イタルダ・インフォメーション
1999 No.23


特集・自転車事故

目  次

はじめに
1 自転車事故の発生状況と経年推移
2 自転車対四輪車事故
3 自転車と歩行者事故
まとめ
付録 自転車事故Q&A
おわりに



はじめに


環境問題などから自転車の利用が見直されてきており、自転車保有台数も伸び続けています。利用が拡大すれば、自転車事故についても増加することが懸念されます。「自転車事故が全国でどのような状況にあるのか」、また「実際の事故例から自転車事故にはどのような特徴があるのか」、そして「自転車事故を防ぐための注意点は」、という観点から自転車事故について分析してみました。

 自転車事故の発生状況と経年推移

1.1 自転車事故の発生状況

平成10年中に発生したすべての人身事故は、約80万件です。その中で自転車事故は14万件あまり、全事故の18%弱を占めています。また、自転車事故の中ではその9割が自転車対四輪車事故であり、多くの自転車利用者が人身損傷を受けています。一方、自転車事故の0.5%が自転車対歩行者事故となっており、自転車が歩行者に人身損傷を及ぼす事故も発生しています。

表1 自転車事故の発生状況(平成10年)
事 故 件 数構 成 率
全 事 故803,878------
自転車が
直接関与
した事故

自転車143,017全事故中の
17.8%
自転車対
四輪車事故
128,665自転車事故中の
90.0%
自転車対
歩行者事故
661自転車事故中の
0.5%

 

1.2 自転車事故の経年推移

自転車事故の経年推移をみると、自転車対四輪車事故は、近年全事故の増加率を上回ってきています。自転車対歩行者事故については平成4年以降急激に増加しています。

 

交通弱者として、また強者としての二面性を持つ自転車の事故を、それぞれの典型的な形態である自転車対四輪車事故と、自転車対歩行者事故について取り上げ、その特徴や防止策を考えてみます。


 自転車対四輪車

2.1 故統計からみる自転車対四輪車事故

自転車で対四輪車事故に遭う人の年齢層をみると、死傷者では小・中・高生に相当する年齢と50歳代の二つのピークが表れています。死者では65歳以上の高齢者が非常に多くなっています。

一日の中で事故の発生する時間帯をみると、死者、死傷者ともに朝夕の通勤通学、あるいは買い物時間帯に多くなっています。また死者は死傷者の場合に比べて夜間、深夜、早朝、薄暮時間帯に多いことが特徴的です。

道路形状別では、死者、死傷者とも信号機のない交差点が最も多く、次に単路となっています。信号機のない交差点では、特に死傷者において50%以上の構成率となっています。

事故類型別では、死者、死傷者とも出合頭衝突が半数以上を占めています。次に死傷者では右・左折時衝突が、死者では追突されるケースが多くなっています。

2.2 事故例分析による自転車対四輪車事故の代表的パターン

当センターのつくば調査事務所が実施した事故例調査の中の、自転車対四輪車事故159件について事故形態及び四輪車、自転車双方の認知・挙動の状況から10種類のパターンに分類しました。
この分類方法ですべての事故を網羅できるわけではありませんが、自転車対四輪車事故の代表的なパターンと考えられます。自転車、四輪車双方の注意すべき点もあわせて、以下に紹介します。

パターン1 《信号のない交差点での自転車の飛び出し、一時停止無視に起因する事故》

信号のない交差点の細い道から、安全確認や一時停止をしなかったり、優先・非優先の認識もないまま飛び出した自転車が、これを予測できなかった四輪車と衝突。このパターンの事故34件中、半数が小中学生の自転車によるものです。

注意点:自転車も車両の一種であり、子供であっても十分運転の仕方を学ぶ必要があります。四輪車は、見落としやすい小学生の自転車などを予測する注意力が必要です。また、相互に見えやすい道路環境を整備することも重要です。


パターン2 《沿道施設(学校・公園・駐車場等)からの飛び出しに起因する事故》

学校や公園、駐車場などから安全確認をせずに自転車が道路に飛び出して、これを予測できなかった四輪車と衝突。このパターンも10件中6件が小中学生の自転車によるものとなっています。

 

 

注意点:小学生までは、親の監督義務が問われることがあります。危険なところでの自転車通行はしない指導、また急がない習慣づけなどが望まれます。四輪車はカーブミラーや人影まで目を配ること、また時間帯なども考慮して、危険を察知する努力が必要です。


 

パターン3 《自転車のふらつきや、安全確認を行わない自転車の道路横断・右折に起因する事故》

路側走行中の自転車がふらついたり、後方確認しないまま横断や右折をした際に、後方からの四輪車と衝突。このパターンの事故は16件中、10件が高齢者の自転車によるものです。

