イタルダ・インフォメーション
1997 AUTUMN No.14


交通事故と運転者と自動車とは、
どんな関係にあるのか?


〜シリーズ第2回〜


目  次

はじめに
交通事故における運転者と車両との相関
分析の評価指標
自動車の種別と事故の相関に関する分析結果
乗用車のクラス別と事故の相関に関する分析結果
通称名別と事故の相関に関する分析結果
まとめ


1 はじめに



 「交通事故における運転者と車両の相関」については、イタルダインフォメーション(10)において、車種別と乗用車のクラス別(排気量の大きさ、あるいは使用状況などによる分類)に事故の評価指標を分析し、事故要因の分析を行いました。その結果、車種別あるいは乗用車のクラス別にみると、事故にそれぞれ特徴があることがわかり、交通事故の発生は、車の使われ方や運転者の特性に影響されることが多いことを紹介しました。
 本号はシリーズ第2回として、事故要因と事故の評価指標との関係をより定量的に分析するため、事故要因と評価指標との相関分析を行いました。
 さらに、クラス別の相関分析結果を補完するため、乗用車の通称名別分析にも踏み込んでみました。通称名別分析は、乗用車のクラス別分析と異なり、車相互の比較が目的ではなく、評価指標と事故要因との相関分析が主たる目的としております。

※通称名とは、自動車メーカーが一般ユーザー向けにつけた車の名前(例:カローラ、サニー等)


2  交通事故における運転者と車両との相関


 平成7年の交通事故統計データと自動車登録データとの統合データベースを活用し、以下の分析を行いました。

  1. 車両の種別と事故との相関
  2. 乗用車のクラス別と事故との相関
  3. 乗用車の(セダンA)の通称名別と事故との相関


(1)分析の評価指標


 平成7年の自動車乗車中の死者数の約65%を占める乗用車について、「車両の乗員が死亡または負傷するケース」に注目した分析を行いました。評価は、「乗員死傷事故の発生頻度」と「乗員の死傷被害程度」の2つの観点から行い、表-1のような評価指標を用いました。
 また、今回はベルト非着用乗員の分析を加え、ベルト着用有無別の影響について比較できるようにしました。

表-1 評価指標一覧

評 価 指 標自動車の
種別
乗用車の
クラス別
セダンAの
通称名別
乗員死傷事故の発生頻度に関する評価指標車両1万台当たりの乗員死亡事故台数 注記1
車両1万台当たりの乗員死傷事故台数
1億走行キロ当たりの乗員死亡事故台数×注記2×注記2
1億走行キロ当たりの乗員死傷事故台数××
乗員死傷の被害程度に関する評価指標乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数
人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数

<評価指標の定義>

例1 :車両Aの全乗員での車両1万台当たりの乗員死亡事故台数=
 (車両Aの乗員死亡事故台数/車両Aの車両台数)×10,000

例2 :車両Aのベルト着用乗員での車両1万台当たりの乗員死亡事故台数=
 {(車両Aのベルト着用乗員死亡事故台数)/(車両Aの車両台数×ベルト着用率)}×10,000
例3 :車両Aのベルト非着用乗員での車両1万台当たりの乗員死亡事故台数=
 {(車両Aのベルト非着用乗員死亡事故台数)/(車両Aの車両台数×(1−ベルト着用率))}×10,000
注記1:死亡事故台数とは、その車両の乗員が死亡した場合1台と数える。
ただし、複数の乗員が死亡しても1台とする。
また、ベルト着用乗員死亡事故台数とは、その車両のベルト着用乗員が死亡した場合1台と数え、ベルト非着用 乗員が死亡した場合は数えない。
ただし、複数のベルト着用乗員が死亡しても1台とする。
注記2:走行キロは、調査車両の分類が乗用車、貨物車、軽乗用車、軽貨物車等に限定されており、
乗用車のクラス別、通称名別のデータがないため分析できなかった。
(走行キロは運輸省統計資料「自動車輸送統計月報」より集計。)

(2) 自動車の種別と事故の相関に関する分析


 @ 評価指標による分析


  @−1 自動車1万台当たりの乗員死亡事故台数


  全ての車種でベルト非着用乗員の死亡事故台数が多く、全乗員の死亡事故台数を押し上げています。この傾向は車両単独事故で顕著です。第1回でも紹介しましたが、ベルト着用乗員では、車種間の差が小さくなっています。しかし、ベルト非着用乗員では車種間の差もおおきくなっています(図-1)。
このように、シートベルト非着用乗員との比較を行うとシートベルトの着用効果がわかります。

