イタルダ・インフォメーション
1996 JUNUARY No.7


二輪車事故


目  次

  はじめに
  死亡事故の概要
  排気量別の特徴
  交差点での死亡事故
  直線及びカーブでの死亡事故
  まとめ


はじめに


 わが国の交通事故による全死者数に対する二輪車乗車中の死者数は約19%で、国により車両の保有台数の差による影響もあると思われるが、これを欧米諸国と比較すると最も高い比率であり、また、二輪車及び自転車乗車中の死者数の比率を比較してみても、かなり高く、これがわが国の交通事故の特徴の一つとなっている(図1)。
 わが国の二輪車乗車中の死者の推移について、自動二輪車(排気量50ccを超えるもの)は、平成元年以降減少傾向であったが、平成6年には微増となった。原付自転車(排気量50cc以下のもの)は、ここ10年間は横バイ状態である。
 またこの度、二輪車の運転免許制度の改正を重点とした道路交通法の一部改正が行われ、現在これに基づき具体的な施策の検討がなされていることもあり、今回のイタルダ・インフォメーションでは、二輪車事故をとりあげ、その事故実態を紹介するとともに、排気量毎に、多発する死亡事故類型とその特徴についての主な分析結果を紹介する。



●図1 欧米主要国の状態別死者数の比率(%)(1993)


死亡事故の概況


死亡事故に占める二輪車事故の比率

 死亡事故全体の中で、第1当事者は14.9%、第2当事者は7.6%

 二輪車が、第1当事者(注1)として関与した事故の比率は、死亡事故全体では14.9%であり、それよりも高い比率を示した事故類型は、車両単独事故、出合頭事故及び右直事故(注2)である。また、第2当事者として関与した事故の比率は、死亡事故全体では7.6%であり、それよりも高い比率を示した事故類型は、右直事故と出合頭事故である。特に右直事故は、二輪車が全体の約45%を占めており、他の事故類型に比べて突出している(図2)。

  *1:
 交通事故当事者のうち、原則として過失の重い方を第1当事者(以降1当という)、軽い方を第2当事者(以降2当という)とする。
  *2:
 右直事故とは、右折直進事故のことであり、当事者の一方の車両等が右折、他方の車両等が相対する方向から直進中に起きる事故である。



●図2 全死亡事故での二輪車の比率(%)(平成3〜5年)

昼 夜 別

 昼間の比率が高い

 自動二輪車の死亡事故は、昼間の比率が約50%であり自動車と同じ様な分布である。また、原付自転車については、昼間の比率が約59%であり自転車と同じ様な分布である(図3)。



●図3 昼夜別死亡事故件数(%)(平成5年)

曜 日 別

 自動二輪車はウィークエンド、原付はウィークデーが高い

 自動二輪車の死亡事故は、土曜日及び日曜日の比率が約35%で他の当事者種別に比べ比率が高い傾向にある。また、原付自転車では月曜日〜金曜日までの比率が高く、自転車と同じ様な分布である(図4)。



●図4 曜日別死亡事故件数(%)(平成5年)

運転者年齢層

 自動二輪車は若者、原付は若者と高齢者が多い

 自動二輪車の死亡事故では16〜24歳の運転者の比率が約65%であり、他の当事者に比べ若者の運転者の事故が多い。また、原付自転車では65歳以上の高齢者と16〜24歳の若者運転者の比率が高いことが特徴である(図5)。



●図5 当事者種別、運転者の年齢層別死亡事故件数の比率(%)(平成5年)

発生場所

 自動二輪車はカーブ、原付は交差点での事故が多い

 自動二輪車の死亡事故は、交差点での比率が約39%で1番高く、自動車と同じ様な分布である。しかし、カーブでの比率は約24%である。また、原付自転車では交差点での比率が約50%であり、自転車と同じ様な分布である(図6)。



●図6 当事者種別、道路線形別死亡事故件数の比率(%)(平成5年)


排気量別の特徴


 二輪車の事故実態をさらに詳細に把握するために、二輪車を排気量別に4つ(排気量50cc以下(原付自転車)、排気量51〜125cc、排気量126〜400cc、排気量401cc以上)に分類して、平成3年から平成5年の3年間の交通事故統計データを用いて分析を行った。

車両1万台当たり

 126cc以上が多い

 車両1万台当たりの死亡事故件数(1当及び2当)は、排気量126〜400ccが3.5件で1番多く、ついで401cc以上が3.3件、51〜125ccが1.5件、原付自転車が0.8件の順である(図7)。また、自動車は1.8件であり、それと比べて126cc以上の二輪車は多いが、125cc以下では少なくなっている。



●図7 排気量別車両1万台当たりの死亡事故件数(1当及び2当)

