イタルダ・インフォメーション
1996 AUTUMN No.10


交通事故と運転者と自動車とは、
どんな関係にあるのか?


目  次

 自動車事故の概要
 交通事故における運転者と車両との相関
   分析の評価指標
   自動車の種別と事故の相関に関する分析結果
   乗用車のクラス別と事故の相関に関する分析結果
   乗用車のクラス別の乗員死亡事故の特徴
 まとめ


自動車事故の概要


1.自動車乗車中の死傷者

 平成6年の自動車乗車中の死者数は4,482人(全交通事故死者数の42.1%)、死傷者数は510,257人(全交通事故死傷者数の57.2%)で、昭和54年*に比べ死者数で1,484人、死傷者数で210,183人増加している(表1)。

●表1 自動車乗車中の死者数、死傷者数の比較

※昭和54年:近年で交通事故死者数が最も少なかった年
死 者 数 死 傷 者 数
自動車乗車中  全  体  自動車乗車中  全  体 
昭和54年 2,998人 8,466人 300,074人 604,748人
平成6年 4,482人 10,649人 510,257人 892,369人
増  減 +1,482人 +2,183人 +210,183人 +287,621人

2.車種別死者数及び死傷者数の構成率

 平成6年の自動車乗車中の車種別死者数及び死傷者数の構成率を図1に示す。死者数では普通乗用車の比率が59.2%で一番高く、ついで軽貨物車が19.2%、普通貨物車が10.3%、軽乗用車が7.1%の順である。また、死傷者数でも普通乗用車の比率が66.9%で一番高く、ついで軽貨物車が13.7%、軽乗用車が9.3%、普通貨物車が8.4%の順である。
 ここでは死者数の構成率が6割以上を占める乗用車について更に詳細に分析することとする。

●図1 車種別死者数及び死傷者数の構成率


2 交通事故における運転者と車両との相関


 平成4〜6年の交通事故統計データと自動車登録データを用いて「交通事故における運転者と車両との相関」について、次の分析を行った。

  1. 車両の種別と事故との相関
  2. 乗用車のクラス別と事故との相関

1.分析の評価指標

 車両が関与した事故には、「車両の乗員が死亡または負傷するケース」と「衝突した相手を死亡または負傷されるケース」とがあるが、今回は前者に注目した分析を行った。
 評価は、「乗員死傷事故の発生頻度」と「乗員死傷の被害程度」の2つの観点から行い、さらに細かくは次表のような評価指標を用いた(表2)。

●表2 評価指標一覧

評 価 指 標 自動車の
種別
乗用車の
クラス別
乗員死傷事故の発生頻度に関する評価指標 車両1万台当たりの乗員死亡事故台数 *1
車両1万台当たりの乗員死傷事故台数
1億走行キロ当たりの乗員死亡事故台数   × *2
1億走行キロ当たりの乗員死傷事故台数 ×
乗員死傷の被害程度に関する評価指標 乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数
人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数

<評価指標の定義>

例1:全乗員での車両1万台当たりの乗員死亡事故台数
車両Aの全乗員での車両1万台当たりの乗員死亡事故台数=
(車両Aの乗員死亡事故台数/車両Aの車両台数)×10,000

例2:ベルト着用乗員での車両1万台当たりの乗員死亡事故台数
車両Aのベルト着用乗員での車両1万台当たりの乗員死亡事故台数=
{(車両Aのベルト着用乗員死亡事故台数)/(車両Aの車両台数×ベルト着用率)}×10,000

  *1:
死亡事故台数とは、その車両の乗員が死亡した場合1台と数える。ただし、複数の乗員が死亡しても1台とする。また、ベルト着用乗員死亡事故台数とは、その車両のベルト着用乗員が死亡した場合1台と数え、ベルト非着用乗員が死亡した場合は数えない。ただし、複数のベルト着用乗員が死亡しても1台とする。
  *2:
走行キロは、調査車両の分類が乗用車、貨物車、軽乗用車、軽貨物車等に限定されており、二輪車の種別、乗用車のクラス別のデータがないため分析できなかった。
(走行キロは運輸省統計資料「自動車輸送統計月報」より集計。)

2.自動車の種別と事故の相関に関する分析結果

 ベルト着用乗員でみると、全乗員の場合と比べて、死亡事故台数率がかなり低くなるとともに、各車種間の差が小さくなっている。この傾向は、死亡事故(または死者数)関連の評価指標において認められ、シートベルトの着用効果を示している。

(1)自動車1万台当たりの乗員死亡事故台数

 全乗員での自動車1万台当たりの乗員死亡事故台数を車種別に比較すると、普通貨物車と普通乗用車が自動車全体より高く、軽貨物車、軽乗用車、小型乗用車は自動車全体と同じ様な値を示し、小型貨物車は自動車全体より低くなっている(図2)。



