あなたの運転免許をみつめて下さい
免許保有者数の推移
運転経験と事故・違反
法令違反と事故
おわりに
100年前には誰一人持っていなかった運転免許も、現在では全国民の半数以上が保有しています。今日、免許証には身分証明証としての機能もあるようですが、言うまでもなく当人の「運転する資格」を認めた証が運転免許証です。ここでの「資格」には技能や知識だけでなく安全運転に対する意識の意味も含まれるのではないでしょうか。
しかしながら、交通事故死者数が1万人前後で推移している現状を考えると、はたして7,000万人弱の免許保有者の全てが広い意味での『安全運転の資格』を持っているといえるのでしょうか。そこで本号においてはこの「運転免許」、「事故」及び「違反」(道路交通法違反)に着目して、交通事故における運転者の特徴を分析してみました。
なお、分析データとしては、主に平成7年の交通事故データと、平成6年の事故−運転者統合データを利用しています。
まず、免許保有者の推移を概観してみましょう。免許保有者数は年々着実に増加してきました(図−1)。平成7年については、交通事故死者数が最も多かった昭和45年に比較して2.6倍、その後最も少なくなった昭和54年と比較すると1.7倍と増加しています。
特に性別年齢層別に示した10年前との比較(図−2)から類推して、今後もしばらくは保有者数が増加し、その中でも特に女性と高齢者が増加するものと思われます。
一方、交通事故による死者数は昭和54年以降漸増傾向にあるため、運転免許保有者当たりの死者数については減少傾向にあります。

●図−1 事故及び免許指標の推移
(昭和54年を100とした指数)

●図−2 免許保有者の10年間の変化
若葉マークを付けている車は、「危ない、怖い」と言う人がいます。しかし、それは本当なのでしょうか。そこで、運転免許を取得してからの経過年数(以下「免許経過年数」という。)に着目してみました。
図−3事故の程度と当事者の順位で分類した場合の免許経過年数の内訳です。免許経過年数の少ない運転者は、事故の主原因である第一当事者※になりやすい傾向がわかります。この傾向は全人身事故(a)と死亡事故(b)の
両方に共通していますが、死亡事故においてこの傾向がより顕著にあらわれています。
※第一当事者(一当):事故当事者のうち原則として過失の重い当事者

●図−3 当事者順位別免許経過年数の構成率(平成7年)
では、免許経過年数により事故の形態に特徴があるのでしょうか。図−4に事故類型別の構成率を示します。
(a)は平成7年の人身事故を人対車両、車両相互、車両単独の3種類の事故類型に分類したものです。免許経過年数が1年未満の運転者(以下「初心運転者」という。)
と10年以上の人を比べると、初心運転者では車両単独事故の割合が多く、車両相互事故の割合が少なくなっています。
(b)は人対車両事故を細分類しています。他の運転者と比べると初心運転者では歩行者通行中の割合が多く、歩行者横断中の割合が少ないことがわかります。
また、(c)は車両相互事故を細分類しています。他の運転者に比べると初心運転者では正面衝突と追突の割合がより多く、出合頭の割合が少ないことがわかります。

●図−4 事故類型別免許経過年数の構成率
(平成7年の全人身事故の1当)
次に事故の原因となった違反の特徴を見てみましょう。免許経過年数別の主要な違反の構成率を図−5に示しますが、脇見運転、運転操作不適、信号無視は免許経過年数
が増えることにより減少し、安全不確認、交差点安全進行義務違反は逆に増加しています。前者は運転技術や無謀さに関連し、後者は思いこみや見込み運転に関連するのではないでしょうか。
また、動静不注視、漫然運転および一時不停止は、初心者と免許経過年数の長い人との差異は少ないものの、一時不停止は免許経過年数1年未満と10年以上で多くなっています。

●図−5 免許経過年数別法令違反の構成率
(平成7年の全人身事故の1当)
このように免許経過年数と事故とには関連性がみられ、特に初心運転者には事故の第一当事者となりやすい傾向があります。しかし、経年的に何か変化はないのでしょうか。
図−6に初心運転者と全運転者の運転免許保有者1万人当たりの死亡事故件数の推移を示します。近年では、わずかながらその差が縮まる傾向にあり、その要因として平成2年から実施された
初心運転者期間制度等の初心運転者対策の効果があるのではないでしょうか。

