イタルダ・インフォメーション
2000 No.25


高速道路の交通事故の特徴と対策


目  次

 はじめに
 1 高速道路の交通事故の特徴
 1-1高速道路の交通事故の推移
 1-2一般道路との交通事故の比較
 1-3高速道路の事故の特徴
 1-4高速道路の交通事故の最近の傾向
 1-5高速道路における軽傷事故最近の傾向
 2 自動車の安全装備
 3 高速道路の交通事故対策 
 3-1夜間事故対策
 3-2雨天時事故対策
 3-3中央分離帯突破事故対策
 おわりに  


はじめに


日本の高速道路(JH日本道路公団が建設・管理しているもの)は、昭和38年に名神高速道路の栗東〜尼崎間(約70km)が開通して以来、現在までに6,600kmが開通しており、毎年約250kmの新しい高速道路が建設され、将来的には、11,520kmになる予定です。

 高速道路の開通により、人・物の動きが活発となり、生活様式・行動範囲も大きく変わってきています。そこで、今回は、わたしたちの生活に欠かせなくなった高速道路の交通事故について分析してみました。   


1 高速道路の交通事故の特徴

 高速道路における交通事故は、どのように推移しているのでしょうか。高速道路の利用交通と交通事故の変化をみてみます。

1-1 高速道路の交通事故の推移(平成10年:死者数272人、負傷者数11,028人)

  高速道路における交通事故は、どのように推移しているのでしょうか。高速道路の利用交通と交通事故の変化をみてみます。 高速道路の利用交通量(総走行台キロ注1)は、開通延長に比例して増加し、特に、昭和60年頃からは、開通延長の伸びに比べ大きく増加しています。(図-1)
交通事故の死傷者数は、昭和60年頃までは、利用交通量が増加しているにもかかわらず、特に、増加する傾向はありませんでしたが、昭和60年頃から平成7年にかけて大きく増加しています。これは利用交通量の大幅な増加に起因するものとも考えられます。近年は景気の低迷等の影響もあり、以前のような極端な増加とはなっていませんが、高速道路で発生する交通事故は、平成10年で年間約6,500件にも及んでおり、死者数は272人、負傷者数は11,028人となっています。(図-2) 

図-1 高速道路の開通延長と走行台キロの推移 図-2 高速道路の死者数と負傷者数の推移


1-2 一般道路との交通事故の比較(高速道路の死亡事故率は全事故の1/3、致死率は3倍)

  高速道路における交通事故の発生する確率は、どの程度なのでしょうか。
高速道路と一般道路の交通事故の比較をしてみます。
 一般道路の交通事故の推移は、高速道路とほぼ同じ傾向を示しています。
高速道路における交通事故に比べると、平成10年中は、一般道路において、
約30倍(8,939人)の死者数、約90倍(979,647人)の負傷者数
となっています。(図−3)







図-3 一般道路の死者数と負傷者数の推移

次に、交通事故の発生する確率をみてみます。発生する確率は、道路の総通行台数(台)と総走行距離(キロ)を考慮した事故率(人/億台キロ)で比較をします。
 平成10年の高速道路の死亡事故率は0.4人/億台キロ、全道路では1.24人/億台キロで、高速道路は全道路の1/3となっています。(図-4)
 また、負傷事故率は、高速道路で16人/億台キロ、全道路では133人/億台キロで、高速道路は全道路の1/8となっています。(図-5)

図-4 死亡事故率の推移 図-5 負傷事故率の推移

また、致死率(死者数と死傷者数の割合)は、高速道路
で2.4%であるのに対して、全道路では0.9%と、事故率
とは異なり、高速道路の方が高くなっています。(図-6)
  このことは、高速で走行する高速道路では、事故に遭遇
する確率は低いものの、一旦、交通事故が発生すると、重
大事故に至る可能性が高いことを示しています。









図-6 致死率の推移

1-3 高速道路の事故の特徴(走行環境の悪い夜間、雨天時の速度超過事故)

高速道路では、どんな交通事故が発生しているのでしょうか。ここでは、平成10年の交通事故について、事故類型別の特徴をみてみます。
 事故類型別の死者数は、約50%が車両単独事故(図-7)で、負傷者数では、約80%が追突事故等の車両相互事故(図-8)となっており、死亡事故と負傷事故では、事故類型に異なった特徴があります。なお、死者数割合における人対車両事故は、事故が発生した際に車外に放出され、後続の車両との間で発生した事故も含まれています。