注意点方向指示器や制動灯のない自転車は、四輪車からは動きが予測しにくいのです。自転車は安全を確かめ、四輪車は自転車の動静に注意しましょう。


パターン4 《交差点での自転車の信号無視による事故》

赤信号無視で横断する自転車と、青信号で進行してきた四輪車が衝突。

注意点:自転車も車両です。信号無視は重大な違反です。信号を守りましょう。四輪車については、青信号であっても安全確認が不要なわけではありません。特に夜間、信号の変わり目、発進時など十分な確認をしましょう。


パターン5 《自転車が右側通行することによる事故》

自転車が車道右側を通行していて、対向四輪車や沿道施設に出入りする四輪車と衝突。

注意点:自転車は車両です。車道では左側通行を守りましょう。四輪車は「車線区分のある道路で対向してくる車両はない」という意識があると思われます。実際には多い自転車の右側通行に注意しましょう。


パターン6 《自転車が渋滞車列から道路横断して発生する事故》

信号待ちや渋滞の車列を抜けて自転車が道路横断した際に、反対側から進行してきた四輪車と衝突。

注意点:自転車はたとえ自転車横断帯がある場所であっても、渋滞していない側の車線に十分注意して渡る必要があります。四輪車は反対車線の渋滞時には横断自転車、歩行者、すり抜け二輪車などを予測することが必要です。


パターン7 《交差点・沿道施設入口への右左折四輪車と、横断歩道・歩道上の自転車の事故》

交差点を右左折、または沿道施設に入る四輪車と、横断歩道または歩道を通行する自転車が衝突。

注意点四輪車と自転車が同方向に進行している場合が多く、自転車が四輪車から見えにくい位置にあることが事故原因となっています。四輪車は進行方向や、対向車線のみに注意を向けるのではなく、首を振って全体の状況をつかみ、自転車は一時停止などで安全を確保しましょう。


 

パターン8 《沿道施設から車道へ左折合流する四輪車と、左側から進行する自転車の事故》

車道に出る四輪車と、その四輪車にとって左方向から進行してきた自転車が衝突。

注意点車道に合流する四輪車は車道の交通流に気をとられ、この場合右側に注意が集中しがちです。四輪車は自転車が歩行者よりも速いことを意識し、反対側の安全も確認しましょう。自転車は見られるための夜間点灯が必須です。また、一時停止などで安全を確保する努力をしましょう。


パターン9 《常時左折可の交差点での事故》

左折四輪車と導流路を横断する自転車が衝突。

注意点左折四輪車の運転者は合流先道路に注意が集中しがちですが、その手前の安全も十分確認が必要です。自転車は四輪車の注意に頼らず、一時停止などで安全を確保しましょう。


パターン10 《夜間、雨天、飲酒、前方不注意等による自転車への追突事故》

狭い道路で夜間や雨天時、四輪車が飲酒、前方不注意などで自転車の発見が遅れ、自転車に追突。

注意点狭い道路では路肩に余裕がなく、また夜間、雨天は視認状況は思ったより悪いので良く見ること、見られることを意識しましょう。


 自転車対歩行者事故

3.1 事故統計からみる自転車対歩行者事故

 

平成7年から10年(4年間)に発生した自転車対歩行者
事故は
2,439件。この中で歩行者重傷事故は497件、歩行者
死亡事故が
14件となっています。

 

 

       
表2 歩行者損傷別事故件数(平成7〜10年) 
     歩行者損傷状況        合 計  
死 亡重 傷軽 傷無 傷
144971,7641642,439
0.6% 20.4% 72,3% 6.7% 100.0%

衝突地点は歩道が最も多く、歩・車道の区別のない非
分離道路、車道(横断歩道上を含む)も多くなっています。

発生時間を昼夜別にみると、人身事故全体では6割以上
が昼間ですが、死亡事故では夜間が多くなっています。
(グラフ内の数字は事故件数を示す。)

事故当事者同士の年齢の組み合わせをみると、自転車側第1当事者が中高生(特に高校生)に相当する年齢で、歩行者側第2当事者が高齢者(65歳以上)の組み合わせが他に比べて突出しています。

1当(第1当事者)とは
直接事故に関わった当事者
のうち過失の重い側で、過
失が同程度の場合、人身損
傷が大きい側を2当(第2
当事者)といいます。

3.2 事故例にみる自転車対歩行者事故

 

最近4年間の自転車対歩行者死亡事故14件の中で、7件が“中高生自転車対高齢歩行者の事故”となっています。自転車対歩行者事故の典型ともいえるこのパターンの事故を2例紹介します。

事例1 《下校途中の高校生と歩道上の高齢者との事故》

 すでに暗い夕刻、いつもの経路を自転車で下校中の女子高校生は、歩道上の高齢者(86歳)に気づかず接近。直前に発見したが避けきれずに衝突し、高齢者が死亡した。

自転車の前照灯は故障中で無灯火だったが、家屋の明かり等で手前からでも見える状況だった。衝突地点側の歩道は自転車通行不可で反対側の歩道は通行可だったことを女子高校生は知らなかった。