●図2 自動車1万台当たりの乗員死亡事故台数の比較(平成6年)

(2)自動車1万台当たりの乗員死傷事故台数

 全乗員での自動車1万台当たりの乗員死傷事故台数を車種別に比較すると、乗用車系が自動車全体より高く、貨物車系が自動車全体より低くなっている(図3)。



●図3 自動車1万台当たりの乗員死傷事故台数の比較(平成6年)

(3)1億走行キロ当たりの乗員死亡事故台数

 1億走行キロ当たりの乗員死亡事故台数の3年間の推移をみると、小型・普通乗用車及び軽乗用車では減少傾向であるが、貨物車では横バイ状態である(図4)。
 また、車種別にみると、軽乗用車、軽貨物車が他の車種に比べ高くなっている。



●図4 1億走行キロ当たりの乗員死亡事故台数の比較

(4)1億走行キロ当たりの乗員死傷事故台数

 1億走行キロ当たりの乗員死傷事故台数の3年間の推移をみると、軽貨物車では減少傾向にあるが、他の車種では増加傾向にある(図5)。
 また、車種別にみると、軽乗用車、小型・普通乗用車、軽貨物車が小型貨物車、普通貨物車に比べ高くなっている。



●図5 1億走行キロ当たりの乗員死傷事故台数の比較

(5)乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数

 乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数は、普通乗用車、普通貨物車、軽貨物車が自動車全体より高く、小型貨物車は自動車全体と同じ様な値を示し、小型乗用車、軽乗用車は自動車全体より低くなっている(図6)。



●図6 乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数の比較(平成6年)

(6)人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数

 全乗員での人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数は、軽貨物車、普通貨物車が自動車全体より高く、軽乗用車、普通乗用車は自動車全体と同じ様な値を示し、小型乗用車、小型貨物車は自動車全体より低くなっている(図7)。



●図7 人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数の比較(平成6年)

3.乗用車のクラス別と事故の相関に関する分析結果

 自動車全体の乗員死亡事故台数の約66%、乗員死傷事故台数の約75%を占める乗用車についてさらに詳細に分析するために、車体形状、排気量、使用形態等を考慮して乗用車を8つのクラスに分類して比較分析を行った(表3)。

●表3 乗用車のクラス区分

クラス区分
ファミリー軽乗用車(主な型式が排気量600cc以下のもの)
セダンA(主な型式が排気量600cc超〜1500cc以下のもの)
セダンB(主な型式が排気量1500cc超〜2000cc以下のもの)
セダンC(主な型式が排気量2000cc超のもの)
スポーツ&スペシャリティ
ワゴン
1BOX
R  V

(1)乗用車1万台当たりの乗員死亡事故台数

 全乗員での乗用車1万台当たりの乗員死亡事故台数をクラス別に比較すると、スポーツ&スペシャリティ、セダンCは乗用車全体より高く、ファミリー軽乗用車、セダンAは乗用車全体と同じ様な値を示し、他のクラスは乗用車全体より低くなっている(図8)。



●図8 乗用車1万台当たりの乗員死亡事故台数の比較(平成6年)

(2)乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数

 全乗員での乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数を車種別に比較すると、スポーツ&スペシャリティ、セダンC、ファミリー軽乗用車は乗用車全体より高く、セダンA、セダンBは乗用車全体と同じ様な値を示し、他のクラスは乗用車全体より低くなっており図8の傾向とは異なる評価結果となっている(図9)。



●図9 乗用車1万台当たりの乗員死傷事故台数の比較(平成6年)

(3)乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数

 全乗員の乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数をクラス別に比較すると、スポーツ&スペシャリティ、1BOXは乗用車全体より高く、セダンA、セダンCは乗用車全体と同じ様な値を示し、他のクラスは乗用車全体より低くなっている(図10)。



●図10 乗員死傷事故車両1,000台当たりの乗員死亡事故台数の比較(平成6年)

(4)人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数

 全乗員での人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数は、スポーツ&スペシャリティは乗用車全体より高く、ファミリー軽乗用車、セダンA、セダンC、1BOXは乗用車全体と同じ様な値を示し、セダンB、ワゴン、RVは乗用車全体より低くなっている(図11)。



●図11 人身事故関与車両の運転者1,000人当たりの運転者の死者数の比較(平成6年)

4.乗用車のクラス別の乗員死亡事故の特徴

 交通事故における事故要因の90%以上は人的要因であるといわれている。この人的要因をふまえて、乗用車のクラス別の主な特徴を以下に示す(紙面の都合により、分析の全ては紹介していない)。

