イタルダ・インフォメーション
1998 AUTUMN No.18


飲酒運転事故

目  次

はじめに
交通事故統計からみる飲酒運転事故の特徴
事故例からみる飲酒運転事故の特徴
分析のまとめ
付録 飲酒運転事故 Q & A
おわりに


はじめに


 年末が近づくにつれて、お酒を飲む機会が増えることと思います。お酒を飲んでいい気分になり、ついつい車を運転して家に帰ってしまおうかと考える人もいるかもしれません。しかし、ちょっと待ってください。お酒を飲んで運転することは大変危険な行為であり、飲酒運転が原因となった交通事故が毎年多く発生しています。今回のイタルダ・インフォメーションは飲酒運転による交通事故に焦点をあててみました。この冊子を読んで飲酒運転がどれだけ危険かを理解して頂ければ幸いです。

注)特に断り書きのない場合は、交通事故の原因となった法令違反が”酒酔い運転”であった事故を言います。



 交通事故統計からみる飲酒運転事故の特徴

1.1 飲酒あり運転者の割合

夜間の事故の4件に1件は飲酒がらみの事故 
 死亡事故を起こした運転者のうち飲酒ありと判断された運転者の割合は、昼間では5%にすぎませんが、夜間では23%に達しています。飲酒をしていた量は運転者によって異なりますが、飲酒が事故の発生になんらかの影響を及ぼしたと考えられます。

          

死亡事故の第1当事者(責任が重いと判断された運転者)の内訳
「飲酒あり」には、飲酒をしていたが血液中のアルコール濃度が基準値以下であった者も含む
平成9年中


図1 死亡事故を起こした運転者における飲酒あり運転者の割合


1.2 飲酒運転事故の多い曜日と時間帯

飲酒運転事故は週末の夜と日曜の午後に多い 
 飲酒運転事故の発生件数を時間帯別曜日別に見ると、金曜日と土曜日の夜に発生件数が多くなっています。週末の夜はお酒を飲む機会が多いからだと考えられます。また、日曜日では、午後の早い時間帯から飲酒運転事故が多く発生しています。日曜日の午後は、レジャーや食事に出かけた先で、友人・知人、あるいは親戚の方と一杯飲むことが多いからでしょうか。

図2 曜日別発生時間帯別にみた飲酒運転事故の発生件数(死亡事故・負傷事故の合計)


1.3 飲酒運転事故の多い月

年末にかけて事故件数がやや多い 
 飲酒運転事故の月別の発生は図3のとおりです。忘年会シーズンである12月の発生件数が確かに多いと言えますが、飲酒運転事故は年間を通じて発生しています。

図3 飲酒運転事故の月別件数(死亡事故・負傷事故の合計)


1.4 事故類型別にみた飲酒運転事故件数

単独事故が多い
 飲酒運転事故の事故類型別の内訳をみると、単独事故が全体の62%を占めています。次に多いのが車両相互事故で全体の33%を占めています。センターラインをオーバーして対向車と正面衝突したり、電柱やガードレールに衝突したり、または、前車に追突するなどの事故が多く発生しています。

              

図4 飲酒運転事故の事故類型別の内訳(死亡事故)    図5 飲酒運転による車両相互事故の内訳(平成9年中)

図6 飲酒運転による単独事故の内訳(平成9年中)


1.5 危険認知速度別にみた飲酒運転事故件数

飲酒運転に加えて速度超過というパターンが多い 
 飲酒運転による死亡事故の発生件数を事故直前の速度別にみると、飲酒運転よる死亡事故では時速70km以上であった場合の事故件数の割合が多くなっています。飲酒をした上に速度を出して走ることが危険であることは、言うまでもありません。

図7 飲酒の有無別にみた事故直前速度の違い(死亡事故)


1.6 性別と年齢別にみた飲酒運転事故件数

飲酒運転事故は40代の男性に多い 
 飲酒運転事故を起こした者の90%以上は男性であり、また、年齢層別にみると40代の運転者による事故が最も多くなっています。交通事故全体では、20代の男性による事故が多いのに比べて、飲酒運転事故では30〜50代の男性による事故が多いことが特徴です。運転経験の長いベテランによる事故が比較的多いことがひとつの特徴と言えます。

            

図8 飲酒運転による死亡事故を起こした運転者の年齢      図9 飲酒運転による死亡事故を起こした運転者の性別


1.7 飲酒運転事故の年次変化

飲酒運転事故は減少傾向。景気後退の影響か?
 近年、交通事故件数が減少傾向にありますが、飲酒運転による交通事故は特に減っています。景気後退の影響により、お酒を飲む機会が減っていることに関係があるとも考えられます。

図10 飲酒運転事故件数の最近の推移


 事故例からみる飲酒運転事故の特徴

   飲酒運転による事故のうち、典型的な事故例をいくつか紹介します。

2.1 飲酒と居眠り運転による単独事故

★事故の概要
 午後9時頃、30代男性は仕事仲間と飲酒した後、A車を運転して自宅近くの道路を走行中に居眠り運転となり、道路右側の民家の塀に衝突した。

★解説
 飲酒運転による事故の中で最も多い事故の形態が単独事故です。飲酒の影響で居眠り運転になる事例も多くあります。この男性は、飲酒と仕事の疲れが重なり、居眠り運転となったようです。


