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はじめに
1.事故調査事例にみる人々のミスの特徴
1.1 認知ミス −”ぼんやり”、”思い込み”が主要因−
1.2 判断・予測ミス −”思い込み”が主要因−
1.3 操作ミス −”慌て、パニック”、"思い込み”が主要因−
2.事故事例の紹介
おわりに
交通事故の死者・重傷者数は、各種の被害軽減対策の効果により減少傾向にあります。一方、軽傷事故が大部分を占める全事故件数は、依然として増加の一途をたどっています。今後、事故件数の低減のためには、事故の発生そのものを抑える必要があり、言い換えますと、予防安全の観点からの分析、対策が重要になってくると考えています。今回は、'97年の300件の事故調査事例を用い、交通事故にみられるミスの特徴を分析しましたので、その概要を紹介します。
1 事故調査事例にみる人々のミスの特徴
一般的に、運転者は「認知」、「判断」、「操作」という手順を踏んで自動車を安全に運転しているわけです。
認知とは、運転者にとっての周囲の交通状況における異常や危険を見つけ、認識することであり、判断とは、認知した結果に対してどのような行動をとればよいのか決定することです。そしてその判断に従って運転操作を実行することを操作と呼ぶのが一般的です。しかしながら、ここでは、交差点には現時点で危険は見られないが、曲がり角から人などが飛び出してくるかもしれない、といういわゆる防衛運転をするための予測も上記分類の「判断」の中に入れ、「判断・予測」として取り扱うことにしました。
そして、事故に関与した当事者を"当事者A"、その際の衝突相手を"当事者B"と呼ぶことにします。言い換えますと、車両単独事故以外の事故は全てなんらかの衝突相手(歩行者、自転車も含む)がいるということになります。たとえば、'97年の事故件数は300件であり、そのうち75件が車両単独事故なので、当事者Aは300人、当事者Bは225人ということになります。
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図1は、300人の当事者Aと225人の当事者Bのうち、何らかのミスがあった人の割合を示しています。当事者Aはほぼ全員の298人が、当事者Bは約87%の196人がミスを犯しているのが分かります。当事者Aについては認知段階でのミス(見落とし)が一番多く、事故を防ぐには、まず危険の兆候の認知(発見)能力を向上させるのが有効であることを示しています。 当事者Bは当事者Aと異なり、判断・予測ミスの割合の方が、認知ミスよりも高いという結果になっています。すなわち当事者Bは状況を正しく判断・予測すること、言い換えますと、より安全を確保できるような運転をするように判断・予測する、いわゆる"防衛運転"に心がけることがより重要と考えられます。 |
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![]() 図2 ミスの重複状況(当事者A) |
図3 ミスの重複状況(当事者B) |
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図4 一人あたりのミスの件数 |
注1 「当方」から見た交差点対向直進車の定義 |
図5に当事者Aが認知ミスした対象と、認知ミスした要因をまとめました。認知ミスした対象で一番多いのは"交差直進者"注1、すなわち交差点で横の道にいる車両または人の見落としで、出会い頭事故につながるミスであることがわかると思います。二番目に多い"対向直進者"注1は右直事故(右折車両と対向直進車両の事故)につながるミスといえます。ミスを犯すに至った要因としては、"ぼんやり"、"思い込み"が全対象に共通して多く、「見ようと思えば見えていたのに見なかった」ミスです。"思い込み"による認知ミスというのは、例えば、「交差する道には一時停止標識があり、いつも相手の車が一時停止する」のを知っていたり、「交通量の少ない道で、めったに車がやって来ない」のを知っていたりして、安全を確認しないような場合です。それに次いで建物や樹木の陰等のために見えなかったり、雨や霧のために見えなかったり、という"見通し不良"が多く、「見ようと思っても見えなかった」ミスということができます。ミスを犯すに至った特異な要因としての"居眠り"、"飲酒"は、主に"車線はみだし"の主な要因となっており、車両単独事故、正面衝突という重大な事故につながりますので、特に注意したいものです。
図6に当事者Bの認知ミスの状況を載せてありますが、やはり"交差直進者"が圧倒的に多数を占めており、出会い頭事故の多さを裏付けています。当事者Bでのミスを犯すに至った要因もやはり"思い込み"と"見通し不良"が大半を占めています。


次に、判断・予測ミスおよびミスを犯すに至った要因について考えたいと思います。
図7に、当事者Aについての主な物をまとめた結果を示します。一番多い判断・予測ミスは、せっかく"交差点"を認知したにもかかわらず、相手は見えないので"交差道路には誰もいないだろう"というもので、これも出会い頭事故につながるミスです。図5をもう一度見ていただきたいと思います。"交差直進者"を見落とすことは多いけれど、"交差点"そのものを見落とすことは少ないことがわかります。"交差点"を認知した時点で"交差道路には誰もいないだろう"ではなく、"交差道路には誰かいるかもしれない"という安全指向の判断・予測、いわゆる防衛運転に心がけることにより、"交差直進者"に対する認知ミスを挽回できる可能性が少なくないということです。
重要なことは、要因は何であれ、あるものを認知ミスしても、別の対象を見て「認知できなかった対象」の存在を予測する習慣、能力が必要であるということだと思います。車両単独事故につながる、"自車の速度は問題なし"も同じくらいの多さでみられ、いずれも自分に都合の良い判断・予測をしている状況がうかがえます。


操作ミスは多くありませんが、参考までに図9に当事者Aの操作ミスとそのミスを犯すに至った要因を示します。ミスのほとんどはハンドル操作ミスであり、そのミスを犯すに至った要因は、多い物から順に、"運転技量不足"、"慌て、パニック"、"飲酒"、"運転操作に対する過信"、"居眠り"となっています。
当事者Bの操作ミスの総数は9件と非常に少ないので図は載せませんが、ミスの主なものとしては"ライト不点灯"が3件、"ハンドル、ブレーキ操作不適当"がそれぞれ2件です。また、そのミスを犯すに至った要因としては、"慌て、パニック"、"思い込み"の順です。
つまり、操作ミスそのものは多くはありませんが、当事者Aによるハンドル操作ミスという運転者自身の要因がほとんどであることも見逃せない事実ではないでしょうか。

以下に交差点での出会い頭事故、右直事故の例を紹介します。
![]() 図10 見通し良い交差点での”思い込み”による 見落としと判断ミス |
当事者A:
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![]() 図11 橋脚の陰になった相手の見通し |
当事者A:
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![]() 図12 相手との距離、相手の速度に対する判断ミス |
当事者A:
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![]() 図13 カーブミラーに頼りすぎたことによる相手の見落とし |
当事者A:
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以下に、人間のミスの特徴と、ミスを防止あるいはミスを重ねないための要点をまとめましたので参考にしていただければ幸いです。