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はじめに
1 ヘルメットのタイプと構造
2 ヘルメット着用状況および二輪車乗員の負傷状況
2.1 ヘルメット着用率および脱落事例での着用状況
2.2 ヘルメットの脱落と頭部負傷
3 ヘルメット種類別の乗員被害状況について
4.1 右直事故(二輪車が直進)
4.2 右直事故(四輪車が直進)
4.3 追い越し二輪車と右折四輪車の事故
平成13年中に全国で発生した交通事故による死者数は8,747人、負傷者数は1,180,955人で、このうち二輪車乗車中の死者数は1,566人で17.9%、また負傷者数は183,043人で15.5%を占めています。また、死者の損傷主部位別では、頭部:48.9%、顔部:1.0%、頸部:8.2%となっており、四輪車乗車中と比較して、頭部は約7%、頸部は約2%割合が高くなっています。
ヘルメットは二輪車の乗員保護のために重要な役割を担っておりますが、今回は二輪車事故において「ヘルメットの果たす役割」、および「ヘルメットを着用する上での注意」について、事故データを分析した結果を紹介します。
ヘルメットは図1に示す4種類が現在あります。そのなかには用途〔0.125L(125cc)以下用〕が表示されているものもあります。

ヘルメットは「二輪車事故における頭部負傷を軽減する」という重要な目的があります。適切に使用しないと、その効果が十分に得られません。以下、二輪車事故におけるヘルメットの着用状況および二輪車乗員の負傷状況を分析しました。
1993年から現在までに、茨城県つくば地区において、(財)交通事故総合分析センターで調査した280件の二輪車事故事例について、「ヘルメット着用率」を図2に、「ヘルメット着用時の脱落状況」を図3に、そして「ヘルメット脱落事例での着用状態」を図4に示します。

これによると、事故時に「ヘルメット非着用」は全体:280件のうち15.3%で、ヘルメット着用:192件のうち「ヘルメット脱落」は18.8%を占めており、平成13年中の二輪車事故全体におけるヘルメット非着用:2.0%、ヘルメット着用時の脱落:8.0%よりも、かなり高い割合となっています。そして、ヘルメット脱落:36件のうち「あごひもを締めていなかった、またはゆるめであったためにヘルメットが脱落した」ものが55.6%もあります。
このように、事故時に「あごひもの締め方が不適切であったためにヘルメットが脱落」するケースが大半で、それがヘルメットの脱落の主要因であるといえます。かぶったヘルメットを有効に機能させるためには「あごひもを正しく着用する(=しっかり締める)」ことが重要です。
ところで、“あごひもをきちんとしていた”にも拘わらずヘルメットが脱落した例は6件です。それらをタイプ別にみると、5件はハーフ形で、1件はタイプ不明です。ハーフ形の脱落5件のうち、衝撃後に脱落した例が3件、衝撃を受ける前もしくは衝撃を受けなかったのに脱落した例がそれぞれ1件づつです。
あごひもをきちんとしていても、脱落した例がハーフ形に集中して見られるのは、
保護範囲が狭く、頭部を覆う範囲に限りがあるので、ヘルメットが動き易く、ズレにつながる
等の理由によるものと推察されます。
ハーフ形ヘルメットの場合、構造上あごひもの締め方がヘルメット脱落に大きく影響しており、「あごひもを正しく着用する(=しっかり締める)」ことが極めて重要です。
二輪車事故事例全280件のうち、着非不明45件を除いた235件を対象にヘルメット着用、および脱落の有無による頭部傷害状況を比較すると、 図5のようになります。

ヘルメット非着用では、67.4%が頭部傷害を受けており、ヘルメット非脱落の30.8%に比べて高く、ヘルメット着用の効果が明確に現れています。
また、事故によりヘルメットの脱落が生じた場合、頭部傷害のリスクは非脱落時と比較して、負傷発生率で約2倍、死亡発生率で約4倍高くなります。事故時にヘルメットが脱落しないように、「あごひもを正しく着用」することが重要です。
ハーフ形、スリークォーターズ形、オープンフェース形、フルフェ−ス形といったヘルメットの種類別の乗員被害状況について分析しました。
二輪車事故事例全280件のうち、ヘルメットの種類が判明している228件を対象に分析すると、頭部、頚部、顔面に傷害を受けたケースは82件でした。これらのうち頭部、頚部、顔面を“頭まわり”と仮称して一つにまとめ、ヘルメットの種類と傷害との関係について調査しました。“頭まわり”を負傷した82件のうち、死亡した例は32件でした。その死亡事故事例について、それぞれ着用されていたヘルメットの種類の割合を示したものが、次の図6です。