図−1 車1万台当たりの乗員死亡事故台数  





  @−2 乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数

  @−1と同様に全ての車種でベルト非着用乗員の死亡事故台数が多く、全乗員の死亡事故台数を押し上げています。また、車種間の差も大きくなっています。ベルト着用乗員の死亡事故台数はベルト非着用乗員の死亡事故台数の約1/10前後と少なく、かつ車種間の差も小さくなっています(図−2)。

図-2 乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数  

 A 事故要因による分析

 事故要因分析項目に運転者の飲酒の有無、第1当事者の事故要因あり(操作上の誤り等人的要因、整備不良等車両的要因、交通障害等環境的要因)の比率を追加しました。

  A−1 死亡事故の特徴

  死亡事故では、全乗員で普通乗用車が34.0%に飲酒ありと最も多く、普通貨物車が最も少なくなっています(図−3)。図では紹介しませんが死傷事故では死亡事故に比べ飲酒ありの割合が大幅に少なく、飲酒が死亡事故に強くかかわっていることがわかります。

  A−2 死傷事故の特徴

    年齢層別にみると、24歳以下の運転者の割合が、全ての車種で前回の分析に比べ、0.3〜1.8ポイント減少しています(図−4)。
図-3 全乗員での運転者の飲酒の有無別
死亡事故台数の比率
図-4 全乗員での運転者の年齢層別
死傷事故台数の比率

  A−3 第1当事者の自動車の事故要因の分析

  車種、事故形態、シートベルト着用の有無にかかわらず、調査不能の車両以外では全ての第1当事者に人的要因があり、環境的要因がある車両は約1割弱、車両的要因がある車両は約1%以下(普通貨物車は1.4%)であることがわかります(図-5)。


(3) 乗用車のクラス別と事故の相関に関する分析結果

 自動車全体の乗員死亡事故台数の約6割、乗員死傷事故台数の約75%を占める乗用車を車体形状、排気量、使用形態等を考慮して次の8つのクラスに分類して比較分析を行いました(表-2)。

表-2 乗用車のクラス区分

クラス区分
ファミリー軽乗用車
セダンA(主な型式が排気量660cc超〜1500cc以下のもの)
セダンB(主な型式が排気量1500cc超〜2000cc以下のもの)
セダンC(主な型式が排気量2000cc超のもの)
スポーツ&スペシャリティ
ワゴン
1BOX
R  V

 @ 評価指標による分析

 シリーズ第1回で紹介した平成6年の結果とほぼ同様の傾向を示しています。

  @−1 乗用車1万台当たりの乗員死亡事故台数

  スポーツ&スペシャリティ、セダンCの死亡事故台数は乗用車全体より多く、ファミリー軽、セダンAは乗用車全体と同じ様な値を示し、他のクラスは乗用車全体よりも少なくなっています。
 ベルト着用乗員の死亡事故台数は、全てのクラスでベルト非着用乗員の死亡事故台数に比べて1/10以下になっています(図−6)。


図-6 乗用車1万台当たりの乗員死亡事故台数

 @−2 乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数

  車両単独事故と車両相互事故を比較してみると、乗用車全体の全乗員では、車両単独事故の死亡事故台数が、約17倍にもなっています。
 また、車両単独事故についてみると、ベルト非着用乗員と全乗員でセダンCの死亡事故台数がスポーツ&スペシャリティの死亡事故台数より多くなっています(図−7)



図-7 乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数

 A 事故要因による分析

 平成5〜7年のデータを用いて分析しましたが、シリーズ第1回と比べて特徴的な点を示します。

 A-1 死亡事故の特徴


 飲酒については、全乗員でセダンCが30.8%に飲酒ありと最も多く、ワゴンがこれに続き、ファミリー軽が最も少なくなっています(図-8)。
 昼夜別における夜の比率ではシリーズ第1回に比べ、ベルト着用乗員の1BOXで10.7ポイント減少しましたが、RVの夜の比率が7.8ポイント増加しました(図-9)。
 シリーズ第1回に比べ車両単独事故のベルト着用乗員の危険認知速度累積構成率50%値でRVが約15km/h高くなっています(図-10)。

 図-8 運転者の飲酒の有無別死亡
 事故台数の比率(全乗員)
 図-9 昼夜別死亡事故台数の比率
 (シートベルト着用乗員)


図-10 車両単独事故の危険認知速度累積構成率(シートベルト着用乗員)


