目 次平成7年の交通事故による死者数は10,679人と、平成6年に比べ30人増加(対前年比0.3%増)し、8年連続して1万人を超えるという非常に厳しい事態が続いている。更に発生件数は761,789件(同4.4%増)、負傷者数は、922,677人(同4.6%増)と近年増加の一途をたどっている。
年齢層別の死者数の推移(図1)をみると、交通事故の大きな特徴の一つに高齢者(65歳以上の年齢層)と若者(16歳から24歳の年齢層)の死者が多いことがあげられ、平成6年における数は3,098人(構成率29.1%)、若者の死者数は2,490人(構成率23.4%)と突出している。(図1)
特に、若者については、人口10万人当たりの死傷者数が際立って多く(図2)、また死亡事故・死傷事故における第1当事者(以下1当という)としての割合も非常に高いという特徴があることから若者の事故を重点として、事故防止対策を進めていくことは、交通事故および死傷者数を減らすために重要である。
したがって、今回は「若者事故」に焦点を当て、平成6年のデータを用いて分析を行った。
(なお「高齢者事故」についてはイタルダインフォメーションNO.6で特集した。)
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| ●図1 年齢層別死者数の推移 | ●図2 人口10万人当たりの年齢層死傷者数 |
全交通事故死者数の31.5%に関与
全ての死因の中で交通事故が第1位
@ 若者が1当として起こした死亡事故・死傷事故件数の割合は、全死亡事故件数の30.9%、 全死傷事故件数の29.0%と他の年齢層に比べて突出している(図3)。また、若者が1当として関与していた交通事故による死者数・死傷者数も全死者数の31.5%、全死傷者数の30.0%を占めている。若者事故では、若者自身の死者数も多いが、他人を死亡させるケースも非常に多い(図4)。
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| ●図3 各年齢層が1当として起こした 死亡事故・死傷事故件数 |
●図4 各年齢層が1当として関与した 死亡事故における死者数 |
A 若者における交通事故の影響の大きさをみると、病気等の全ての死因に占める自動車事故死の割合が他の年齢層と比較しても高く、特に15歳〜19歳の男子では、50.2%、20歳〜24歳の男子では30.7%と死因の第1位を占めている。また、いかに自動車事故死が若者の死因として、大きな比重を占めているかがわかる(図5)。

●図5 全死亡原因に占める自動車事故死の割合(年齢層別)
状態別
自動車運転中が70.1%
若者が関与した死亡事故件数について、その70.1%は自動運転中であり、次は自動二輪車
(51cc以上)運転中の19.5%、さらに原動付自転車(50cc以下)運転中の7.3%と続いている。
一方、自転車乗用中・歩行中の事故の割合は他と比べて少ない(図6)。
●図6 各年齢層が1当として関与した死亡事故の状態別構成率
時間帯別
自動車運転中で深夜・早朝の事故が目立つ
若者が1当として関与した死亡事故件数を時間帯別でみると、状態別でそれぞれ異なった傾向を
示している。自動二輪車では午後から夕方および深夜にやや多く、原動機付自転車では主に
夕方から夜にかけてやや多い傾向が見られるものの、どちらも時間帯による差は少ない。これ
に比して特に目立つのが自動車運転中の深夜・早朝での事故の発生であり、全年齢層の分布と
比べても、特徴がはっきりしている(図7)。
●図7 若者が1当として関与した死亡事故の発生時間帯分布
事故類型別
「車両単独事故」の割合が非常に多い
若者の事故類型別の死亡事故件数構成率は、「車両単独事故」が34.2%と、他年齢層の22.1%を大きく 上回っていることが明確な特徴となっている(図8)。「車両相互事故」は、若者・他年齢とも、 最も構成率の高い事故類型ではあるが、若者は、他年齢層に比べやや低い。「人対車両事故」は、若者の 中で、最も少ない事故類型である。

●図8 事故類型別の死亡事故件数構成率
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| ●図9 車両単独のの発生時間帯分布 | ●図10 死亡事故多発時間帯(21時〜6時)での「車両単独事故」の内容(%) |

●図11 道路線形別死亡事故件数構成率
これについても、スピードの出しすぎが大きな要因と考えられる。事故時の危険認知速度(注1)は、若者の「車両単独」の死亡事故が群を抜いて高い(図12)。大部分が一般道路での事故であるにもかかわらず、約50%が時速80Km以上、約20%が時速100Km以上の高い速度で事故を起こしていると考えられる。
●図12 危険認知速度の比較
★注1 危険認知速度とは、運転者が相手方車両、人、駐車車両、又は物件等
を認め、危険を認知した時点の速度。具体的には、ブレーキ、ハンドル
操作等の事故回避行動をとる直前の速度をいう。
A 事故類型の中で構成率の最も高い「車両相互事故」についてその内容をみると、「正面衝突」、「出合い頭」、 「その他(右折事故等)」が多いが、その中でも、若者では、「正面衝突」の割合が他年齢層に比べて多い(図-13)。 また、「正面衝突」の多い時間帯(17時から翌日9時)においては、若者は特に左カーブでの事故が41.2%と、右カーブでの10.7%を大きく上回っている。この傾向は他の年齢層に比べても明確で、若者の特徴といえる。これは、カーブに無理なスピードで入り、曲がりきれずにセンターラインをオーバーし反対車線の車両と衝突してしまう場合が多いためと考えられる。
●図13 「車両単独事故」における事故類型別死亡事故件数構成率(%)
その他
シートベルトの着用率が低い
人身事故関与者(1当+2当)としての若者のシートベルト着用率は、76.7%と、他の年齢層の82.9%
よりも、6.2ポイントも低い。また、全人身事故における致死率(死者数/死傷者数)をみると、シートベルト
有りでは0.09%であるのに対し、シートベルト無しでは1.01%となっており、この点でも死者を増やす要因
になっている。
以上、若者事故について述べてきたが、その特徴を端的に挙げると、「スピードの出し過ぎ(自爆型)」、
「深夜・早朝型」、「自動車と二輪車」、「カーブ事故」等が挙げられる。
若者は、その意識、価値観では、「安全」よりも、「かっこ良さ」・「スリル感」等が優先し、「事故にあう
リスクを低く見積りすぎる」傾向があることなどの研究報告もある。
若者事故の原因としては、これらの「若者特有の意識」に起因する「無謀さ」や、免許経験年数が少ないこと
による「運転技能・安全確認能力の不足」「事故が与える社会的影響の認識とこれに対する責任感の不足」等
が考えられる。
したがって、これ以上の事故・死傷者を増やさないためには、まず、若者の意識改革が必要であり、その
ためには、「事故の怖さ」、「走行限界を超えた時の車両の挙動」、「主な事故の起こり方」等について、知識は
もちろん、実際に身をもって体験できる機会を提供し、積極的に参加してもらえるしくみを整備していくこ
とが大切と思われる。
これに加え、将来、運転をすることになる幼児・児童に対しても、様々な形で「命の尊さ」、「安全の意識」について教育していくことが必要であろう。