はじめに
1.最近の交通事故の推移と人口、運転免許保有者の年齢構成変化
1.1 交通事故の推移
1.2 免許保有者、人口の年齢構成の変化
2.平成11年の死亡事故データに見る年齢層別の特徴
2.1 年齢層別、状態別の死者数
2.2 年齢層別、状態別の事故確率、致死率
3.将来の交通事故死者数の概算
3.1 計算の手順
3.2 計算の結果
4.まとめ
4.1 最近10年間での交通事故の質的変化
4.2 交通事故死者の年齢層別特徴
4.3 平成17年の交通事故死者数の概算
高齢者事故を防止するための提言
最近10年間で、交通事故による死者の数は全体的には減少し続けている。ただし、これを詳細に見ると、24歳以下の若者層での減少は著しいが、逆に65歳以上の高齢者層では増加しており、年齢層により状況が異なっていることがわかる。その主な要因は、人口、免許保有者の高齢化そのものにあること、そして、その他にも事故確率(人口あるいは、運転免許保有者あたりの死傷者数の割合で定義)、致死率(事故に遭った、あるいは起こした時の、全死傷者数に対する死者数の割合で定義)の年齢層による差も強く影響していることがうかがえる。ここでは、最近の交通事故の傾向について年齢層に着目した分析結果を報告するとともに、将来の人口、運転免許保有者の年齢構成の変化を考慮に入れ、将来の交通事故死者数を予測したので紹介する。
1 最近の交通事故の推移と人口、運転免許保有者の年齢構成変化
1.1 交通事故の推移
過去10年間の年齢層別・状態別のマクロな傾向を分析するため、過去の事故データの推移より回帰直線を求め、その“勾配”をもって年あたりの増分を定義した(図1)。 図2には縦軸に当事者の年齢層を、横軸にはここで定義した“勾配”をとり分析結果を示している。死者数全体では減少傾向にあることを説明したが、中でも0〜24歳の年齢層での減少が顕著であり、状態別で見ると、普通自動車乗車中と自動二輪乗車中での死者の減少が大半を占めている。その次に大きく減少しているのは、25〜44歳の普通乗用車乗車中、45〜64歳の歩行中の順である。それに対して、65歳以上の高齢者層では全ての状態で増加しているのが対照的である。
図3は免許保有者数、図4は人口の男女年齢層別推移を示している。いずれも平成2年から平成10年で、24歳以下の若者層の人数が減少し、45歳以上での人数の増加が大きく、前述の年齢層別死者数の増減の様子と良く対応していることがわかる。すなわち、交通事故死者数の増減は、人口、運転免許保有者の年齢構成変化の影響を強く受けていると考えられる。
状態別で一番多いのが自動車乗車中で、死者全体の約40%を占めているものの、年齢層ごとの大きな偏りは見られない。歩行中および自転車乗用中の死者は、それぞれ全体の約30%、10%を占めており、ともに高齢者層に顕著に偏っている。以上を年齢層別でまとめると、全人口の約16%を占める高齢者が、全死者数の約35%を占めており、その内の約70%が歩行中・自転車乗用中であることが特徴である。
次に、年齢層別に事故確率、致死率の特徴を以下に説明するが、運転免許を必要とする『原付以上の車両運転中』と、運転免許を必要としない『車両同乗中』や『自転車乗用中』、『歩行中』とに分けて分析した。
まず、車両運転者が事故を起こす確率(事故確率という)を『免許保有者数あたりの死傷者数の割合』と定義し、死亡事故になりやすさを示す指標として致死率(=死者数/死傷者数×100)を用いる。ただし、事故確率が高いからといって事故を起こしやすい運転をしているのか、あるいは、運転する機会が多いだけなのかの区別はできない点に留意頂きたい。図6を見ると、何れの車両も若者の事故確率が高い(すなわち運転する頻度が高い、あるいは事故を起こしやすい運転をしている傾向がある)にもかかわらず、致死率は低く死亡事故につながることは少ないことを示している。逆に高齢者は事故確率は低く、免許は持っていても運転する機会は少ない(あるいは事故を起こさないような慎重な運転をしている)ことがわかるが、致死率は非常に高く、一旦事故に遭うと(起こすと)死亡事故になる確率が非常に高いことを示している。これは加齢に伴う、知覚能力、運動能力、外力に対する抵抗力の低下および判断の遅れなどによるものと考えられる。
はじめに、車両の種類ごとに同乗者が乗っている頻度を調べてみた。図7の横軸には死亡した乗員の年齢層、縦軸には死亡した乗員が同乗者であった割合を示す。自動車での同乗者が一番多いこと、また免許を持てない16歳以下の若者、および高齢者層(現時点では免許保有率が低い)での同乗率が高いことも見てとれる。言うまでもないが、自転車での同乗者は、一般的に知られているように幼児、子供が大半である。
同乗者が多い自動車について、致死率を運転中と同乗中に分けて示したのが図8である。全般に、自らが運転しているときの方が、同乗するときよりも致死率が高いことがわかるが、高齢者層ではそれが更に顕著である。すなわち、高齢者は運転していても、同乗者としても死亡に至る事故を起こしやすい(遭いやすい)傾向があるといえる。。
1.2 免許保有者、人口の年齢構成の変化
2.1 年齢層別、状態別の死者数(図5)
2.2 年齢層別、状態別の事故確率、致死率
a.自動車、自動二輪、原付の運転者の事故確率、致死率
b.車両の同乗者の致死率

c.自転車乗用中、歩行中の事故確率、致死率(図9)
ここでの事故確率は『年齢層別人口あたりの死傷者数の割合』で定義している。原付以上の車両運転中の時とは異なり、高齢歩行者の事故確率が、他年齢層のそれと同じ位に高いのが大きい特徴である。高齢者層の免許保有率が低いため、必然的に高齢者は歩く機会が多いということであろう。致死率を見ると、年齢層によらず歩行中は車両乗車中の数倍も高く、高齢者層では更に顕著である。ただ、同じように身体を守るべき物を持たない自転車乗用中の致死率が、車両運転者のそれと大差がないのは興味を引かれるところである。
要約すると、高齢者は歩いていても死亡事故に遭う確率が高く、
1. 24歳以下の若者では、致死率は低いが事故確率が高い
2. 一方65歳以上の高齢者は、事故確率は低いが致死率が高い
ということができる。
すなわちメカニズムは異なるものの、共に交通事故での死者という意味では危険な年齢層であるといえる。
以上より、年齢層ごとの事故確率、致死率、および人口、免許保有者数を考慮すれば、将来の死者数をかなり正確に予測できると考えられる。以下、この考えに沿って将来の交通事故死者数を概算してみた。
3.1 計算の手順