イタルダ・インフォメーション
2000 No.28


飲酒と交通事故


目  次

 はじめに
 1.飲酒運転事故の特徴
 2.地域的な特徴
 3.飲酒の程度別特徴
 4.飲酒を取り巻く社会
 おわりに
 


はじめに


 夜間における死亡事故を調べてみると、その4分の1に飲酒が絡んでいる。意外と大きな割合ではないだろうか。そこで今回は、まず飲酒が関係した交通事故の全体的な特徴について整理します。次に都道府県ごとの交通事故発生状況を、様々なデータをまじえて紹介します。そして、呼気中アルコール濃度別の交通事故の危険性について示します。さらに、飲酒運転事故を起こした運転者の累犯性についての分析を行い、最後に、飲酒運転に 対する人々の意識についての調査結果を紹介します。


1 飲酒運転事故の特徴

1.1 夜間に多い飲酒運転事故

 ここでは、第1当事者が「飲酒あり」であった交通事故を飲酒運転事故ということにする。ひとくちに「飲酒あり」といっても様々なレベルがある。飲酒の程度には統計上「酒酔い」・「酒気帯び」・「基準以下」、さらに「検知不能」があり、これら全てが「飲酒あり」に含まれる。
 交通事故に占める飲酒運転事故の割合は、夜間及び深夜の死亡事故において特に高い。図1図2にその割合を示す。死亡事故の第1当事者が「飲酒あり」であった割合は16%であり、夜間に限っては25%である。また、この割合を時間帯毎に見た結果を図3に示す。これを見ると0時から2時までの間に発生した死亡事故の5割近くが飲酒運転事故である。

1.2 程度の軽い飲酒運転事故が増加

 飲酒運転事故の発生状況について最近の推移を図4に示す。これを見ると平成5年までは、一般の交通事故と同様に増加傾向であったが、平成5年以降は横這いである。ここで、一般の交通事故とは原付以上が第1当事者となった全交通事故のことを指し、飲酒運転事故との比較対照として紹介している。次に、これらの傾向に関連して、アルコール消費量と自動車走行距離の推移を図5に示す。アルコール消費量は平成5年から横這い、すなわち、飲酒運転事故と同じ推移を示している。これに対し、一般の交通事故件数は自動車走行距離の延びと相まって増加している様子がうかがえる

 さらに、飲酒運転事故の推移を、飲酒のレベル毎に見た結果を図6に示す。これを見ると、飲酒程度の重い「酒酔い」運転による事故は減少しているが、程度が軽い飲酒による事故は増加傾向にある。平成10年中の事故と昭和61年の事故を比較すると、「酒酔い」運転による事故は約5分の1に減少しているが、「基準以下」の事故は2.6倍にもなっている。

1.3 女性の飲酒運転事故が増加

 昭和61年から平成10年にかけて件数が増加した「酒気帯び」の飲酒運転事故件数について、性別・年齢層別に分析した結果を図7、図8に示す。この分析は、昭和61年と平成10年の相違、年齢層による違い、男女の違いをできるだけ正確に分析するために、免許人口あたりの事故件数による考察を行っている。これより、40歳代以上の中高年の男性による「酒気帯び」運転による事故が増加していることがわかる。女性は男性と比べると件数は少ないが、全ての年齢層で増加しており、特に若い年齢層における増加が著しい。

 同様に、昭和61年から平成10年にかけて件数が2.6倍にも増加した「基準以下」の飲酒運転事故件数について分析した結果を図9、図10に示す。これらを見ると男性・女性ともにほぼ全ての年齢層で件数が増加していることがわかる。

2 地域的な特徴

2.1 大都市で多い飲酒運転事故

 交通実態は地域によって様々な特徴がある。そこで、今度は都道府県毎に飲酒運転事故の多さを調べてみる。まず、道路交通法で違反とされる「酒酔い」と「酒気帯び」の飲酒運転による漸次子件数を図11に、そして、そのうちの死亡事故件数を図12に示す。ここで、全事故は第1当事者が原付以上であったもので平成11年の値である。死亡事故は平成7年〜11年の値を合計したものである。図11より、全事故でみると、東京都、大阪府、福岡県といった人口規模の大きな県が上位を占めている。一方、図12の死亡事故件数でみると、茨城県、愛知県、静岡県といった県が上位に位置している。

2.2 地方都市でも多い飲酒運転事故

 事故件数の評価は様々な社会経済指標とあわせて行うと興味深い。今度は飲酒運転死亡事故について免許保有者数ごとの件数を整理した結果を図13に示す。すると、沖縄県、茨城県、山梨県が上位に位置する。さらに、アルコール消費量あたりの死亡事故件数を図14に示すと、茨城県、山梨県、三重県が上位に位置している。運転免許保有者あたり及びアルコール消費量あたりの死亡事故件数が多い都道府県の中には、大都市からやや離れた比較的人口規模の小さな県が多い。

