イタルダ・インフォメーション
1999 No.22


チャイルドシートと自動車乗車中の幼児の交通事故

目  次

はじめに
交通事故統計からみるチャイルドシートの使用効果
事故例分析からみるチャイルドシートの効果
分析のまとめ
付録 チャイルドシートQ&A
おわりに


はじめに



 来年(平成12年4月1日)から、幼児(6歳未満の子供のことを言います)を自動車に乗車させるときは、チャイルドシートを使用する義務が運転者に課せられることになりました。今回のイタルダインフォメーションでは、自動車乗車中の幼児の交通事故の実態とチャイルドシートの使用効果を分析した結果を紹介します。



 交通事故統計からみるチャイルドシートの使用効果

1.1 自動車乗車中の幼児の死傷者数の推移


急増する自動車乗車中の幼児の死傷者

  自動車乗車中に交通事故にあい、死亡したり負傷したり
する幼児が急増しています。  自動車乗車中の幼児の死傷
者数は、最近5年間で約 3,200人も増加しました。幼児の交
通事故といえば、少し前までは歩行中の交通事故が大部分
を占めていましたが、最近では、自動車乗車中に死亡したり
負傷したりする幼児のほうが多くなっています。



1.2 事故が発生する曜日と通行目的

週末の事故が多く、買物や訪問のために外出中の事故が多い
 自動車乗車中の幼児の事故は、土曜日と日曜日に多く発生しています。また、通行目的では、買物、訪問などが目立っています。


 

 

1.3 チャイルドシート使用・非使用別の死亡・重傷率

チャイルドシート非使用の場合の死亡・重傷率は約3倍
 自動車乗車中に事故にあったときの死亡・重傷率(表1の注6を参照)は、チャイルドシート非使用の場合は、使用の場合に比べて約3倍も高い値となっており、チャイルドシート非使用の危険性が明らかです。また、後席のほうが、前席よりも、死亡・重傷率が低いことがわかります。

 

1.4 チャイルドシート非使用の場合の自動車の速度

死亡したり重傷を負った例の中には低い速度での事故が多い
 チャイルドシート非使用で、幼児が死亡したか重傷を負った事故について、衝突した自動車の速度の内訳をみると、時速40km以下が50%以上を占めます。チャイルドシート非使用の場合、低い速度で走っていても被害が大きくなることがわかります。

 

 

 

1.5 チャイルドシート非使用の場合の加害部位

後部座席に座っていても、フロントガラスやダッシュボードにぶつかることも
 チャイルドシート非使用で死亡した幼児の場合、車外放出(衝突の衝撃により車外に投げ出されること)による事故が約4分の1を占めています。また、後部座席に着座していた場合でも、フロントガラスやダッシュボードに体を衝突させており、幼児の体が遠くまで飛ばされていることがわかります。車が衝突したとき、幼児が車外へ投げ出されたり、ドアやガラスに体をぶつけないようにするために、チャイルドシートが必要なことがわかります。


 

 

1.6 チャイルドシート非使用の場合の傷害部位

頭の怪我が致命傷となっている例が多い

 チャイルドシート非使用で負傷したり死亡した幼児が、体のどこの部位に傷害を負ったかを調べると、頭部や顔部に傷害を負った例が多いことがわかります。特に死亡した例では、頭部に傷害を負った幼児の割合が多くなります。幼児は頭部が致命傷となる例が、大人に比べて多いことがわかります。

1.7 チャイルドシートの使用効果の試算

全員がチャイルドシートを使用していれば、5年間の死亡重傷者が約360人減少した計算に
 図
10は、図3で示した重傷率及び致死率をもとに、平成610年の交通事故について、全員がチャイルドシートを使用していたと仮定して、重傷者数及び死者数を試算した結果です。全員がチャイルドシートを使用していたと仮定すると、平成610年の5年間で、幼児の重傷者数及び死者数が360人以上少なくすんだ計算になります

 

 事故例分析からみるチャイルドシートの効果

2.1 チャイルドシートの使用で幼児の被害が小さかった事故例

事例1


★事故の概要                                   ★子供の様子

 午後3時頃、Aさんの運転する軽自動車が左カーブを通行中、       軽自動車の後部座席にチャイルドシートを使用して乗車
駐車スペースから道路に出てきた普通乗用車と衝突した。Aさん       していた1歳7ヶ月の幼児は、頭部に軽傷を負った。Aさ
の軽自動車は、右前面を中破した。                        んも腕や頸部に軽傷を負った。