事例2 《高校生の二人乗り自転車と横断歩行中の高齢者との事故》

 日没直後でまだ明るい夕刻、車道を走行中の男子高校生は、前方に横断中の高齢者(71歳)を発見したが、先に通過できるか、または相手が道を譲ってくれると思い、ブレーキ等の回避行動はとらずそのまま衝突し、歩行者が死亡した。

自転車は友人と二人乗りであり、同乗者は立ち乗り(ハブステップの不適切な使用)で衝突するまで乗車していた。



分析のまとめ



自転車は歩行者より移動速度が高く、車道も歩道も通行することなどから、その動きが捉えにくいものとなっていることがわかっていただけたと思います。
 四輪車の運転者は、突然現れるかもしれない自転車を見つけるために、できるだけ死角をなくそうという意識、また見えている自転車の次の行動をさらによく見ようという意識が必要です。
 自転車の運転者は、自転車が見落とされやすいものであることを理解し、夜間点灯や必要な場面での一時停止、徐行を心がけ、できるだけ相手に見られるようにすると同時に、方向指示器や制動灯などによる明確な意思表示ができない分、相手が自分の動きを予測できないと考えて行動する必要があります。


人と自転車をあわせた重量が走行するエネルギーは歩行者にとって脅威となります。高い速度での歩道走行や、許可されていない二人乗りはこれをさらに増大させることになります。気軽に利用していますが、自転車は車両であり自動車と同様、法規履行の精神と歩行者を保護する意識が不可欠です。
 交通社会は一定のルールによって成り立っていますから、まずはルールを知ることが必要です。そしてその意味を理解することでルールの重要性が認識でき、ルールを守ろうという意識につながります。誰でも利用できる自転車ですからすべての人が自転車についての安全教育を受ける機会が必要と考えられます。


付録 自転車事故 Q&A


Q1 自転車での事故も警察に届け出るのでしょうか。


A1 人の死傷、または物の損壊があった場合は警察に届け出る義務があります。

自転車は車両です。自動車との事故は車両相互事故として、歩行者との事故は人対車両事故として扱われます。
 免許制度はありませんが車両運転者としての義務は課せられています。



Q2 自転車も歩道を走ってよいのでしょうか。


A2 指定された歩道でのみ、徐行での通行が可能です。

標識等により指定された歩道においてのみ通行が可能です。ただし歩道の車道寄りの部分(歩道に白線と自転車の表示がある場合はそれによって指定された部分)を徐行することとなっており、歩行者の通行を妨げる恐れのある場合は一時停止することとなっています。つまり歩行者優先です。
 今後、自転車専用の通行部分を整備することが望まれますが、全ての道路で実施することは不可能と思われます。歩道上では歩行者優先の意識を定着したいものです。


Q3 自転車にも自動車損害賠償責任保険のようなものがあるのでしょうか。

A3 自賠責保険のような制度はありませんが、加入できる保険はあります。

自賠責保険は、法律で義務付けられたものであり、対象は原付以上の自動車です。自転車の場合、任意で加入する保険があります。参考に3例紹介します。

  • 個人賠償責任保険:自動車は対象外ですが自転車は対象で、日常生活の出来事で他人に損害を与え、賠償責任を負った場合に支払われる保険です。
  • TSマーク付帯保険:自転車安全整備店の自転車安全整備士が自転車の点検・整備をして安全な普通自転車であることを確認したとき、その自転車に貼付するTSマークに付帯されるもので、有効期間内に発生した事故に対して賠償保険金や傷害保険金が支払われます。
  • 自転車総合保険:自動車のいわゆる任意保険の自転車版といえるもので、相手に対する賠償保険、自分が損傷した場合の傷害保険など組み合わせができる保険です。

詳しくは保険会社、自転車販売店等にお問い合わせください。

事故を起こさないことが重要ですが、万一起きてしまった場合の備えは大切です。自転車側本人のためだけでなく、事故の相手となってしまった人のためにも保険には加入しておきたいものです。


おわりに


今回の特集では事故を構成する、人・道・車の中で、人について考えてみました。道や車については自転車道の整備や、自動車の赤外線感知システムの普及などが今後期待されます。また、安全教育や法制度については、事故実態などに合ったものとしていく必要があり、今回の特集がその参考になれば幸いです。

自転車は幼児から高齢者にいたるまで幅広い層が利用する車両です。生涯学習である交通安全教育の良い教材となるでしょう。また、この特集では被害者として高齢者が多いこと、そして被害者及び加害者の両方として、高校生年齢前後の自転車利用者が多いことがわかりました。高校での自転車指導はもちろん重要ですが、ある程度価値観が固まってしまう高校生年齢より、前の段階である小中学校、あるいは家庭での自転車教育を通じた交通モラル、人命の尊重などの意識向上が、自転車の安全に効果的であると思われます。


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