図-7 事故類型別の死者数の割合(H10) 図-8 事故類型別の負傷者数の割合(H10)

事故発生時の状況では、夜間事故の死者数は、全体の約60%を占めており、その事故率は昼間の3.6倍となっています。(図-9,10)

図-9 昼夜別の死者数の割合(H10) 図-10 昼夜別の死亡事故率(H10)

天候別の雨天時事故の死者数は、全体の約20%ではありますが、湿潤路面時の死亡事故率は、乾燥路面の4.2倍となっています。(図-11,12)
 なお、死亡・重傷事故における法令違反のほとんどが最高速度違反であることから、走行環境の悪い夜間、雨天時に、速度を超過して重大事故に至るケースが多いことが、高速道路の事故の特徴と言えます。

図-11 天候別の死者数割合(H10) 図-12 天候(路面)別の死亡事故率(H10)

1-4 高速道路の交通事故の最近の傾向(高速道路の事故の増加傾向は、軽傷事故の増加が影響)

高速道路の死者数は、どのように推移しているのでしょうか。特徴的な交通事故の最近の傾向をみてみます。
夜間事故の死者数は、若干減少傾向にありますが、死者数全体に占める比率は高くなっています。一方、雨天時の事故については、死者数及び死者数全体に占める比率とも大きく減少しています。(図-13,14)

図-13 特徴的な事故の死者数の推移 図-14 死者数の内訳

年齢層別の死者数では、若年層(24歳以下)の死者数が大幅に減少しており、全体の死者数に占める割合も大きく減少しています。しかし、若年層以外の年齢層については、その割合が高くなる傾向にあります。これは少子・高齢化に伴う人口構成の変化により、若年層人口が相対的に減少してきていることに関係していると思われます。(図-15,16)

図-15 年齢層別の死亡者数の推移 図-16 年齢層別死者比率

負傷の程度別にみると、死者・重傷者は減少傾向にありますが、軽傷者については増加傾向で、比率も高くなっています。(図-17,18)
 このことから、軽傷事故の増加が、高速道路の事故の増加傾向を表しているものと思われます。

図-17 死者、重傷者、軽傷者数の推移 図-18 死者、重傷者、軽傷者の比率

1-5 高速道路における軽傷事故(高速道路本線における低速度帯の前方不注意事故が増加)

 死者及び重傷者については、近年、減少傾向にありますが、何故、交通事故は増加しているのでしょうか。ここでは、交通事故全体の傾向を表していると思われる軽傷事故についてみてみます。
 事故直前速度別の軽傷者の推移をみると、40km/時以下における軽傷者が、他の速度帯に比べ顕著に増加しています。通常、高速道路における40km/時以下の走行速度は、本線渋滞時・インターチェンジランプ部・料金所付近における速度となります。(図-19,20)

図-19 事故直前速度別の軽傷者数の推移 図-20 事故直前速度の比率

また、法令違反については、前方不注意や動静不注視の事故が顕著に増加しており、全体の70%を占めています。(図-20,21)

図-21 法令違反別の軽傷者数の推移 図-22 法令違反の比率

 次に、高速道路において発生した本線渋滞と軽傷事故についてみてみます。
 本線渋滞時間の推移は、平成9年までは増加傾向にあり、平成10年では減少しています。ここで、前方不注意事故についても、本線渋滞と同じ傾向を示しており、渋滞と軽傷事故には関連性があるものと思われます。また、渋滞発生箇所別の軽傷者の比率をみると、本線渋滞時の軽傷者の割合が高くなっており、低速度帯における軽傷事故は、本線渋滞時に増加していることが分かります。 (図-23,24)
 これらのことより、高速道路本線における低速度帯の前方不注意事故の増加が、交通事故の増加傾向の一因となっていると思われます。

図-23 渋滞と前方不注意事故の推移 図-24 40km/h以下における箇所別軽傷者の比率
2 自動車の安全装備(シートベルトの着用率の向上が、近年の死者数の減少の一因)

近年、自動車の安全装備・構造については、シートベルトの改良、エアバック、ABS、被害軽減ボディー等の様々な開発がなされ、自動車の安全対策が進んでいます。

 ここでは、運転者と直接接しているシートベルトの着用の有無による事故の状況をみてみます。
 高速道路におけるシートベルトの着用義務化は、運転者・助手席同乗者ともに昭和60年に実施されています。シートベルトの着用率の推移は、義務化当時は、100%に近かったものが、平成3年には、85%前後まで低下しています。最近では、徐々に上昇していますが、まだ、90%前後の着用率となっています。(図-25,26)