●図−6 運転免許保有者1万人当たりの死亡事故件数の推移
(平成7年、自動車等運転中の1等)
補足になりますが、免許経過年数は、「年齢」という要因と高い関連性がみられます(表−1)。従って、初心運転者教育は若年者対策との関係を、逆に高齢運転者については免許経過年数が長い
ことを前提に考えることも必要ではないかと思われます。
| 第1当事者の年齢 | ||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 16〜19 | 20〜29 | 30〜39 | 40〜49 | 50〜59 | 60〜69 | 70歳以上 | 合 計 | |||
| 免許経過年数 | 1年未満 | 62.7 | 28.2 | 3.8 | 3.0 | 1.7 | 0.5 | 0.1 | 100.0 | |
| 1〜2年未満 | 28.5 | 59.0 | 5.1 | 4.1 | 2.4 | 0.7 | 0.1 | 100.0 | ||
| 2〜3年未満 | 2.8 | 82.6 | 6.1 | 4.7 | 2.7 | 0.9 | 0.2 | 100.0 | ||
| 3〜4年未満 | 1.0 | 82.4 | 7.2 | 5.5 | 2.9 | 0.8 | 0.2 | 100.0 | ||
| 4〜5年未満 | - | 79.9 | 9.0 | 6.5 | 3.4 | 1.1 | 0.2 | 100.0 | ||
| 10年未満 | - | 65.2 | 15.9 | 10.8 | 5.5 | 2.1 | 0.5 | 100.0 | ||
| 10年以上 | - | 2.9 | 23.1 | 29.7 | 24.9 | 14.2 | 5.2 | 100.0 | ||
平成7年中の全国の交通違反取締件数は、8,362,972件となっています。これらの違反は当人であっても軽く受け止められてしまうおそれがあります。
しかし、多発している事故と無関係なのでしょうか?そこで、違反と事故との関係についてみてみました。
事故を起こした人にはどのような違反前歴を持つ人が多いのでしょうか?
図−7は平成7年中の事故について、第一当事者が事故前3年間に犯した違反回数の内訳を示したものです。これによると、全人身事故においては
半数を超える56.6%の人が事故以前に違反を犯していることがわかります。
この傾向は死亡事故でも類似しており、違反前歴のある人の割合が更に多くなっています。
図−7を別の視点から考察するために、違反前歴回数別にそれぞれの人身事故に占める死亡事故の割合を計算しました。表−2がその結果で、
これらは死亡事故率と呼ばれる指標です。一般に、死亡事故率が高いほど死亡事故を起こす可能性が高くなることを意味します。
表−2に示すとおり、違反前歴の回数が多くなるほど死亡事故率が高くなっており、違反を繰り返す人ほど、死亡事故を起こす危険性が高いことになります。
| 違反前歴回数 | 死亡事故率 |
| 0回 | 1.18 |
| 1回 | 1.22 |
| 2回 | 1.27 |
| 3回 | 1.28 |
| 4回 | 1.41 |
| 5回以上 | 1.53 |
| 平均 | 1.34 |

次に事故前歴の面からみてみましょう。図−8は平成7年中の事故について、第一当事者が事故前3年間に起こした事故の回数別の内訳を示したものです。
これによると、全人身事故においては、半数を超える58.6%の人は事故前歴がある、すなわち事故を繰り返していることがわかります。
これに対して、死亡事故の傾向は大きく異なり、事故前歴のない人は半数を超える64.8%を占めています。
違反前歴と同様に事故前歴回数別に死亡事故率を計算した結果を表−3に示します。事故前歴の無い場合は2.10で平均値より5割以上も高くなっています。
すなわち、初めての事故が死亡事故となる可能性が高いといえます。
| 事故前歴回数 | 死亡事故率 |
| 0回 | 2.10 |
| 1回 | 0.53 |
| 2回以上 | 0.77 |
| 平均 | 1.34 |

次に全運転免許保有者のデータから、どのくらい事故と違反の前歴があるのかについてみてみました。
図−9は、平成6年末までの3年間の事故前歴回数別、違反前歴回数別の免許保有者構成率を示したものです。
図−7,図−8で違反前歴と事故前歴を別々にとらえていたのに対し、ここでは両者の関係を分析しています。
この図から、事故前歴が0回である人のうちの約7割が違反前歴のない人であること、事故前歴が複数回の場合には違反
前歴がないひとは4割弱にとどまっていることがわかります。

さらに、他の要因から違反と事故の関係をみてみましょう。図−10、図−11は、平成6年中のデータを対象に、違反
前歴回数及び違反前歴内容と事故類型の関係を分析したものです。
違反前歴回数別(図−10)で全人身事故の合計値(最下段)を基準とすると、違反回数の多い人の構成率が高い事故類型は、
追突と車両単独であり、逆に違反回数の少ない人の構成率が高いのは、出合頭と人対車両となっています。

また、違反前歴内容別(図−11)では、「放置駐車」違反を犯した人の割合が正面衝突や車両単独では少なくなっています。
また、「指定速度違反」(15〜30キロ未満)を犯した人の割合が正面衝突や追突でやや多くなっているようです。

いくつかの質問から面白おかしく性格を分析(?)する心理テストが流行したことがありましたが、ここで示した結果は、
心理テストのごとくに違反・事故歴から特定の個人の分析を行うものではありません。
しかしながら、ここでのデータが、ともすれば人の命にかかわる事故・違反の危険性について、より身近な事、自分の事として
認識し、安全運転へのモティベーションを持っていただくための一助となれば幸いです。
さて、ご自分の運転免許証をみつめて下さい。「違反や事故なんてとんでもない。」というような写真。その写真の人物と、
免許の持つ意味についてここでのデータを元にあらためて話し合われてはいかがでしょうか。