no36  
危険な高速道路の逆走事故



目  次

 概要

  1 逆走事故の発生状況
 1.発生件数(死傷事故)の推移

  2 逆走事故の特徴
 2.1 年齢層別の発生状況
 2.2 月別発生状況
 2.3 昼夜別発生状況

  3 逆走事故の要因
 3.1 逆走開始地点
 3.2 逆走行為の背景
 3.3 逆走開始地点の背景

 4.対策の方向性
 5.対策の事例
   1)本線方面標識
   2)進入禁止標識
   3)レーンマークの改良

まとめ


概要


 高速道路において、車両が定められた進行方向と逆方向に走行する逆走行為は、理解しがたいものです。
 しかし、高速道路における逆走事故は、人身事故のおよそ300件に1件の割合で発生しているのが現実です。一旦、逆走行為がなされれば、重大事故につながる可能性が高く、第三者へ危害を及ぼす非常に危険な行為と言えます。
 今回は、逆走事故について、その特徴や要因を分析するとともに、高速道路における逆走対策の方向性および対策事例を紹介します。


1 逆走事故の発生状況

 我が国の高速道路における全死傷事故は、平成12年に約7,700件、このうち、逆走事故は26件発生しています。
 逆走事故の発生割合は低いものの、致死率が高く、社会的にも重要視すべき事故形態の一つです。

1.発生件数(死傷事故)の推移
 高速道路における逆走事故の発生状況についてみてみます。
 図1は交通事故統計上の高速道路における全死傷事故と逆走事故の発生件数の推移を示しています。
 死傷事故発生件数は、年々、増加しており、平成2年から平成12年の伸び率は1.4倍となっています。中でも逆走事故の伸び率は、約4 倍と、全体と比べて伸び率が高くなっています。
  また、図2は致死率(死亡事故に至る割合)を示したものですが、逆走事故の致死率は平成12年が11.8%と、全体の致死率2.0%に対 しても高くなっています。

        


2 逆走事故の特徴

 逆走事故とは一体どんな事故なのでしょうか。
 平成9年〜平成12年の4年間において発生した逆走事故のうち、物損事故を含む124件の事故データを使用して分析します。

2.1 年齢層別の発生状況
 逆走事故を起こした運転者の年齢や性別の特徴はどうなのでしょうか。
図3は年齢層別の発生件数を示したグラフです。年齢層別では25〜29歳、45〜54歳、75〜79歳の3箇所にピークがあります。
 性別でみると、男性が圧倒的に多く、女性は、比較的若い年齢層で多く発生しています。
 図4は年齢層別の事故発生割合を示したグラフですが、高速道路における全死傷事故と比較すると、高齢層の割合が4%に対して29%と非常に高くなっています。

      

2.2 月別発生状況
 図5は月別発生状況を示したグラフです。3月〜4月の春先には高齢層による逆走事故が多く発生しています。なお、4ページ3.2 逆走行為の背景より、春先には「何らかの疾患(痴呆等)のため」による高齢層の逆走事故が多く、高齢層以外では12月における飲酒関係の事故が多く発生しています。

2.3 昼夜別発生状況
 図6は昼夜別発生状況を示したグラフです。高齢層では比較的昼間に、高齢層以外の年齢層では夜間に多く発生しています。特に、全ての飲酒を伴う逆走事故は19時〜7時において発生しています。

3 逆走事故の要因

3.1 逆走開始地点
 どんな場所で逆走を開始しているのでしょうか。
 図7は、逆走開始地点の割合を示したグラフです。
 逆走開始地点では、インターチェンジ・ジャンクション(IC・JCT)、本線、サービスエリア・パーキングエリア(SA・PA)が多く、それぞれの割合は20〜40%となっています。