図-25 シートベルト着用率の推移 図-26 

 シートベルトの非着用の死者数は、平成3年までは増加傾向であったものが、以降は減少傾向となっており、着用率の増加と相関していると思われます。また、シートベルトの非着用の致死率は、着用時の約4倍となっており、シートベルトの必要性が分かります。(図-27,28)

図-27 シートベルト着用有無別の死者数の推移 図-28 シートベルト着用有無別の致死率(平均)

  次に、死者数の内、約1割が人対車両事故であることから、車外放出事故とシートベルトの着用についてみてみます。
 車外放出事故におけるシートベルトの着用別の死者数は、上記の図−27と同じ傾向を示しており、着用率の向上により大きく減少しています。ただ、当事者別の変化では、運転者の減少が顕著で、同乗者の減少の程度とは差があります。(図-29,30)
  これらのことから、シートベルトの着用率の向上及びこれに伴う車外放出事故が減少したこと等が、近年の死者数の減少の一因として考えられます。

図-29 車外放出事故におけるシートベルト着用有無の推移 図-30 車外放出事故の当事者の変化


3 高速道路の交通事故対策

 高速道路では、どのような交通事故対策が行われているのでしょうか。高速道路における代表的な事例として、夜間事故、雨天時事故、中央分離帯突破事故の対策を紹介します。

3-1 夜間事故対策(高視認性区画線)

 高視認性区画線とは、通常の区画線に比べ反射輝度が高いもので、また、種類によっては、表面に凹凸があります。
 夜間事故が多い箇所や道路線形(カーブや勾配)が厳しい箇所に設置されており、視認性の改善や走行時の振動や音により注意喚起が図られています。また、都市内の交通量の多い区間には、夜間照明も設置されています。(写真-1)








写真−1
  平成元年から平成9年に高視認性区画線を施工した箇所のうち夜間事故が多い74箇所において、実施前後1年の事故件数を比較してみると、夜間時の事故が183件減少しており、夜間時の事故減少率は約40%となっています。(図-31)









図-31 高視認性区画線の対策効果

3-2 雨天時事故対策(高機能舗装)

  高機能舗装とは、通常の舗装に比べ空隙が多い舗装で、雨水が空隙に浸透し、路面の雨水を早く排水することが出来る舗装です。また、この空隙により、タイヤと路面で発生する騒音を低減する効果もあります。
 雨天時事故の多い箇所に施工されており、スリップの防止視認性(水しぶきの防止、夜間の乱反射防止)の改善が図られています。また、新しく建設されている高速道路では、すべての区間で、この高機能舗装が採用されており、現在までの施工延長は、高速道路の総延長の約25%に相当しています。(写真-2)








写真−2
   平成元年から平成9年に高機能舗装を施工した箇所のうち湿潤路面時の事故が多い213箇所において、実施前後1年の事故件数を比較してみると、湿潤路面時の事故が1,298件減少しており、湿潤路面時の事故減少率は約85%となっています。(図-32)









図-32 高機能舗装の対策効果

3-3 中央分離帯突破事故対策(中央分離帯強化型防護柵)

   中央分離帯強化型防護柵とは、標準型の中央分離帯防護柵に比べ、支柱間隔を短く、補強梁を多く配置し、衝撃に強くしたものです。  大型車両等が中央分離帯を突破する事故は、対向車両を巻き込む重大事故となる可能性があり、大型車両の交通量が多い区間から、順次設置されています。(写真-3)








写真−3

(注)写真・対策効果は、JH日本道路公団資料



おわりに


 今回は、高速道路の交通事故の特徴と対策として、高速道路における特徴的な事故の変化と高速道路における交通事故対策を紹介しました。高速道路では、さまざまな対策が実施されその効果も現れていますが、交通事故はいまだに減少傾向とはなっていません。

 シートベルトの着用率の向上や雨天時の死者数の減少等から、運転者の安全運転意識の向上が図られていることが分かりますが、前方不注意等の気のゆるみによる事故も増加しています。高速走行における交通事故の危険性を再認識し、安全運転に努めて頂きたいと思います。なお、後部座席同乗者のシートベルトの着用は努力義務とされていますが、後部座席においても、シートベルトの着用が望まれます。

 また、高速道路においては、情報通信ネットワークを利用した高度な安全対策(自動運転道路システム等)の研究開発が進められており、さらに安全で快適な高速道路網が整備されることを期待します。


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