3.飲酒の程度別特徴

3.1 危ない飲酒

 交通事故の危険性を示す方法に、死亡事故件数を全事故件数で除した死亡事故率がある。同様に死亡・重傷事故率という物差しがある。ここでは、飲酒の程度別に死亡事故率、死亡・重傷事故率を用い、その結果を図15、図16に示す。この分析は車両相互事故の事故類型を対象として行った。これらを見ると、程度の重い飲酒ほど重大事故になる危険性が高くなる。そればかりでなく、法令に定められた「基準以下」の飲酒でも重大事故になる危険性は「飲酒なし」の場合より高い。夜間の車両相互事故において酒気帯び運転は、飲酒なしの交通事故に比べて死亡事故になる危険性が約4倍高い。また、死亡・重傷事故になる危険性も約1.6倍も高い。

 次に、飲酒の程度をよりきめ細かく考察するために、呼気中アルコール濃度別に死亡事故率、死亡・重傷事故率を分析した結果を図17、図18に示す。この分析は、夜間の車両相互事故について行ったものである。これらを見ると、アルコール濃度が高くなると極端に重大事故に結びつくことがはっきりとわかる。呼気中濃度が0.75mg/lを越えると、千鳥足となる人も多いことから、こうした結果は当然といえる。この様なレベルは論外として、飲酒運転がいかに危険かをグラフから読みとることができる。例えば「酒気帯び」運転の基準である0.25mg/l以上についてみると、0.25〜0.49mg/lの場合、飲酒なしの交通事故に比べて死亡事故になる危険性が約3倍、0.50〜0.74mg/lでは6倍も高くなる。

3.2 懲りない飲酒

 飲酒運転事故を起こした運転者は、飲酒事故・違反の前歴がある者の割合が特に高い。いかに高いかを図19に示す。飲酒運転事故でなかった交通事故の第1当事者の中で、過去に飲酒運転事故・違反の前歴がある者の割合はわずか2.5%にすぎない。しかし、飲酒運転事故の第1当事者のうち、過去に飲酒運転事故・違反の前歴がある者の割合は14.8%になっている。また、図20は同様の考え方で、飲酒運転事故を起こした者の呼気中アルコール濃度別に、飲酒運転事故・違反の前歴がある割合を見たものである。これをみると、濃度が0.14mg/l未満の運転者では前歴がある者の割合は10%なのに対して、1.25mg/l以上の運転者では17%とほぼ2倍である。すなわち、程度の重い飲酒運転ほど習慣性が強いといえる。

4.飲酒を取り巻く社会

 最後に、飲酒運転で検挙された運転者への意識調査の結果から飲酒の背景について考察してみる。図21は飲酒の機会について、図22は飲酒運転の意志決定時期の割合を示す。これを見ると、検挙者の25%は以前から予定されていた会合での飲酒であるとともに、65%が飲む前から運転するつもりであったと回答していることがわかる。これらは、いわば確信犯というべきものである。
 そして、図23は、職場での飲酒運転に対する指導実態を調査した結果である。これより、飲酒運転の検知を受けた者(アルコール濃度が低くて検挙されなかった者も含む)のうち、職場で飲酒運転をしないよう指導されていないと回答した者は32%にものぼる。さらに、図24は、飲み会での周囲の人の対応について調査した結果であるが、車で来ていると承知していながら、酒を勧められてしまうと回答した者は50%にも達している。

5.まとめ

 近年、程度の重い飲酒運転は確かに減少してきている。しかし、法律で取り締まりの対象にはならないような程度の軽い飲酒運転による事故が増加しています。そして、こうした程度の軽い飲酒であっても、事故を起こすと死者・重傷者の発生につながる可能性が高いといえます。このことは、少量でも飲酒をすれば、酔いの自覚のあるなしに関わらず、危険であることを意味している。
 検挙されなければ飲酒運転をしても大丈夫という判断は大変危険です。ひき逃げ事件での逃走の動機で最も多いのが、「飲酒運転中であった」ことで、全体の3割を占めています。飲酒運転に対する運転者の甘い認識がこうした悲劇を生んだと考えられます。同時に運転者本人ばかりでなく、職場や地域社会、あるいは家庭や友人との間において、飲酒運転を助長するような慣習や行動がまだ多く存在しています。
 今回は、既存の事故統計のみならず、都道府県警察の協力を得て飲酒運転事故の特徴を明らかにしました。車社会から飲酒運転を排除するには、飲酒運転をさせまいとする社会の強い意志が必要です。そのための資料として本稿が活用されれば幸いです。


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