2.2 飲酒と信号見落としによる事故

★事故の概要
 午前0時頃、40代男性が運転するA車は赤信号で交差点に進入し、右方道路から青信号で直進してきたB車と出合頭に衝突した。

★解説
 飲酒すると、知覚能力が低下し、信号や歩行者等を見落とす危険が大きくなると考えられます。また、信号や歩行者を認知していても反応が遅れたり、反応できないことがあるようです。


2.3 高い速度で発生した飲酒運転事故

★事故の概要
 40代男性は、高速道路を時速約110キロメートルでA車を運転していた際、居眠り運転に近い漫然運転で前方注視を怠り、前方を走行中のB車に接近したことを直前まで気付かず追突した。A車は左側ガードレールに衝突後、反動で追越し斜線に進出し停止した。

★解説
 飲酒をして高速走行する場合は特に危険性が高くなると考えられます。

2.4 二輪車による飲酒運転事故

★事故の概要
 午前3時頃A車の運転者(20代男性)は、友人数人と酒を飲み、気分が悪くなって外へ出たが、そのまま自分の二輪車に乗り、一般道路を約100km/h以上の速度で走行中、中央分離帯へ衝突、100m以上滑走した後に停止した。

★解説
 バランスをとりながら運転する必要がある二輪車の場合、飲酒による影響を特に受けやすいと考えられます。

2.5 飲酒をしていた歩行者の事故

★事故の概要
 深夜、Aさんは、酒を飲んで帰宅途中に道路に寝込んでしまった。接近してきたB車は、直前に寝ているAさんに気づき、急ブレーキとハンドルで回避しようとしたが間に合わずAさんを轢過してしまった。

★解説
 飲酒により交通事故に遭う危険性が大きくなることは、自転車や歩行者にもあてはまります。ここでは、少々極端な事例を紹介しましたが、千鳥足になって車道をふらふら歩いていたところを車にはねられる事例も少なくありません。


分析のまとめ


 飲酒運転事故の件数は最近減少していますが、夜間に事故を起こした運転者の23%が飲酒をしているなど、依然として飲酒をしたあとに車を運転する人が多いことがわかります。また、30〜50歳代の男性は交通事故を起こす危険性が低いと言われていますが、飲酒運転の事故では、これらの運転者による事故が多いこともひとつの特徴です。また、見通しの良い道路における単独事故や正面衝突事故など、飲酒をしていなければ事故が発生する危険性は低かったと考えられる状況において発生した事故が多いことがわかります。


付録 飲酒運転事故  & 


Q1  ちょっと飲むだけなら大丈夫ではないでしょうか。

A1  たとえ少量でも飲酒の影響がみられます。また、飲酒の影響は長時間持続します。

 飲酒をすると、反応時間が長くなったり判断の誤りが生じやすくなったりします。さらに、警戒心が乏しくなり危険な運転をしやすくなるなどの影響もみられます。酒気帯び運転の基準値は、血液1ミリリットル(1cc)あたり0.5ミリグラム(1ミリグラムは千分の1グラム)と決められていますが、これらの影響は、これより少量の飲酒でも影響がみられます。また、体内に入ったアルコールが分解されて飲酒による影響がなくなるまでは少なくとも数時間はかかります。

表1 少量の飲酒が反応時間等に及ぼす影響


Q2  飲酒運転による事故を起こしても保険でなんとかなるのでは?

A2  飲酒運転による事故には保険が支払われないことがあります。

 飲酒運転による事故を起こした場合保険金が支払われないことがあります。飲酒運転は安全運転をする意志がなかったとみなされるからです。飲酒運転で単独事故を起こして、自分や同乗者が怪我をした場合の医療費は保険からは支払われません。また、事故の相手がいる場合は、通常の場合より自分の責任がより重く判断されます。飲酒をして運転する場合、自動車保険に加入していても、無保険車を運転しているのに近いと言えます。


Q3  飲酒運転による事故を起こしてもたいした処分は課せられないのでは?

A3  飲酒運転よる交通事故は最高5年の懲役が課されることがあります。

 飲酒運転は非常に危険な行為であることから、重い罰則が定められています。飲酒運転で事故を起こすと現行犯逮捕されることがあります。飲酒に関係する罰則は以下のように定められています。

 過去に運転免許停止等の前歴がない人の場合、6点で免許の停止、15点で免許の取消となります。なお、交通事故を起こして飲酒運転が発覚するのを恐れるなどして当て逃げもしくはひき逃げをした場合は、ひき逃げの場合は10点、当て逃げの場合は5点がさらに加算されます。なお、ひき逃げをした運転者に事故現場から逃げた理由を聞いたところ、「飲酒運転が発覚することが怖かったから」と回答した運転者が約3割を占めていたという調査結果があります。


おわりに


 飲酒運転がどんなに危険な行為であるか、また、飲酒運転が重大な結果につながるかをご理解頂けたでしょうか。お酒を飲んだあとに軽い気持ちで運転したことが悲惨な結果を招いているのです。検問で警察官に捕まるか捕まらないかだけの問題ではありません。「飲んだら乗るな」、「乗るなら飲むな」とは使い古された標語ですが、この標語どおりに飲酒運転は絶対にやめましょう。



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