報告書概要


信号交差点における事故発生状況と人的要因分析  平成24年6月発行


1.目的

 本研究は、四輪車が関わる信号交差点事故について、四輪車の行動類型別に事故発生の特徴と人的要因を明らかにすることで、四輪車の予防安全機能を検討する上での基礎資料を得ることを目的とする。

2.分析方法

(1)平成20年〜22年までの交通事故統合データによる信号交差点事故の特徴分析
(2)同交通事故統合データによる四輪車(第1当事者)が関与した事故発生状況の分析
(3)平成12年〜21年までの交通事故例調査データによる四輪車運転者の人的事故要因の分析
(4)分析結果に基づく事故低減に向けた四輪車の予防安全機能の検討

3.結果の要約

(1)交通事故統合データによる信号交差点事故の特徴分析
  • 平成22年の交通事故発生件数は、約55%が交差点とその付近で発生し、その内の約30%(全体の16%)が信号交差点で発生している。
  • 事故の95%以上は、四輪車が第1当事者である。1当四輪車の「右折行動」時に最も多く発生し、次いで「直進行動」時が多い。
  • (2)交通事故統合データによる1当四輪車の事故発生状況の分析
  • 「右折行動」時の事故は、発生件数では四輪車、自転車が関与する事故が多く、二輪車、歩行者の関与する事故は重大事故(死亡、重傷事故)につながりやすい。
  • 事故の人的要因は、1当四輪車の「安全不確認」が大部分を占める(70〜90%)。
  • 1当四輪車側道路の幅員が大きくなるほど、対四輪車との右折事故が増加する。幅員が大きくなるほど、交通量が増加し、通行速度が上昇することから対向車の発見や右折可否の判断を難しくしている可能性がある。
  • 1当四輪車側道路の幅員が大きくなるほど、右折先の自転車および歩行者の進行方向は、「同方向」の割合が増加する。幅員が大きくなるほど、運転者の注意が前方の対向車線に向けられ、右折先の自転車や歩行者への注意が疎かになっている可能性がある。
  • 昼夜別に、自転車および歩行者の進行方向を見ると、夜間は「同方向」の割合が増加する。夜間は周辺が暗く、前照灯が届き難いことから「同方向」の自転車や歩行者が運転者から認識し難くなっている可能性がある。
  • 「左折行動」時の事故は、二輪車と自転車の巻き込み事故が多い。特に、自転車の巻き込み事故は、死亡事故の約60%を占めており、重大事故につながりやすい。
  • 「直進行動」時の事故は、昼夜を問わず出会い頭事故、追突事故が多い。夜間の横断中歩行者の死亡事故が多い。
  • 出会い頭事故は、「信号無視違反」が主要因である。
  • (3)交通事故例調査データによる信号交差点事故の要因分析
  • 「右折行動」時の事故は、対四輪車事故では、「何かの陰になって見えなかった」「漫然と右折開始」など、安全確認を怠り相手を見落としたことが主な要因である。また、相手を認知していたにも関わらず、「自分の方が先に行ける」等の相手の動静に対する判断の誤りが要因になっている。
  • 対二輪車、対自転車、対歩行者事故では、「対向四輪車に注意が向き」など、注意散漫による見落しが大きな要因になっている。
  • 「左折行動」時の巻き込み事故では、安全確認の省略による二輪車、自転車の見落としが主な要因である。また「対向右折車両に気を取られて」「左折先の道路を見ていて」など、注意散漫による見落とし事故が多く、複数の危険対象に対する注意配分の難しさが影響していると考えられる。
  • 「直進行動」時の追突事故は、「考え事」「脇見」など前方不注意による先行車の発見遅れが主な要因である。出会い頭事故は、前方不注意による赤信号の見落しが主な要因である。対自転車、対歩行者事故では、自転車、歩行者側の信号無視も多い。
  • (4)四輪車の予防安全機能の検討
      以上の要因分析をもとに、事故を起こした運転者の行動パターン(型)を分類し、それぞれについて予防安全機能を検討した。

      「右折行動」時の予防安全機能:
      (a)安全確認不十分型
       安全確認不十分による見落としが原因であり、対向車に早期に気付かせるための方策を検討
      (b)思い込み・安全確認省略
       油断や思い込みが原因であり、運転者の危険認知の感度を高めるための方策を検討
      (c)注意配分不適型
       注意散漫が原因であり、重大な危険に気付かせるための方策を検討
      (d)動静不注視・予測不適型
       相手の動静見誤りが原因であり、衝突の可能性を正しく認知させるための方策を検討

      「左折行動」時の予防安全機能:
      (a)思い込み・安全確認省略
       油断や思い込みが原因であり、運転者の危険認知の感度を高めるための方策を検討

      「直進行動」時の予防安全機能:
      (a)前方不注意型(追突防止)
       脇見、漫然運転による発見遅れが原因であり、先行車に早期に気付かせるための方策を検討
      (b)赤信号見落とし型(出会い頭事故防止)
       赤信号を見落としが原因であり、赤信号に早期に気付かせるための方策を検討


    目 次 (全173ページ)

    要 約

    第1章 はじめに
      1−1 拝啓
      1−2 目的
      1−3 分析に用いた交通事故データ
      1−4 分析方法

    第2章 信号交差点事故発生の特徴
      2−1 信号交差点事故における道路環境
      2−2 運転者の性別、年齢
      2−3 法令違反
      2−4 四輪車運転者の行動
      2−5 第2章まとめ

    第3章 四輪車の行動類型別事故発生状況
      3−1 1当四輪車の事故
      3−2 1当四輪車の「右折行動」時の事故
      3−3 1当四輪車の「左折行動」時の事故
      3−4 1当四輪車の「直進行動」時の事故
      3−5 第3章まとめ

    第4章 交通事故例調査データを用いた要因分析
      4−1 分析対象データの特徴
      4−2 「右折行動」時の人的事故要因
      4−3 「左折行動」時の人的事故要因
      4−4 「直進行動」時の人的事故要因
      4−5 第4章まとめ

    第5章 四輪車の予防安全機能の検討
      5−1 運転者の行動パターンと要因
      5−2 予防安全機能

    第6章 交通事故事例分析

    第7章 研究のまとめ