no35  

あなたはクルマを点検していますか?


目  次

 はじめに
 1.マクロ統計による分析
 2.ミクロ調査による分析
 まとめ


はじめに


 モータリゼージョンの進展するなかで、自動車保有台数は7千500万台を超えており、交通事故の多発、交通渋滞の激化等社会的に大きな課題となっています。
 特に、整備不良に起因する事故は、思わぬ重大事故を引き起こしたり、事故には至らなくとも、車両故障による大渋滞を引き起こしたり、更にはその渋滞が事故を誘発する要因となることがあります。
 整備不良車による事故を排除するには、その実態を把握する必要があります。そこで、交通事故統計データ(マクロ統計)及び事故例調査データ(ミクロ調査)から、整備不良車が関与した事故件数、内容等の分析を行いました。


1 マクロ統計による分析

1.運転者の法令違反とみなされた整備不良事故(原付を含む)の分析

1-1 自動車(原付含む)が第1当事者となった事故件数及び法令違反の整備不良事故件数
  自動車が第1当事者となった交通事故件数は、平成3年が62万件で、以降、増加傾向でしたが、平成11年から伸び率が鈍化したもの の、平成12年は、82万件となりました(図1)。
 また、整備不良事故件数は、平成5年が272件でピークを示してから、以降、減少傾向にありましたが、平成11年には増加に転じ、平成 12年は202件(自動車が第1当事者となった事故件数82万件の0.02%)となりました。

1-2 法令違反が整備不良である

事故件数の当事者別割合(H12)
 平成12年の整備不良車が第1当事者となった202件の事故について、当事者別に分析すると、自家用乗用車が95件で事故件数全体の約5割、二輪車が41件で全体の2割、自家用トラックが33件で全体の約2割、事業用トラックが25件で1割を占めています。(図2)

1-3 法令違反が整備不良である死亡事故件数の推移

 平成3年〜12年(10年間)の法令違反が整備不良である死亡事故件数は35件で、そのうち貨物車の整備不良による死亡事故が19件発生しており、発生件数全体の5割となっています。(図3)

2-1 自動車が第1当事者となった事故における整備不良内容別事故件数(H8〜H12)

 過去5年間における整備不良事故件数をみると、平成8年(1,146件)をピークに減少傾向となっていましたが、平成11年から増加に転じ、平成12年には1,020件となりました(図4)。
 整備不良内容別にみると、各年とも「タイヤ不良」の発生件数が7割、「制動装置不良」が1割程度発生しており、発生傾向に変化はみられません。

2-2 整備不良内容別事故類型別事故件数(H12)

 平成12年に発生した車両要因に係わる事故を、事故類型でみると、車両相互704件(69.0%)、車両単独250件(24.0%)でほとんど占めています。(表1)
整備不良内容別では、タイヤ不良が674件と発生件数(1,020件)の約7割を占めています。
 更に、タイヤ不良の674件を要因別に分析すると、「雪道での夏用タイヤ使用」429件、「トレッドの摩耗」85件発生しており、これらがタイヤ不良全体の約8割を占めており、いずれも凍結路・湿潤路でスリップ等により走行状態を保つことができなくなり、事故に至ったものと思われます。


2-3 自動車の種類別及び整備不良内容別事故件数(H12)

 自動車の種類別でみると、普通乗用車620件(60.8%)、普通貨物車159件(15.6%)、軽貨物車74件(7.2%)軽乗用車73件(7.2%)の順で発生しています。(図5)。
 

 図6をみると、普通乗用車におけるタイヤ不良446件が最も多く、全発生件数の約4割(43.7%)、次いで普通貨物車のタイヤ不良104件で約1割(10.2%)と、いずれもタイヤ不良が目立っています。



 更に、普通乗用車のタイヤ不良446件を要因別に分析すると、「雪道での夏用タイヤ」が294件で最も多く、発生件数全体の約7割以上を占めています(図7)。


2 ミクロ調査による分析

1.ミクロ調査による整備不良件数(H5〜H12)

 平成5年からミクロ調査を開始し、既に3,098台の自動車の調査を行いましたが、そのうち、自動車に整備不良があると確認された自動車は112台で、調査台数全体の3.6%を占めています。
 また、整備不良が交通事故の要因として関与したと推測される事故件数は35台で、調査台数全体の1.1%を占めています。
 図8から、整備不良が確認された台数は、平成8年の29件をピークに年々減少傾向となっていましたが、平成12年から増加に転じました。
 また、整備不良が交通事故の要因として関与したと推測された台数は横這い状態が続いております。