 

 


Aさんの話
 事故のときは、友人を最寄り駅まで送っていくときでした。
突然、乗用車が目の前に出てきたのでびっくりしました。事
故のときに子供は眠っていて、衝突のときには泣きましたが、
怪我が軽くて本当によかったと思います。

 

事例2

★事故の概要                                                           ★子供の様子

 午前10頃、Bさんの運転する軽自動車は、信号機の       軽自動車の助手席にチャイルドシートを使用して乗車
ない交差点において、普通自動車と出合頭に衝突した。      していた7ヶ月の幼児は、無傷であった。シートベルトを
衝突の衝撃で軽自動車は横転した。               使用していたBさんも無傷であった。


Bさんの話
 必死の思いで横転した車からはい出し、おそるおそる子
供が乗っていた助手席をのぞき込みました。子供は泣きじ
ゃくっていましたが、怪我もしていませんでした。チャイ
ルドシートをしていなければ、大変なことになっていた
と思います。



事例3

★事故の概要                                                           ★子供の様子

 平日の午前中、Cさんの運転する普通乗用車は、信号機      後部座席の左側に、チャイルドシートを使用して乗車
のある交差点において軽自動車と出合頭に衝突した。Cさ     していた2歳1ヶ月の幼児は、頭部に軽傷を負った。C
んの乗用車は、軽自動車と衝突した後、電柱に衝突し、車     さんは軽傷であった。
の右前面及び左後部が大破した。

Cさんの話
 事故のときは、相手の車と電柱にぶつかったので、2回
大きな衝撃を感じました。近くに買物に行く途中でしたが、
普段からチャイルドシートを使用していてよかったと思い
ます。

2.2 チャイルドシート非使用で幼児の被害が大きかった事故例

事例4 

★事故の概要

 Dさんの運転する普通乗用車は、信号機のない交差点において、普通貨物車と出合頭に衝突した。

 

★子供の様子

 普通乗用車の助手席には、2歳の幼児と4歳の幼児がチャイルドシート非使用で乗車していたが、2歳の幼児が頭部打撲により死亡した。4歳の幼児とDさんは無傷であった。

 

事例5

★事故の概要

 Eさんの運転する普通乗用車は、国道を進行中、対向車線にはみ出したところ対向してきた大型貨物車と正面衝突した。

★子供の様子

 普通乗用車には、3人の幼児がいずれもチャイルドシート非使用で乗車していた。後部座席に乗車していた2歳の幼児と9ヶ月の幼児が死亡した。助手席にいた3歳の幼児は重傷を負った。Eさんも死亡した。

 

事例6

★事故の概要

 Fさんの運転する普通乗用車は、道幅約3mの道路を進行中、
Fさんが脇見をしたことが原因でハンドル操作を誤りブロック
塀に衝突した。

★子供の様子

 普通乗用車の助手席には、5歳の幼児が大人用シートベルト
を着用して乗車していたが、内臓損傷により死亡した。

 


分析のまとめ


 幼児を自動車に乗車させる場合、チャイルドシートを使用しないと大変危険であるのは、交通事故統計分析と交通事故例分析の両方から明らかです。車が衝突するときの衝撃は、一般の人の想像を超えるほど激しいものです。大人が抱っこするくらいでは、幼児の体を到底支えられるものではありません。また、後部座席に着座させるから、速度をあまり出さないからと言って、チャイルドシートを使用させないことが安全なわけではありません。衝突のときに幼児の体が車外に投げ出されることを防いだり、ドアやガラス等の車内の部位に激しく衝突することを防ぐために、幼児の体を拘束しておくことが、万一事故が発生した場合の被害を少なくするために必要なことです。そのための装置としてチャイルドシートの使用が不可欠であることを理解したいものです。

 


