はじめに
高齢者事故の特徴と推移
死亡事故の状態別特徴
高齢者事故の人口規模別(市区町村)比較
高齢者事故の世代別比較
まとめ
1.1 年齢層別死者数
(自動車乗車中が増加、歩行中では特に女性・後期高齢者が増加)
年齢層別死者数の経年推移を見ると、高齢者の死者数は昭和54年から一貫して増加傾向にある。
また、平成5年には高齢者の死者数が若者の死者数を上回り、その後、差はますます拡大している(図1)。平成2年と平成10年の年齢層別状態別死者数を比較すると、高齢者の自動車乗車中、歩行中の死者数は増加し、若者の自動車乗車中、自動二輪車乗車中、原付自転車乗車中の死者数は減少している。また、全年齢層に対する高齢者の歩行中および自転車乗用中の死者数割合はそれぞれ60.3%、57.1%と圧倒的に高い(図3・図4)。
高齢者の状態別死者数を前期高齢者(65〜74歳)と後期高齢者(75歳以上)および、男女別に平成2年と平成10年とで比較すると、男性・前期高齢者の自動車乗車中および女性・後期高齢者の歩行中の死者数が増加している(図5・図6)。
人口当たりの死者数は高齢者についても減少しており、高齢者の死者数が増加傾向にあるのは、人口増加が影響していることを示している。しかし、人口当たり死者数減少の割合は若者より低く、その差は拡大している。高齢者を前・後期高齢者別にみると、平成10年、前期高齢者(65〜74歳)の人口当たり死者数は若者とほぼ同じであるが後期高齢者(75歳以上)の場合は若者より多いのが特徴である(図7)。高齢者の人口当たり死者数を状態別に比較すると、歩行中は減少しているが絶対数は依然最も多く、自転車乗用中は横ばい、自動車乗車中は増加している(図8)。若者の場合は自動車乗車中、自動二輪車乗車中とも人口当たり死者数が大きく減少している(図9)。
自動車、自動二輪車、原付乗車中の免許人口当たり死者数推移を図10・図11に示す。平成10年では免許人口10万人当たりの自動車乗車中での死者数は高齢者と若者はほぼ同じである。また、高齢者の自動二輪車と若者の原付乗車中、高齢者の原付と若者の自動二輪車乗車中の死者数は、それぞれほぼ同じである。
平成10年の高齢者と若者の致死率はそれぞれ3.5%、0.74%である。状態別致死率では、高齢者は若者 より全ての状態別で高く、特に歩行中の致死率が高い(図12・図13)。
死者数の多い状態別順に死亡事故要因を法令違反別、事故類型別、発生場所別に分析した。
高齢者死亡事故(第1・2当事者合計)は法令違反別でみれば不適切横断、信号無視による割合が高い。この割合は他の年齢層との比較でも高い(図14)。
事故類型別では、横断中による割合が高く、他の年齢層との比較でも高い(図15)。
発生場所別では、交差点での発生割合が全体の44%と高い(図16)。
高齢者死亡事故(第1当事者)は、法令違反別でみると、前方不注意、運転操作不適、一時不停止等の割合が高い。これらの割合は他の年齢層との比較でも高い(図17)。
高齢者死亡事故(第1・2当事者合計)は、法令違反別でみると、安全不確認、指定場所一時不停止等、交差点安全進行義務違反、信号無視の順で割合が高い。安全不確認、指定場所一時不停止等、安全進行義務違反の割合は、他の年齢層との比較でも高い (図20)。事故類型別では、出会い頭、車両相互事故の割合が高い(図21)。発生場所別では信号機なし交差点での割合が全体の46%と高い(図21)。
原付と自動二輪車運転中は同じ傾向を示すことが多い。ここでは原付運転中についてその特徴を示す。高齢者死亡事故(第1・2当事者合計)を法令違反別でみると指定場所一時不停止等、安全不確認の順で割合が高い。
注)第1、2当事者とは交通事故当事者のうち、原則として過失の重い方を第1当事者、軽い方を第2当事者とする。
地域別の高齢者死亡事故の特徴を市区町村を人口規模で区分し分析した。人口規模は、1万人以下、1〜3万人、3〜10万人、10〜30万人、30〜50万人、50万人以上の6つの分類により全国の3255市区町村を区分した。
高齢者人口10万人当たりの高齢者の死者数は、人口規模が小さい市区町村ほど多い。3万人以下の市区町村での死者数は、50万人以上の市区町村に比べて2倍以上である。状態別でみると、歩行中の死者数は、交通事故死者数の多くの部分を占めており、どの地域でも多く、人口規模による差はあまり見られない。
歩行中の死者数の割合は、どの人口規模別市区町村でも高くなっているが、人口規模の大きい市区町 村ほど、割合はより高くなっている。50万人以上の都市では70%にもなっている。自動車乗車中の死者数の割合は、人口規模の小さい市区町村ほどが高い。これは、人口の少ない市区町村ほど、高齢者にとって自動車が、欠かせない移動手段であることを示していると考えられる。
高齢者の死亡事故発生状況の世代別特徴を分析した。世代別分析では、調査対象年度は、昭和55年、昭和60年、平成2年、平成7年の国勢調査の行われた年である。世代別特徴を状態別に死者数で示す(図25)。
死者数・人口当たり死者数・致死率の特徴
死者数、人口当たり死者数、致死率の各指数とも高齢者がもっとも多い。
法令違反・事故類型・発生場所別の特徴
(歩行中):不適切な横断による死亡事故が多いことからも、
まず歩行者自身が「歩行ルール」などの交通ルールを理解しマナーを身に付け安全な行動ができるように予防安全の教育・指導を推進することが重要と考られる。