2.整備不良が交通事故の要因として関与したと推測された主な事例

2-1車検切れ車両のスリップによる車両単独事故


〔事故概要〕
 20歳代の男性の運転する普通乗用車Aが強い雨の中、中央分離帯のある片側2車線の道路を進行中、スピンして路外の信号柱及び道路照明柱に衝突しました(図9)。

〔損傷程度〕
 運転者は軽傷、車両は大破。

写真1 2-1の事故現場(水溜まり状態)             写真2 後輪タイヤ磨耗状態状態


〔事故要因〕
 信号柱への衝突前に、車両は既に約半回転(又は1.5、2.5回転)していることから、水溜まり、雨の強さ及びFR車で左右の後輪タイヤの溝が摩耗(写真2)していたことから「ハイドロプレーニング現象(注)」発生の可能性が大きいと考えられます。
 更に、当該車両は約2年前に車検切れとなっていました。つまり、点検整備が行われない状態で使用していたため、左右の後輪タイヤが摩耗したままとなっていたわけです。

〔事故防止対策〕
 車検切れは無車検運行となるので法令違反です。また、自動車の保守管理は使用者の義務であることを忘れてはなりません。
 車検切れ防止策としては、前面ガラスに貼付されている「検査標章」の裏面に記載された有効期間を参考にし、検査証に記載されている「有効期間の満了する日」を確認しておくことです。

(注)ハイドロプレーニング現象とは、タイヤに溝が無いことから水を排除することができなくなり、車輪が水膜上に浮く状態をいう。

2-2 マグネシウムホイールの破損による車輪脱落事故


〔事故概要〕
 20歳代の男性の運転する普通乗用車Aは、前走車が道路脇に停止したので加速し、追い抜いた直後に右後輪が脱落した。その後、右後輪車軸を引きずったまま500m走行して停止しました(図10)。

〔損傷程度〕
 運転者は無傷、車両は中破。

写真3 脱落した右後輪タイヤ

 運転者によると、走行中「車両後方より連続した異音が発生していた」との証言がありました(恐らくホイールからの発生音と思われる)。
 また、事故後の調査から左後輪のホイールも亀裂が生じていたことが確認されました。

〔事故要因〕
 はく離部分(写真3)をみると、マグネシュウムホイールの強度不足から、走行中ホイールに亀裂が入り、破断したと思われます。

〔事故防止対策〕
 ・走行中車両に異常(異音等)が生じた場合、直ちに安全な場所を選んで車両を点検する等の心構えが必要です。
 ・また、軽合金ホイールに交換する場合は、安全マーク(JWL)(注)があることを確認してください。

(注)安全マーク(JWL)とは、保安基準適合マークのことです。

2-3 高速走行中、タイヤバーストによる横転事故


〔事故概要〕
 50歳代の男性の運転する小型バンAは、片側3車線の高速道路の第2走行車線を約100km/hで等速直進中、右後輪タイヤバーストにより、急に蛇行運転となり、バランスを失い中央分離帯へ接触、そのはずみで横転した。その際、運転者はシートベルト非着用であったことから、車外に放出され死亡しました(図11)。

〔損傷程度〕
 運転者は死亡、車両は中破。

写真4 横転した小型バンA

〔事故要因〕
 トレッド内部に変色が確認されたことから、空気圧不足で連続による高速走行したことにより、タイヤのたわみが増大し、異常発熱が生じたことからタイヤがバーストしたものと推測されます。
 また、事故車両の前輪タイヤの空気圧を測定したところ、右側と左側で差があり、特に、右側のタイヤの空気圧が低かったことから、事故当時右後輪の空気圧が低かったことも想定されます。

写真5 バーストした右後輪タイヤ

〔事故防止対策〕
 ・高速走行する前に、日常点検(タイヤ点検)を必らず実施してください。
  特に、空気圧を調整するときは、自動車メーカーが指定した空気圧で調整しましょう。
 ・自動車の保守管理は使用者の義務であることを忘れないでください。


まとめ



 自動車を常に良好な状態で使用するためには、自動車を使用するユーザー自身が責任を持って常日頃から適切な維持管理をすることが重要です。特に、タイヤ不良で多発している「雪道での夏用タイヤ使用」によるスリップ事故は、雪道での使用環境に応じた点検整備(例えば、スタッドレスタイヤの使用等)を行っていれば未然に防止できたと思われます。


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