付録 チャイルドシートQ&A


Q1 チャイルドシートを選ぶときの目安を教えて下さい。

A1 子供の体にあったチャイルドシートを選びましょう。

 チャイルドシートには、必ずその製品が何歳から何歳くらいまでの子供のために作られた製品であるか、体重が何kgくらいの子供を対象に作られた製品であるかが明記されています。子供の体にあったチャイルドシートを選ぶことが最も重要です。また、チャイルドシートについては、運輸省が安全基準に適合した製品かどうかの試験を行っており、合格した製品は、認証マークが製品に貼ってあります。製品の安全性については、この認証マークが貼ってあることが目安になります。


Q2 チャイルドシートはどこの席に使用するのが一番安全でしょうか。

A2 車種にもよりますが、後席の中央が最も安全であると言われています。

 激しい衝突の場合に、ピラーやシートバック等に子供が衝突しにくい場所に使用するのが安全です。また、助手席にエアバックが使用されている場合は、助手席にチャイルドシートを使用するのは大変危険です。一般的に、前席より後部座席のほうが安全です。後部座席の中では、中央が最も安全であると言われています。但し、車種によっては、後部座席の中央が盛り上がっていたり、シートベルトが届かなかったりしてチャイルドシートがしっかり固定できない車種も少なくありません。チャイルドシートがしっかり固定できない場合は、かえって危険です。


Q3 チャイルドシートを正しく取り付けるにはどのような工夫が必要でしょうか。

A3 シートベルトでチャイルドシートをしっかり固定することが必要です。

 大部分のチャイルドシートでは、シートベルトにより車両に固定します。グラグラしたりゆるみがないようにしっかり固定することが大切です。最近、新車で販売される国産車の後部座席のシートベルトには、チャイルドシート固定機能が付いたシートベルトを装備する車が多くなっていますが、この機能がついていない車両に使用する場合、ロッキングクリップ等を使ってシートベルトがゆるまないようにする必要があります。チャイルドシートの使用の方法は、製品によって異なります。また、取り付けようとする車種によっても異なる場合があるため、チャイルドシートの取り扱い説明書を参考にして正しく取り付けましょう。取り付け方がよくわからない場合は、製造メーカーか販売店に相談しましょう。


☆参考

 チャイルドシートの取り付け方法を調べた結果によると、大部分の人がチャイルドシートを車に正しく取り付けていないようです。(社)日本自動車連盟の調査によると、調査したチャイルドシートの84.4%(調査台数32台)に緩みがあったとのことです。アメリカの調査においても、調査したチャイルドシートの85%になんらかの取り付け不良や誤使用があったとのことです(The National Safe Kids Campaignによる調査。調査台数17,500台)。事故のときに幼児を守るためには、チャイルドシートを正しい方法でしっかり取り付けることが必要です。



Q4 外国の法制度はどうなっているのでしょうか。

A4 ほとんどの先進国でチャイルドシートの使用が義務づけられています。

 チャイルドシート使用は、ほとんどの先進国で義務づけられています。表2は、主な国の法律を一覧にしたものです。幼児の命を守る方法として、チャイルドシートの使用は世界の常識と言えましょう。

 

表2 海外におけるチャイルドシートの使用義務

国名

使用が義務づけられる子供

イギリス

2歳以下はチャイルドシート使用・3歳以上11歳以下かつ身長150センチ未満はチャイルドシートがあれば使用、なければシートベルトを使用

ドイツ

11歳以下かつ身長150センチ未満

フランス

9歳以下

スウェーデン

6歳以下

アメリカ合衆国

州によって異なる(4歳未満又は体重40ポンド未満(カリフォルニア州)、13歳未満(テネシー州)、身長40インチ以下(ケンタッキー州)等)

「チャイルドシートの着用実態に関する調査研究報告書」((財)国際交通安全学会)による

 


おわりに


 先日発表されたチャイルドシートの使用率の調査結果((社)日本自動車連盟による調査)によると、チャイルドシートの使用率は15%(6歳未満の合計)でした。前年の調査(平成10年6月の調査)に比較すると約2倍になっていますが、高い使用率とは決して言えません。「費用がかかる」、「面倒くさい」等の理由をあげてチャイルドシートの使用に消極的な人もいますが、チャイルドシート非使用で子供を自動車に乗車させることの危険性とチャイルドシートの使用効果を理解してほしいものです。


 

本パンフレットは、(社)日本自動車部品工業会(チャイルドシート委員会)の協賛により作成されました。


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