本報告では、近年注目されている歩行者事故に焦点を当て、(財)交通事故総合分析センターが保有する交通事故統合データベース(マクロデータ)、およびミクロ調査データ(ミクロデータ)を用いて、最近の歩行者事故の発生状況等を分析しました。以下に死亡事故における主な点を挙げます。
1.状態別、事故類型別から見た歩行者事故の特徴
・
状態別死者数において歩行者は自動車乗車中を抜き、最も多くなり、交通事故死者数の30%を超えています。また、歩行者の致死率は、交通事故全体の致死率の約5倍となっています。
・
死亡事故を事故類型別で見ると人対車両が最も多く、全体の30%を超えています。また、人対車両の死亡事故率は、正面衝突、車両単独に次いで高く、交通死傷事故全体の約3.6倍となっています。
2.マクロデータを用いた人対車両死亡事故の特徴分析
・
横断歩道外を横断中が最も多く、全体の約45%を占めています。横断歩道およびその付近の横断も合わせると横断中の事故が全体の約75%を占めています。
・
夜間の発生が多く、全体の約70%を占めています。
・
第1当事者の種別は四輪車が最も多く、全体の約80%を占めています。
・
第1当事者四輪車の行動類型では直進等速が最も多く、全体の約80%を占めています。
・
第1当事者四輪車の危険認知速度は、30km/hを超えると急激に件数が増加し、40−50km/hは最も多くなっています。
・
歩行者の年齢は75歳以上が圧倒的に多くなっています。
・
歩行者の致死率は、年齢とともに上昇し、75歳以上は40歳未満の約15倍になっています。
・
第1当事者直進時の歩行者の進行方向は、右から左への横断が最も多く、全体の約50%を占めています。
・
歩行者の人身損傷主部位は頭部が最も多く、全体の約60%を占めています。
3.ミクロデータを用いた人対車両死亡事故の特徴分析
・
夜間の人対車両事故は、交通閑散のため速度超過になりやすい上に、“前方不注視・漫然運転・他に気を取られ”により、歩行者の発見が遅れることで結果的に高い速度で歩行者に衝突することになり、死亡事故に至る確率が高くなると推測されます。
・
夜間、歩行者が右から横断してくる場合、横断開始地点は自車から遠くなり、歩行者を確認することは難しい。また、歩行者側から見ても右から横断時は横断可能かどうかの判断が難しくなります。以上から、死亡事故では右からの横断が多くなると推測されます。
・
低速であっても、車に轢かれたり、高齢者が車両の比較的硬い部分に頭部を衝突されるような状況では、死に至る場合があります。
・
夜間は、前方不注視・漫然運転が起きやすいため、夜間の事故が多い死亡事故の運転者の人的要因の主要因となっていると推測されます。
・
自車線への進入タイミングは衝突前の2秒前以下が全体の約80%であり、その時点で、歩行者を認識していない運転者に警報しても歩行者との衝突を回避することは非常に難しいと考えられます。右からの横断では横断開始タイミングで警報すれば、十分余裕が取れるが、左からの横断では余裕はあまり増加しません。
目次 (全114ページ)
はじめに
第1章 状態別、事故類型別から見た歩行者事故の特徴
1−1 状態別の分析
1−2 事故類型別の分析
1−3 第1章まとめ
第2章 マクロデータを用いた人対車両事故の特徴分析
2−1 事故類型
2−2 環境、道路
2−3 車両側の行動・要因
(1)当事者種別
(2)年齢・性別
(3)行動類型
(4)危険認知速度
(5)衝突部位
(6)法令違反
(7)人的要因
2−4 歩行者側の行動・要因
(1)年齢
(2)横断方向
(3)歩行者の人身損傷主部位
(4)法令違反
(5)人的要因
2−5 マクロ分析まとめ
(1)死亡事故
(2)重傷事故
(3)マクロ分析での不明点
第3章 調査対象ミクロデータ
3−1 調査範囲
3−2 ミクロデータの特徴
3−3 ミクロデータの特徴まとめ
第4章 ミクロデータを用いた詳細分析
4−1 死亡事故
4−2 重傷事故
4−3 軽傷事故
4−4 歩行者の自車線進入、および横断開始タイミング
4−5 ミクロ詳細分析まとめ
第5章 まとめ
付録1 調査ミクロデータ一覧表
付録2 調査ミクロデータ中横断中事故の概要図(衝突位置、横断開始位置)