目 次
はじめに
自動車の車種別分析結果
乗用車のクラス別分析結果
まとめ
「交通事故と運転者と車両の相関」分析は、「乗員被害の発生頻度及び被害程度」と「事故要因」の関係について研究したもので、過去2回にわたって紹介してきました。本号は、平成9年度の研究報告書をベースに、平成6、7、8年の「車両相互事故」「車両単独事故」で運転者自身が死亡したケースについて、シートベルトの着用、非着用の比較を添えて、その分析結果を紹介します。
(交通事故は、他に「人対車両事故」「列車との衝突事故」がありますが、前者は運転者の死亡する率が低い、後者は件数が少ないとの理由で、本分析の対象から外しています。)
平成8年に約976,000人の自動車運転者が車両相互事故に関与し、そのうち死亡した運転者は約1,700人います。図1に人身事故に関与した運転者1,000人あたりの死者数(以下、死亡率と表します。)を車種別に示します。
なお、車種区分は、道路運送車両法の区分にしたがっていますが、以下、特殊自動車と二輪は除外してあります。
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車種別に死亡率をみると、ベルト着用、非着用とも「軽貨物車」「軽乗用車」が高く、最も低い車種は「普通乗用車」となっています。
車両相互事故による死亡事故について、車種ごとの特徴をよく表している例として衝突相手車両の車種構成と衝突部位の各比率を図2、3に示します。
![]() | 死亡事故時の衝突相手車両は、 「普通貨物車」・「小型乗用車」 の比率が高いことがわかります。 |


平成8年に約28,400人の自動車運転者が車両単独事故に関与し、そのうち死亡した運転者は約1,300います。図4に人身事故に関与した運転者1,000人当たりの死者数を車種別に示します。
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車種別に死亡率をみると、ベルト着用では各車種間の差も少なく、全体的に低くなっており、ベルト非着用では「普通乗用車」「普通貨物車」が特に高く、最も低い車種は「軽乗用車」となっています。
車両単独事故における死亡事故について車種ごとの特徴をよく表している例として、危険認知速度の累積カーブを図5に、事故類型区分の構成率を図6に示します。なお、危険認知速度とは運転者が危険を認知して回避行動に移る直前速度のことです。
![]() | 車種別にみると普通乗用車の危険 認知速度が高いことがあげられ、 普通乗用車の死亡率が高いことと 強い関係があると考えられます。 (グラフのカーブが右に寄ってい るほど、高い速度で死亡事故が発 生したことを示します。) |
![]() | 全般的に、「工作物」との衝突 割合が高いことがわかります。 また、普通貨物車では、駐車 中の車両に対して衝突する比率 が高くなっています。 |
車種別に死亡率を比較してみると、例えば「自動車全体」の全運転者で、車両単独事故が車両相互事故に比べ、約26倍(ベルト非着用の場合は約8倍、着用の場合は約32倍)と、車両単独事故の死亡率が極めて高いことがわかります。
これは、車両相互事故よりも車両単独事故の方が運転者により大きな衝撃が加わっており、場合によってはベルトの効果の限度を越えるような衝突の比率が高いためと考えられます。
言い換えれば衝突相手の質量の大きさ・剛性の高さなどがシートベルトの着用効果に影響を与えているものと考えられます。
そしてこれらの結果はいずれも、ベルト着用の大切さ、安全速度で走行することの大切さ、衝突相手の衝撃緩和の大切さなどを示しているといえます。
前項では車種別に分析しましたが、ここでは保有台数が多く、使われ方が比較的似ている乗用車(軽、小型、普通)を車両の性格に着目して表1のようにクラス別に分類し、車種別と同様な分析を実施した結果を示します。
| ファミリー軽乗用車 |
| セダンA (主な型式が排気量1,500cc以下のもの) |
| セダンB (主な型式が排気量1,500cc超〜2,000cc以下のもの) |
| セダンC (主な型式が排気量2,000cc超のもの) |
| スポーツ&スペシャリティ (軽乗用車の一部を含む) |
| ワゴン |