(1)ファミリー軽乗用車

 昼間事故の比率が49.2%で他のクラスに比べ高い。運転者は女性比率が47.4%で高い。事故類型でみると、車両相互事故の比率が68.7%で、車両相互事故の中では正面衝突事故、出合頭事故が多くなっている。車両単独事故の比率は28.8%で、危険認知速度の平均値は約60km/hで乗用車で一番低い。

(2)セダンA

 夜間事故の比率は61.4%である。運転者は女性比率が22.7%でファミリー軽乗用車についで高く、24歳以下の若者の比率が40.7%で高くなっている。事故類型でみると、車両相互事故の比率が52.7%で、この中では正面衝突、出合頭事故が多くなっている。車両単独事故の比率は46.8%で、危険認知速度の平均値は約70km/hである。

(3)セダンB

 夜間事故の比率が59.3%である。運転者は30歳〜49歳の年齢層の比率が33.9%、50歳〜64歳の比率が23.3%で中年・壮年の比率が高い。事故類型でみると、車両相互事故の比率が56.8%で、この中では正面衝突、出合頭事故の比率が高い。車両単独事故の比率は42.7%で、危険認知速度の平均値は約75km/hである。

(4)セダンC

 夜間事故の比率が71.5%で高く、特に22時〜06時の深夜から早朝にかけての事故が全体の61.8%を占めている。運転者は24歳以下の若者の比率が40.2%、30歳〜49歳の比率が27.7%で高い。事故類型でみると、車両単独事故の比率が55.7%で高く、危険認知速度の平均値は約80km/hでスポーツ&スペシャリティと同様に高くなっている。最高速度違反の比率が43.9%で高い。

(5)スポーツ&スペシャリティ

 他のクラスに比べ夜間事故の比率が74.9%で高く、特に22時〜06時の深夜から早朝にかけての事故が全体の62.4%を占めている。運転者は24歳以下の若者の比率が71.7%で高い。事故類型でみると、車両単独事故の比率が65.1%で高く、危険認知速度の平均値は約85km/hで他のクラスに比べ高くなっている。また、衝突部位の分布をみると、車両前面部の比率が40.3%で高いが、他のクラスに比べ左右側面部の比率が33.0%で高くなっている。最高速度違反の比率が62.5%で高くなっている。

(6)ワゴン

 夜間事故の比率が61.6%である。運転者の年齢層は30歳〜49歳の比率が34.8%、24歳以下の比率が31.1%で若者と中年の比率が高い。事故類型でみると、車両相互事故と車両単独事故が半々である。車両単独事故での危険認知速度の平均値は約75km/hである。

(7)1BOX

 夜間事故の比率が56.1%でファミリー軽乗用車についで低くなっている。運転者は30歳〜49歳の年齢層の比率が53.5%で高い。事故類型でみると、車両相互事故の比率が56.7%で、この中では正面衝突、出合頭事故の比率が高い。単独事故の比率は41.9%で、危険認知速度の平均値は約65km/hである。また、衝突部位の分布をみると、車両前面部の比率が48.3%、左前面部が15.4%、右前面部が14.8%で高く、左右側面部の比率が17.5%で低くなっている。

(8)RV

 他のクラスに比べ夜間事故の比率が71.3%で高く、特に22時〜06時の深夜から早朝にかけての事故が全体の59.3%を占めている。運転者は24歳以下の若者の比率が48.1%、25歳〜29歳の比率が20.4%で29歳以下の比率が68.5%で高い。事故類型でみると、車両単独事故の比率が65.7%で高く、危険認知速度の平均値は約70km/hである。



●図12 乗用車の乗員死亡事故での事故要因の分析結果の比較(全乗員)


まとめ


 自動車の車種別・乗用車のクラス別に事故戸の相関を分析したが、評価指標により各車種あるいは各クラスの順序が変わってくる。  自動車におけるベルト着用乗員の分析結果は、全乗員の分析結果に比べ全ての評価指標で評価値が低くなっている。さらに、ベルト着用乗員について各車種間あるいは各クラス間の差が小さくなる傾向にある。  乗用車のクラス別分析において、スポーツ&スペシャリティにおける死亡事故では夜間事故、若者の運転者、車両単独事故の構成率が高い。ファミリー軽乗用車における死亡事故では昼間事故、女性運転者、車両相互事故の構成率が高い。他のクラスの死亡事故では、スポーツ&スペシャリティとファミリー軽乗用車の中間の特徴を示す。これらは、運転者の属性(当該車種をもっぱら使用する年齢層、時間帯等を含む。)が大きく影響していることを示している。


ITARDA Home