目次
はじめに
高齢者の交通事故による死者の特徴
歩行者中事故
自転車、原付自転車乗車中事故
自動車乗車中事故
地域比較
まとめ
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●図1 欧米諸国の高齢化率の推移と予測(国連資料1992年)
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●図2 年齢層別死者数の推移
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●図3 欧米諸国の年齢層別人口10万人当たり死者数(1991年 IRTAD) 注)各国の値は、30日以内の死者数に換算したもの。 |
状態別死者数
平成6年においてどのような状態で交通事故にあい死亡したかをみると(図4)、高齢者は歩行者が過半数(50.2%)を占め、自転車乗用中、自動車乗用中の順となっている。一方、若者は自動車乗車中が過半数(53.1%)を占めているなど年齢層別にその特徴が異なっている。
高齢者の状態別死者数の推移をみると(図5)、近年における年間死者数の最も少ない昭和54年に比較して、平成6年の歩行中死者数は581人増であり、増加数では最大となっている。一方、運転免許保有者の高齢化が進む中で自動車乗車中の死者数が急増しており、特に自動車運転中の死者数は、高齢者の運転免許保有者数の増加率を大幅に上回る勢いで増加している。
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| ●図4 年齢層別状態別死者数 | ●図5 高齢者の状態別死者数の推移 |
高齢者の人口10万人当たりの交通事故による死傷者数をみると(図6)、全事故では平均よりかなり少なく、後期高齢者(75歳以上)ほど少なくなっており、事故にあう頻度は低くなっているが、状態別で詳細にみると、歩行中では多くなるなど必ずしも頻度が低いものではない。
これは、高齢者が一般的に体力、視力、聴力などの衰えなどから交通事故にあいやすい反面、行動が慎重となる傾向にあるといわれているが、外出頻度、交通手段の違いなどによる要素が含まれているものと考えられる。
一方、人口10万人当たりの死者数でみると、16〜24歳の若者を除き、年齢が上がるとともに多くなり、後期高齢者の場合、全年齢平均値の2.7倍にもなっている。つまり、高齢者はいったん事故にあうと死亡する割合が極めて大きい。
これを致死率(交通事故にあって死亡に至る割合:死者数/死傷者数)でみると(図7)、高齢者の致死率は殆んどの状態の事故において他の年齢層に比べて高くなっており、特に歩行中の致死率が極端に高い。


●図7 年齢層別の状態別致死率
高齢者の死亡事故が発生した時間帯の分布をみると(図8)、歩行中を除く状態別ではおおむね昼間の時間帯に多発している。
一方、16〜24歳、25〜64歳層においては24時間ほぼ均等に発生している24時間型と深夜に多発する夜型に分かれ、年齢層で明確な特徴が認められる。

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●図9 歩行中の年齢層別死傷者状況 |
どのような歩行状態で死亡事故が発生したかをみると(図10)、高齢者は、横断歩道を含めて道路横断中における件数が82.1%を占め、後期高齢者はさらにその割合が高くなっている。
発生した人身事故件数のうち、死亡事故となった件数の割合(死亡事故率)でみると、高齢者の横断歩道以外での横断中の死亡事故率は、平均値の2倍以上となっており、特に後期高齢者は、横断歩道横断中、対面及び背面通行中においても死亡事故率が高い。
●図10 歩行中の年齢層別事故類型別死亡事故件数構成率(第1、第2当事者計)
歩行中の事故件数のうち、歩行者側に何らかの法令違反行為があったと見なされたものは、人身事故で52.9%、死亡事故で75.8%にも及んでいる。高齢歩行者に限ると人身事故で51.1%、死亡事故事故で72.0%となっている。
高齢歩行者の死亡件数のうち最も多い法令違反行為は走行車両の直前直後、横断歩道外の横断のような不適横断行為であり、他の年齢層と明確に区分される。(図11)。
●図11 歩行中(第1、第2当事者合計)の法令違反別死亡事故件数構成率
平成6年における自転車乗用中の死者数のうち、高齢者は578人で全体の50.9%と過半数を占めている。また原付自転車乗車中の死者数についても、高齢者は332人で全体の36.7%を占め最も多い年齢層となっている。どちらの事故とも高齢者の致死率は、16〜24歳、25〜64歳の年齢層に比較して非常に高くなっている(図7参照)。
自転車乗用中の高齢者の死亡事故の発生場所(第1、2当事者合計)をみると(図12)、交差点など(交差点付近を含む)で全体の68.1%が集中して発生している。また、事故類型では他の車両と出合い頭事故が49.8%と半数近くを占めており、自転車乗用者の法令違反行為は前後左右の安全確認、指定場所での一時停止を怠った行為が全体の40.5%を占めている。