死亡事故で多発する事故類型

 125cc以下、126cc以上で特徴が分かれる

 二輪車の死亡事故で多発する事故類型は、「右直事故」及び「出合頭事故」に代表される「交差点での死亡事故」と、「車両単独事故」(注3)及び「正面衝突事故」に代表される「交差点以外の直線及びカーブでの死亡事故」とに大別される(表1)。 これらの事故類型や運転者の年齢層を排気量別にみた場合、「126cc以上の二輪車」との間で明確な差異が生じる(図9)。

  *3:
車両単独事故とは、工作物・駐車車両への衝突及び路外逸脱等をいう。

(1)排気量126cc以上の二輪車の特徴

(2)排気量125cc以下の二輪車の特徴

●表1 死亡事故での二輪車の排気量別の多発事故類型
1位 2位 3位 4位 5位
原付自転車
   n=2,962
出合頭
1,012件34.2%
正面衝突
325件11.0%
工作物
247件8.3%
右 直
219件7.4%
駐車車両
196件7.1%
排気量51〜125cc
   n=606
出合頭
173件28.5%
工作物
69件11.4%
正面衝突
64件10.6%
右 直
47件7.8%
路外逸脱
46件7.6%
排気量126〜400cc
   n=3,197
工作物
579件18.1%
出合頭
458件14.3%
右 直
393件12.3%
正面衝突
373件11.7%
人対車両
303件10.0%
排気量401cc以上
   n=408
工作物
68件16.7%
右 直
56件13.7%
人対車両
52件12.7%
出合頭
48件11.8%
正面衝突
48件11.8%





●図9 死亡事故の排気量別運転者年齢層別比率

死亡事故での事故類型毎の特徴

交差点での死亡事故

(1)右直事故

 代表的な右直事故としては、1当が右折で、2当が直進である(図10)。 以下に右直事故の主な特徴点を示す。

 a.排気量126cc以上の二輪車の特徴

 b.排気量125cc以下の二輪車の特徴

(2)出合頭事故

 a.排気量126cc以上の二輪車の特徴

 b.排気量125cc以下の二輪車の特徴



●図11 出合頭事故での当事者種別、信号機有無別の死亡事故比率(%)

 以上のように「交差点での右直事故及び出合頭事故」では、排気量125cc以下の二輪車は1当として関与した事故が多く、二輪車の運転者への一旦停止や右折方法等の交通規則の遵守の徹底が望まれる。一方、126cc以上の二輪車は2当として関与した事故が多く、交差点付近では安全な速度と危険予測を徹底し、事故に巻き込まれないような防衛運転に心がける必要がある。

直線及びカーブでの死亡事故

(1)車両単独事故

 a.排気量126cc以上の二輪車の特徴

  *4:
険認知速度とは、運転者が相手方車両、人、駐車車両、または物件等を認め、危険を認知した時点の速度。具体的には、ブレーキ、ハンドル操作等の事故回避行動をとる直前の速度をいう。

 b.排気量125cc以下の二輪車の特徴



●図13 車両単独死亡事故での排気量別、道路線形別の比率(%)



●図14 車両単独死亡事故での排気量別、事故類型別の比率(%)

(2)正面衝突事故

 a.排気量126cc以上の二輪車の特徴

 b.排気量125cc以下の二輪車の特徴



●図16 正面衝突死亡事故での排気量別、道路線形別の比率(%)

 以上のように排気量126cc以上の二輪車の場合、車両単独事故及び正面衝突事故ではスピード超過のままカーブに突入し、曲がり切れずに事故に至っているケースが多い。したがって、これらの事故は自分の注意で防止することができるケースが多く、カーブでの安全な速度選択を身につける必要がある。このことは、125cc以下の場合でも同じことがいえる。ただし、直線路での路外逸脱、駐車車両への衝突事故では事故原因の十分な解明ができず、今後の事故例調査データでの解明が必要である。


まとめ


 二輪車の死亡事故で多発する事故類型は、「右直事故」及び「出合頭事故」に代表される「交差点での死亡事故」と、「車両単独事故」及び「正面衝突事故」に代表される「交差点以外の直線及びカーブでの死亡事故」に大別される。交差点での事故防止のためには、まず一旦停止等の交通規則を遵守するとともに、安全な速度と危険予測を徹底し、事故に巻き込まれないように防衛運転を心がける必要がある。次に、カーブでの事故は自分の注意で防止することができるケースが多く、そのためにはカーブでの安全な速度選択を身につける必要がある。また、二輪車では、第1当事者または第2当事者いずれの場合で事故に関与しても、二輪車乗員が重大な傷害を負うケースが多く、万が一の事故に備えてヘルメットを正しく着用する必要がある。


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