地域別・世代別の特徴
(人口規模別分析):各市区町村では、高齢者事故発生状況を総合的に分析した上でそれぞれの地域に合った各種の交通安全活動を推進すること、事故防止にあたっては、周辺市区町村との連携を強めて道路環境整備などの対策を実施することが大切であると考えられる。高齢者が通行目的に適した安全性の高い交通手段を選択できるように公共機関の整備等も重要と考えられる。
1.2 人口当たりの死者数
(平成10年、高齢者の人口当たり死者数は若者の1.35倍)
1.3 免許人口当たりの死者数
(高齢者の免許人口当たり死者数は若者とほぼ同じ)
1.4 状態別致死率
(高齢者の致死率は若者の4.7倍、特に歩行中が高い)
2.1 歩行中
(不適切な横断による死亡事故が47%と多い)
2.2 自動車運転中
(前方不注意による死亡事故件数が29%と多い。最高速度違反は増加傾向)
事故類型別では、車両単独の割合が最も高く、出合頭、正面衝突、人対車両の割合も高い(図18)。この割合は他の年齢層との比較でも高い。
発生場所別では、一般単路、信号機なし交差点、カーブでの割合が30%、25%、24%と高い(図18)。他の年齢層との比較では、信号機なし交差点およびカーブでの割合が高い。
最近の高齢者死亡事故の傾向として、法令違反では最高速度違反、前方不注意、安全不確認の割合が増えている(図19)。発生場所については信号機あり交差点での割合が増え、信号機なし交差点での割合は減少傾向にある。
2.3 自転車乗用中
(事故類型では出合頭が53%、発生場所では信号機なし交差点が46%と多い)
最近の高齢者死亡事故の傾向として法令違反別では指定場所一時不停止等、交差点安全進行義務違反、 信号無視の割合が増えている。発生場所別では信号機あり交差点、信号機なし交差点での割合が多い。
2.4 原付・自動二輪車運転中
(原付の場合:出合頭事故が59%、信号なし交差点での発生が53%と多い)
事故類型別では、出合頭の割合が全体の59%と高い。発生場所別では、信号機なし交差点での割合が全体の53%と高い (図22)。
最近の傾向として、法令違反では指定場所一時不停止等、交差点安全不確認の割合が増え、事故類型別では出会い頭の割合が増えている。発生場所別では信号機なし交差点での割合が増えている。
3.1 状態別死者数
(歩行中死者数は人口規模にかかわらずどの地域でも多い)
自動車乗車中の死者数は、人口規模の小さい市区町村ほど多く、1万人以下の市区町村における死者数は50万人以上の市区町村に比べて8倍以上になっている。自転車乗用中の死者数は、中規模の市区町村で多くなっている。原付自転車乗車中は、人口規模の小さい市区町村ほど死者数が多い。
3.2 状態別死者数の割合
(人口規模が大きい程、歩行中の死者数の割合が高い)
男性の原付自転車乗車中の人口10万人当たり死者数は、平成7年時点で75〜84歳即ち大正5〜14年生れ の世代の死者数がいずれの調査年度においても多く、世代別特徴を示している。
女性の自転車乗用中の場合は、平成7年当時70〜79歳の世代、即ち大正10年から昭和3年生れの世代の死者数がいずれの調査年度においても多く、その前後の世代は相対的に少なく世代別の特徴を示している。
(歩行中):歩行中の死者数は多く、女性・後期高齢者の死者数が特に多い。歩行中の事故は致死率が非常に高く、死者数低減対策の難しさがある。歩行中の事故そのものをいかに少なくするかの対策が重要と考えられる。
(自動車運転中):死者数および人口当たり死者数が近年増加しており、対策が急務と考えられる。身体的機能の個人差が拡大する高齢者では各自が身体機能を十分知って安全運転することが必要と考えられる。
(自転車乗用中):死者数は他の年齢層と比較すると各指数とも最も多い状態が継続している。免許を必要とせず誰でも手軽に利用できる車両だけに、特に安全教育の場を設け、利用者の安全意識の向上を図ることが必要と考えられる。
高齢者の場合、歩行中当事者として違反なしが多い事実からも、一方的に弱者として被害にあう場合が多い。人々が高齢者を事故に巻込まないように保護する安全意識を高めることが大切と考えられる。
(自動車運転中):死亡事故では前方不注意、運転操作不適などの法令違反が多い。また、若者は最高速度違反による死亡事故が近年大幅に減っているのに対して高齢者では増加している。自分の能力を知ってハンドルを握る、交通ルールを守るなどの予防安全行動の展開が重要である。
(自転車乗用中):自転車乗用中の死亡事故は安全不確認、指定場所一時不停止など交通ルールの軽視による場合が多い。車道と歩道とを自分の都合で勝手に使い分けてはいないだろうか。交通ルールとマナーを守ることが大切であり、地域のコミュニケーションの場の活用などによる安全教育の徹底が望まれる。
(世代別分析):原付、自転車などの交通手段では世代別特徴が現れている。高齢運転者に対しては、運転免許更新時等に世代別分析結果にも注目して、教育・指導を行うことも大切と考えられる。
今後、社会の高齢化にともない、高齢者も前期・後期高齢者、男女別に交通事故実態を詳細に分析し、 具体的な対策と指導・教育をすることが必要と考えられる。多様化する交通事故の防止対策には多方面か らの十分な分析と分析結果に基づく対策がより重要になると考えられる。