| 1BOX&ミニバン |
| RV(SUV) |
平成8年に約641,000人の乗用車運転者が車両相互事故に関与し、そのうち死亡した運転者は約900人います。図7に、人身事故に関与した運転者1,000人当たりの死者数をクラス別に示します。
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クラス別に死亡率をみると、ベルト着用では各クラス間の差も少なく、全体的に低くなっており、ベルト非着用では「ファミリー軽」「1BOX&ミニバン」が高く、最も低いクラスはRV(SUV)となっています。
車両相互事故による死亡事故について、クラスごとの特徴をよく表している例として衝突相手車両の車種構成と衝突部位の各比率を図8,9に示します。
![]() | 死亡事故時の衝突相手車両は、 車種別同様、「普通貨物車」・ 「小型乗用車」の比率が高いこ とがわかります。 |


平成8年に約18,000人の乗用車運転者が車両単独事故に関与し、そのうち死亡した運転者は約850人います。図10に車両単独事故に関与した運転者1,000人当たりの死者数をクラス別に示します。
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クラス別に死亡率をみると、ベルト着用では「セダンC」「スポーツ&スペシャリティ」が高く、最も低いクラスは「RV(SUV)」となっています。また、ベルト非着用では「RV(SUV)」、「セダンB,C」、「スポーツ&スペシャリティ」が高く、最も低いクラスは「ファミリー軽」であることがわかります。
乗用車の各クラスごとの車両単独事故における危険認知速度の累積カーブを図11に、事故類型区分の構成率を図12に示します。
![]() | セダンCとスポーツ& スペシャリティの危険 認知速度が高いことが わかります。 |
![]() | RV(SUV)軽乗用車の 路外逸脱が多いことが わかります。 |
RV(SUV)の危険認知速度が平均的であるにもかかわらずベルト非着用運転者の死亡率が高いのは転落、路外逸脱の比率が多い等の関係が考えられます。
このことは、ベルト着用者の死亡率が低い点からもうかがえます。
セダンCとスポーツ&スペシャリティのベルト着用運転者の死亡率が高い理由は危険認知速度が高いことや工作物への衝突比率が高いことが影響していると考えられます。
自動車の車種別分析結果同様に、乗用車のクラスすべてについて、ベルト着用運転者、ベルト非着用運転者とも、車両相互事故に比べ車両単独事故の死亡率が高いことや、単独事故で運転者が受ける衝撃の高さがうかがえるなどの特徴がわかります。
いずれの場合もベルト着用の効果は、大変大きいことがわかるとともに、ベルト着用の大切さ、安全速度で走行することの大切さ、衝突相手の衝撃緩和の大切さなどを示しているといえます。
今回は、運転者自身が死亡したケースを、車両相互事故、車両単独事故について車種別に、またその中で乗用車をクラス別に分析した結果を報告しました。事故を起こした運転者の死亡率は車の使われ方(速度、ベルトの着用の有無など)に大きく左右されることがわかっていただけたと思います。しかし、トータルの危険性は、今回報告したような事故が発生した場合の危険性だけではなく、事故の発生率も合わせて判断しなければなりません。(財)交通事故総合分析センターではこれに関連した分析を、乗用車の通称名別にまで踏み込んで分析を行っていますが、この場合も今回示した結果と同様に、事故率や死亡率は車の使われ方、運転者の特性などに大きく左右されているとの結果がでています。
それにしても、一旦事故を起こした場合、ベルトの着用が死亡率を下げる効果は車両相互事故、車両単独事故いずれの場合でも大変大きいこともわかっていただけたと思います。
また、交通事故の低減や交通事故による被害の軽減のためには、車両や道路環境などハード対策に加え、運転者一人一人が安全な速度で運転することの自覚と努力がかかせません。事故を発生させない運転、事故が発生しても被害を大きくしない運転に是非心がけていただき、この報告が交通安全の向上に役立つことを期待してやみません。
注.特に注記なき用語の定義は「交通統計」((財)交通事故総合分析センター発行)に準じています。