ヘルメットのタイプ別に負傷割合を比較すると、ハーフ形ヘルメットは他のタイプに比べ“頭まわり”に重大な傷害を受けやすい傾向がみられます。ハーフ形およびスリークォーターズ形ヘルメットは0.125L(125cc)以下用の用途の性能基準で造られていますが、この排気量に該当する原付一種、二種以外での不適切な使用事例が多くあり、「乗車する二輪車の種類、使用用途に適したヘルメットの着用」が望まれます。
信号のある交差点で、四輪車が対向車の通過を待って右折を開始したところ、前方から時速約76キロメートルで二輪車が交差点に進入してきました。二輪車は前方の四輪車に気がつき、急ブレーキをかけて減速したが、間に合わず、時速約22キロメートルで四輪車の左側面に衝突しました。四輪車は右折を開始したばかりなので、速度は低く、時速約12キロメートルでした。
二輪車乗員はオープンフェース形ヘルメットをかぶっていましたが、四輪車の左後部ドア窓枠付近にほぼ顔の正面から衝突し、左前頭部を打撃し、頚椎捻挫、脳震盪および顔面口腔列裂創の負傷をしました。ヘルメットはフェースシールドが破損していました。


信号のある、少し変則的な交差点で起きた直進四輪車と右折二輪車の右直事故です。
二輪車は対向してくる四輪車を認めたものの、先に右折できると判断して時速約35キロメートルで右折を開始しました。一方、四輪車は加速して黄信号の交差点を時速約56キロメートルで直進しようとしました。二輪車乗員はフルフェース形ヘルメットをかぶっていたものの、四輪車のフロントガラス右下部および右ドアミラーにヘルメット左側頭部が衝突し、フェースシールドが破損しました。二輪車乗員は上肢および下肢を負傷したものの、幸い頭顔部の負傷はありませんでした。


四輪車は進行方向右側の自宅へ右折するため減速し、後方未確認のまま時速約10キロメートルで右折を開始したところ、右後方から時速約80キロメートルで二輪車が追い越そうとしました。二輪車は減速したものの、時速約67キロメートルで四輪車の右側面に衝突し、その後左側に転倒して、二輪車乗員は二輪車とともに約17mも路面を滑走しました。ヘルメットはフルフェース形で、ヘルメットの左あご部から左耳部一面に路面との擦過痕が見られ、二輪車乗員は上肢および下肢以外にも左顔面擦過傷、頭部打撲の傷害を受けました。


ヘルメットは、二輪車乗員の頭部に加わる衝撃を緩和するための保護具ですが、着用していれば、どのような事故においても頭部が保護されるというものではありません。ヘルメットは使用用途により、異なった形状・保護性能をもちます。さらに、ヘルメットの使用方法が正しくない場合、ヘルメット本来の保護性能を発揮出来ない場合もあります。
二輪車は“ライダーが自然を肌で感じながら、乗り物との一体感を味わえる”ことが四輪にはない特徴の一つですが、その分“事故時の負傷に対しては、自己の安全に対する意識の差の影響が大きい”と言わざるを得ません。自分がどんなに注意深い運転をしていても、交通事故は起きることがあります。今一度“自分の身は自分で守る”ということを再認識して、「乗車する二輪車の種類、使用用途に適したヘルメットの着用」を、そして「あごひもをしっかり締める」ことを励行しましょう。

●「交通の方法に関する教則」(第8章第1節 二輪車の運転者の心得)(抜粋)
1−2 乗車用ヘルメットの着用
乗車用ヘルメットをかぶらないで二輪車を運転してはいけません。また、乗車用ヘルメットをかぶらない者を乗せて大型自動二輪車や普通自動二輪車を運転
してはいけません。乗車用ヘルメットは、PS(C)マーク、SマークかJISマークの付いたものを使い、あごひもを確実に締めるなど正しく着用しましょう。工事
用安全帽は乗車用ヘルメットではありません。
あなたのヘルメットに上記マークが付いていますか?
乗車用ヘルメットは消費生活用製品安全法により、消費生活用製品の「特定製品(注2)」に指定され、所定の技術基準に適合したものだけが上記マークの表示が許され、製品の販売が可能となります。そのマークは「@一定の事項を主務大臣に届け出ること、A基準適合義務等」の要件を満たした製造業者または輸入業者に認定されます。
JISマークが付いているヘルメットには必ず上記マークが付いています。したがって、道路交通法上、日本国内において二輪車に乗車する場合には、上記マークが付いたヘルメットを着用することが必要です。
注2:特定製品には「一般消費者の生命又は身体に対する危害の発生を防止するために必要な技術上の基準」が定められています。

●SGマーク制度について
SG(Safety Goods)マーク制度とは、(財)製品安全協会が実施している民間の自主的な製品安全性確保制度です。このSGマークは、一定の検査制度により、危害の発生を防止するための必要な事項について定めた「製品安全協会の認定基準(安全基準)に適合した製品に表示」されます。また、SGマークが貼付された製品による人身事故に対しては、被害者救済制度による紛争解決・被害救済の機能が設けられています。
(但し、製品に欠陥が存在しない場合や、製品の欠陥と人的損害との間に相当の因果関係が認められない場合は、賠償措置の対象外です。)