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平成14年 第5回 交通事故・調査分析研究発表会

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平成14年 第5回 交通事故・調査分析研究発表会

1 追突事故発生要因の分析
近年、死者数は減少傾向にあるが、軽傷事故が増加の一途をたどっている。ここでは、軽傷事故の大半を占め、かつ増加傾向も顕著な自動車同士の追突事故に焦点をしぼり、交通事故統合データ、事故例調査データを用いて分析を実施した。その結果、
  1. 乗用車同士の追突で、被追突側が軽傷、追突側が無傷となる場合が圧倒的に多いこと
  2. 転者の年齢では若年層が追突されるよりも追突する側になる頻度が高いこと
  3. 一見、交通の流れを妨げるものがない単路であっても、沿道施設の出入り口や、中央分離帯の切り下げなどの目立たない分岐点で追突事故が多発していることなどを明らかにできた。
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2 チャイルドシートによる女児の保護に関する調査研究
 チャイルドシートの被害軽減効果を交通事故統計によって分析した。車の衝突部位によっては幼児が死亡重傷に至る割合が高い場合もあるが、チャイルドシートを使用することでこうしたケースにおいても被害軽減効果が認められた。また、警察の協力を得て、事故時に使用していたチャイルドシートに関する情報の収集を試みた。そのデータからは、多くの乗員にチャイルドシートの不正使用が認められ、それによって被害軽減効果が発揮されにくいことが確認された。
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3 交通弱者との事故に関する事故発生頻度の研究
 四輪車が衝突相手に及ぼす影響のうち、歩行者・軽車両乗員・二輪車乗員など交通弱者との事故発生頻度を評価した。交通弱者は、四輪車と接触すると、四輪車の乗員に傷害がなくとも、重大な傷害を受けることが多い。四輪車を乗用、貨物別に、種別として軽、小型、普通に区分し、それぞれの車種の事故に関与する割合を分析した。その結果、車両台数あたりの事故発生は、どの車種でも変わらないことがわかった。また、交通弱者との事故の発生率は、人口密度、信号機あたりの面積あるいは高齢者の構成率、自動車等台数あたりの貨物輸送量、免許保有者あたりの飲酒取り締まり件数等と関係があることがわかった。
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4 高齢者の交通事故発生状況の分析
 最近10年間の交通事故統合データを分析し、高齢者の人口当たりの死者・負傷者、運転免許保有者当たりの自動車等運転中死者・負傷者、致死率等を全年齢データと比較して高齢者の交通事故実態の厳しさを示した。高齢者事故増加の要因分析として、高齢者の過失が重い事故に注目して分析を行った。自動車・自二・原付運転中では出会い頭衝突事故が多い。法令違反では指定場所一時不停止等、ハンドル及びブレーキ操作不適が多い。歩行中では横断違反の横断歩道外横断、走行車両の直前・直後の横断、横断禁止場所の横断が多い。これら各項目の構成率は何れも全年齢での構成率より高い。高齢者の交通ルール軽視、及び、注意散漫、操作不適など心身機能の低下が要因の一部となったと考えられる事故が多いことが分かった。
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5 四輪車の前面衝突における高齢者の胸部傷害
第4回研究発表会で紹介したように、65歳以上の高齢者は16~64歳の一般成人に比較して、胸部に傷害を受けることが特徴であった。
 そこで本報告の事故例調査で胸部傷害の中でも比較的傷害程度の大きい胸部内臓損傷と肋骨骨折に分類しながら加害部位をみたところ、双方ともステアリングあるいはシートベルトとなっていることがわかった。特に、シートベルトが加害部位となった場合の肋骨骨折では、運転席乗員と助手席乗員との間に違いがみられ今後の被害軽減対策に対する基礎資料を得た。
 また、高齢者の傷害について統計的位置付けをするため、交通事故統合データを用いてシートベルト着用者でかつ重傷以上の運転者についてみると、高齢者は胸部に傷害を受け、それは普通乗用車の前面衝突で多く発生し、その加害部位はステアリングで最も多く発生していることがわかった。
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6「事故多発地点緊急対策事業のフォローアップ調査」の概要
 国土交通省と警察庁は平成8年度から、交通事故多発地点において、道路管理者と都道府県警察との連携により事故削減策を集中的に実施する「事故多発地点緊急対策事業」を推進している。
 当センターでは国土交通省からの委託を受けて、当該事業において対策の策定・実施状況と対策実施後の事故件数の推移を調査するために、事故多発地点フォローアップ調査を担当している。その結果、事後の評価期間が短く途中段階ではあるものの、緊急対策を実施した個所全体においては、年間の事故件数が約1割減少していることが確認できた。本報告では、その概要について述べる。
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