●図12 高齢者の自転車乗用中の死亡事故の特徴(第1、2当事者合計)
原付自転車乗車中の高齢者の死亡事故は、交差点などで最も多く発生しているが、そのうち信号機のない交差点での件数が特に多い。事故類型では出合い頭事故が51.8%と大半で、その法令違反行為は指定場所での一時不停止が最も多いが自転車の場合に比較して前方不注意、ハンドル等の運転操作不適行為の割合がおおくなっている(図13)。

●図13 高齢者の原付自転車乗用中の死亡事故の特徴(第1、2当事者合計)
高齢者が自動車運転中に第1当事者として死亡事故をおこした件数は530件であり、自動車による全件数7,571件の7.0%であるが、自動車運転免許保有者1万人当たりの発生件数では、1.6件で16〜24歳の若者の2.4件に次いで高くなっている。
死亡事故の発生場所をみると(図14)、高齢運転者は他の年齢層に比べて信号機のない交差点、単路部のカーブ区間での発生割合が高くなっている。また、事故類型でみると(図15)、他の年齢層に比べて正面衝突、出合い頭事故の割合が高く、対人事故の割合が低くなっている。
●図14 発生場所別死亡事故件数構成率(第1当事者)
●図15 事故類型死亡事故件数構成率(第1当事者)
高齢運転者が死亡事故をおこした法令違反行為をみると(図16)、他の 年齢層に比べて最高速度違反の割合が非常に低い反面、ハンドルなどの運転操作 不適、前方不注意運転の割合が高くなっている。

●図16 自動車運転者(第1当事者)の法令違反別死亡事故件数構成率
人口の高齢化の度合いは地域に異なり、平成6年の人口推計によると、最も低い埼玉県(9.3%)の2倍以上にもなっている。また、平成4〜6年の3年間をみると(図17)、最も高い香川県(46.3%)は最も低い沖縄県(11.1%)の4倍以上となっており、地域による差異の大きいことが認められる。また、高齢化率の高い
県での高齢者の死者数割合は、大都市圏の都道府県のような高齢者率の低い地域に比べて、高齢化率の大きさ以上に高くなっている。
図18は、都道府県別に図17より4つのランクに区分したものであり、ランクTは高齢化率、高齢者の死者数割合の両者ともに全国平均レベルよりも高い地域である。
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| ●図17 高齢者の死者数割合と高齢化率との関係 | ●図18 高齢者死者数割合のランク別地域分布 |
高齢者が外出に利用する主な手段を調査した結果によると(図19)、大都市では徒歩及びバス、電車等の公共交通機関利用の割合が高く、自転車原付等、自動車び利用割合が低く、小都市、町村では逆に自動車原付等、自動車利用の割合が高く徒歩の割合が低くなっており、都市規模による交通手段の差異が認められる。
平成4〜6年の3年間の高齢者の死者数の状態別構成率を三角座標でみると(図20)大都市圏の都府県では、大都市型交通手段と考えられる歩行中の死者数割合が高く、地方部の道具では小都市、町村型の自転車原付等、自動車乗車中の死者数の割合が高い傾向が認められている。
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| ●図19 高齢者の外出に利用する手段(総務庁調べ) | ●図20 都道府県別高齢者の状態別死者数の構成率 |
わが国の高齢者の交通事故による死者数は、高齢化の急激な進展に伴い急増している。
その主な特徴として、交通弱者としての歩行中の死者数が過半数を占めていること、運転免許保有者の増加に伴う自動車運転中の死者数が急増していることであり、被害の程度、発生場所、時間帯、事故誘発行為など他の年齢層の場合と異なる傾向があること、さらに、地域により高齢者の死者数割合、死亡事故の内容に相違があることが明らかになった。
今後、高齢者の交通安全対策の主要課題として、高齢歩行者及び高齢ドライバーに対しての抜本的な対策が必要であるが、当面緊急になすべきことは高齢者自身がこの厳しい交通事故の実態を自覚して行動するとともに、周囲の人々が高齢者に対する思いやりのある交通行動を行うよう教育、啓発活動を徹底することが必要であろう。