(4) 通称名別と事故の相関に関する分析結果

 シリーズ第1回では、車種別と乗用車のクラス別に事故の評価指標と事故要因の分析を行った結果、車種別あるいは乗用車のクラス別の事故の特徴がわかりました。交通事故の発生は、車の使われ方や運転者の特性に影響されることが多いと考えられることから、今回は、乗用車のクラス別及び通称名別に事故要因と事故の評価指標との相関関係の分析を行いました。
 通称名別分析では、クラス別の構成率が最も高いセダンA(図-11)を対象とし、原則的に1995年末現在販売されていた車とその一代前の車を中心に選定しました。

図-11 クラス別車両台数(H5〜H7)

 @ 乗用車1万台当たりの乗員死亡事故台数


 クラス別分析では、ベルト着用率が高くなると、乗用車1万台当たりの乗員死亡事故台数が少なくなっています(図-12)。
 セダンAの通称名別分析では、死傷事故における事故類型の中で車両単独事故の比率が高くなると、乗用車1万台当たりの乗員死亡事故台数は多くなっています(図-13)。

図-12 乗用車1万台当たりの乗員死亡事故台数と
ベルト着用率との相関(クラス別分析)
図-13 乗用車1万台当たりの乗員死亡事故台数と
単独事故の比率との相関(通称名別分析)

※決定係数とは、相関の強さを判断するために用いられる。この係数が1近づくほど、グラフの横軸(事故要因)の値を
用いて、たて軸(評価指標)の値を正確に説明することができる。

 A 乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数


 クラス別分析では、乗用車1万台当たりの事故関与台数が多くなると、乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数は多くなっています(図-14)。

 セダンAの通称名別分析でも、乗用車1万台当たりの事故関与台数が多くなると、乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数は多くなっています(図-15)。

図-14 乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数と
事故関与台数との相関(クラス別分析)
図-15 乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数と
事故関与台数との相関(通称名別分析)

 また、事故は運転者の年齢層との関係を議論されることが多いが、以下にセダンAの通称名別分析の中から乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数と関連が認められた例を示します。死傷事故における65歳以上の運転者の比率が高くなると、乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数は少なくなっています(図-16)。死傷事故における24歳以下の運転者の比率が高くなると乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数は多くなっています(図-17)。

図-16 乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数と
65歳以上の運転者の比率との相関(通称名別分析)
図-17 乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数と
24歳以下の運転者の比率との相関(通称名別分析)

 B 乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数

 クラス別分析では、死傷事故における単独事故の比率が高くなると、乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数が多くなっています(図-18)。
 セダンAの通称名別分析では、死傷事故における夜間の事故の比率が高くなると、車両単独事故における乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数が多くなっています(図−19)。


図-18 乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員
死亡事故台数と車両単独事故との相関
(通称名別分析)
図-19 車両単独事故における乗員死傷事故
車両1,000台当たりの乗員死亡事故
台数と夜との相関 (通称名別分析)

C人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数


 クラス別分析では、ベルト着用率が高くなると、人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数は多くなるっています(図-20)。

 セダンAの通称名別分析では、車両単独事故で人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数との相関を持つ事故要因を見い出すことができませんでした。ただし、死傷事故における24歳以下の運転者の比率と死傷事故における車両単独事故の比率とを組み合わせることにより、人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数を関連づけられることがわかりました。24歳以下の運転者の比率が同じような車の場合に、車両単独事故の比率が高くなると、人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数は多くなっています。車両単独事故の比率が同じような車の場合、24歳以下の運転者の比率が高くなると、人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数は少なくなっています。

図-20 人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの 
運転者の死者数とベルト着用率との相関(クラス別分析)


3  まとめ



(1)車種別分析では、自動車1万台当たりの乗員死亡事故台数でみると、シリーズ第1回とほぼ同様の傾向を示しています。また、全ての車種で、ベルト非着用乗員の死亡事故台数が多く、全乗員の死亡事故台数を押し上げています。

(2)乗用車のクラス別分析では、乗用車1万台当たりの乗員死亡事故台数でみると、車両単独事故のスポーツ&スペシャリティが突出しており、セダンCも多くなっています。

(3)通称名別分析では、事故の発生台数は、車の使われ方や運転者の特性に影響を受けていることが明らかになり、さらに、第1当事者の比率、65歳以上の運転者の比率、通行目的がドライブである比率等の事故要因も評価指標と関連を持っていることが分かりました。


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