放出事故
 衝突や転覆などによって自動車乗員が車外に放出される事故は近年減少傾向にあるが、平成14年においても車外放出された死傷者1,057人のうち死者が304人(29%)となっており車外放出事故では重篤な傷害を被る危険性が高い。本報告ではこのような車外放出事故と道路種別、路面状況などとの関係について分析し、路面の湿潤時は乾燥時に比べ車外放出率が高い、速度別にみると車外放出率は61~70km/h付近から急激に高くなり、100km/h付近までは一般道路・湿潤路面・貨物車が最も高いことなどについて報告する。
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