3.2 逆走行為の背景
 方面別に指定された高速道路を何故逆走してしまうのでしょうか。
 逆走事故は、一般的に①目的のインターチェンジを通り過ごしたり、②自分の行くべき方面とは逆の方向へ進行(分岐)したことにより目的地へ戻ろうとして逆走(Uターン)したり、③サービスエリア・パーキングエリアでの休憩後、本線へ復帰する際に、誤って逆の方向へ進行したことにより、結果的に逆走事故に至っています。
 逆走の背景としては、「暴走行為」「違反から逃れるため」「事故を起こして動転して」等の違反・事故に関連する背景、「居眠り、寝ぼけ」「うっかり、ぼんやり」「会話に夢中」等の注意散漫等に関連する背景、「何らかの疾患(痴呆等)のため」による判断能力の低下に関する背景、「高速道路の利用方法が分からなかった」という基本的交通規則の知識の欠如に関連する背景に大別されます。
 図8は、年齢層別の背景を示したグラフです。
 年齢層別では、特に、青年、壮年層においては、「居眠り、寝ぼけ」「うっかり、ぼんやり」によるものが多く、また、高齢層においては、「何らかの疾患(痴呆等)のため」「高速道路の利用方法が分からなかった」によるものが多く、年齢層による逆走の背景に特徴がみられます。
 図9は、逆走開始箇所別の背景を示したグラフです。
 逆走開始箇所別では、特に、本線では「渋滞を避けるため」「何らかの疾患(痴呆等)のため」「事故を起こして動転して」「高速道路の利用方法が分からなかった」、インターチェンジやサービスエリア・パーキングエリアでは、「飲酒、酒気帯び」「居眠り、寝ぼけ」「うっかり、ぼんやり」が多く、逆走開始地点別にも逆走の背景の特徴がみられます。

          

3.3 逆走開始地点別の背景
 逆走開始地点における代表的な行動パターンについてみてみます。
 ①本線における行動パターンは、単純にUターンをしており、隣の車線を対向車線と勘違いしているケースもあります。

 ②インターチェンジにおける行動パターンは、あたかもUターンすることにより、目的地へ戻ることが出来そうですが、現実的には、方向別に分離された高速道路では、逆方向から進行してきた車両と遭遇することとなります。

 ③サービスエリア・パーキングエリアにおける行動パターンは、出口と入口を勘違いしているケースが多く見られます。

4 対策の方向性

 これまで、逆走事故の特徴と背景をみてきましたが、逆走事故の対策の方向性としては、逆走行為の発生を防止すること、一旦、逆走行為が発生した場合に、被害を最小限にとどめることに分けられます。次の3つの視点より考えてみます。
①飲酒等の違反行為に係る運転者モラルの向上
 逆走の背景として注目すべきことは、逆走事故を起こした運転者の約15%が、「飲酒、酒気帯び」の状態であったことです。これらは運転者のモラルにかかわる基本的事項であり、安全運転に関する指導・教育を徹底するとともに、関係機関による取締りの必要性が非常に高いと考えられます。
②高齢層への高速道路利用に関する教育
 高齢層の逆走事故の背景は、「高速道路の利用方法が分からなかった」と「何らかの疾患(痴呆等)のため」が多く、自動車運転教習所や免許更新時の安全運転講習における高齢運転者への正しい高速道路の利用方法等の教育が望まれます。また、疾患に関する事項については、運転に適さない状況の高齢層に対する運転の取りやめ等の取り組みも不可欠であると考えられます。
③運転者の走行ミス防止対策の強化
 サービスエリア・パーキングエリアでは、「仮眠後の寝ぼけ」や「うっかり、ぼんやり」による漫然運転の結果、出口と入口を誤って逆走事故に至っています。誤って逆方向に進入・逆走し始めても、逆走していることを早期に気づかせる工夫も必要であると考えられます。

5 対策の事例

  降水・非降水時別の時間帯別時間当たり死亡事故件数を図5に示します。01〜02時台、17〜24時台には降水時は非降水時と比較して死亡事故が多くなっています。

1) 本線方面標識①

従来の反射式標識               内部照明付き大型標識

   

                                         照明により夜間においても視認性が向上されています。
2) 進入禁止標識


従来の標識                大型の門型標識と標識の増設

    


3) レーンマークの改良


本線方向への誘導レーンマークの増設

     

                                          標識の大きさや増設により注意喚起が図られます。

本線方向への誘導レーンマークの増設により、スムーズな本線への誘導が図られます。


まとめ



 逆走の背景としては、「暴走行為」「飲酒、酒気帯び」等の違反に関係する要因、「居眠り、寝ぼけ」「うっかり、ぼんやり」等の注意散漫等の要因、「何らかの疾患(痴呆等)のため」による判断能力低下等の要因、「高速道路の利用方法が分からなかった」という基本的交通規則の知識の欠如に係る要因に大別され、運転者の年齢層や逆走開始地点においても、逆走の背景の特徴がみられました。
 逆走事故の件数が全死傷事故に占める割合は低いものの、高齢層の関連する逆走事故の割合が高く、今後の高齢化社会に向けて、憂慮すべき事故であることがあらためて浮き彫りになりました。
 逆走事故の防止対策としては、道路環境の整備はもとより、逆走事故の危険性についての安全啓発活動が必要であり、運転者の自覚を高めることが大切だと思われます。



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