イタルダ・インフォメーション
1995 MAY No.4


分析! 歩行者事故


目  次

 はじめに
 1.歩行者事故の推移
 2.どういう歩行状態で事故に遭うか
 3.道路横断中の歩行者事故は何時頃に多いか
 4.歩行者はどちら側からの横断中に事故に遭っているか
 5.歩行者はどんな違反をしているか?
 まとめ
 


はじめに


 平成6年の交通事故発生件数(人身事故のみ)は729,457件(前年比+0.7%)、死者数10,649人(前年比-2.7%)、負傷者数881,723人(前年比+0.4%)という結果であった。 依然として高い水準で推移してきており、死者数においては、昭和63年以降7年連続して1万人を越えるという結果となった。
 状態別死者数では、自動車乗車中の死者数が4,482人で幾分減った(前年比−7.3%)ものの、比率としては42.1%を占めており一番多い。
 一方、歩行中の死者数は2,886人(前年比−2.7%)で27.1%を占めて二番目に多く、ここ十年間、その比率が27〜30%で推移していてあまり変動が見られないようであるが、内容的には大きく変化してきている。
 状態別死傷者数の構成率を欧米主要国と比較すると、日本では歩行中の死者の割合が高く,アメリカ、ドイツ、フランス等の約2倍になっている。イギリスも日本と同様に歩行中の死者の割合が高い(図−A)。
 そこで今回は、歩行者事故に焦点を当てた分析を行なった。

図−A 欧米主要国の状態別交通事故死者構成率(1992年/平成4年)


1.歩行者事故の推移


高齢歩行者の死亡が増加傾向!


 歩行中の事故による負傷者数は、昭和51年には108,014人であったが年々減少し、平成2年には82,304人となった。しかし、平成3年以降再び増加している。年齢層別では6歳以下の幼児と7〜12歳の小学生,及び65歳以上の高齢者に特に多い。
 歩行中の死者数は、昭和50年代まで年々減少傾向にあって、昭和59年に2,576人の最低を記録したが、60年代に入り再び増加に転じてきている。年齢層別にみるとこの中で特に高齢者の死者が急増しており、昭和54年は974人で、その比率が33.7%であったものが、平成4年には1,563人で50.0%となり、その後も更に増加し続けている(平成6年では53.9%に至っている。)(図1−1)。
 これを人口10万人当たりでみると,全体で占める高齢者の死者が高いレベルで、かつ増加傾向にあることがわかる(図1−2)。
 歩行中の負傷事故で比率の高い幼児・小学生は、死亡でみると昭和54年には24.0%を占めていたが、平成4年には、7.3%にまで減少している。平成4年における年齢層別の歩行中の死者数と負傷者数でみても、いかに高齢歩行者の死者数が多いかがわかる(図1−3)。
 この2つの年齢層の特徴として、幼児・小学生は事故に遭う度合いは多いが死亡に至るものは少なく、また、高齢歩行者も事故に遭う度合いが高く、いったん事故に遭うと死に至る確率も高いということが云える。

図1−1 歩行中死者数の経年変化 図1−2 歩行中死者数の経年変化:人口10万人当り


図1−3 年齢別歩行中の交通事故負傷者数と死者数(平成4年)

2.どういう歩行状態で事故に遭うか


危険な横断歩道以外の横断


 歩行者が交通事故に遭うのは道路横断中が殆どであり、平成4年の人対車両の事故による全人身事故82,232件中、歩行者に被害の及ばなかったものを除いた82,048件の内、58,309件(71.1%)が道路横断中に起きている。歩行者死亡事故では、3,004件のうち2,189件(72.9%)が道路横断中の事故である。しかも、共に半数以上が横断歩道以外(横断歩道付近、横断歩道橋付近、その他)を横断中に発生している(図2−1)。


図2−1 事故類型別死亡事故件数(歩行者に被害の及ばなかったものを除く)

3.道路横断中の歩行者事故は何時頃に多いか


子供は14〜18時
高齢者は16〜20時


 次に、歩行者が道路横断中の事故発生状況を時間帯別にみると、夕方から夜間の比率が高く,特に死亡事故は夜間が圧倒的に多い。
 また、事故の多発する時間帯が年齢層によって違いがある。全人身事故では6〜8時に急に増え始め、16〜18時が一番多く、また14〜20時の6時間で約半数を占めている。14〜18時は幼児・小学生に多く、16〜20時は高齢者に多いのが目立つ(図3−1)。
 歩行者が死亡事故は、約70%が夜間に発生しており、他の車両相互、車両単独の死亡事故よりも夜間の比率が高い。道路横断中の歩行者死亡事故は、特に16〜18時に急増し、18〜20時まで続いている。16〜20時では高齢歩行者の死者が圧倒的に多く、この時間帯4時間で高齢歩行者死者全体(1、226人)の44.0%(540人)を占めている。幼児・小学生の死亡事故は14〜18時にかけて多く、下校時の遊戯時間、帰宅時間帯に発生しており、40歳から50歳代の中年層は、18〜2時にかけて多く、飲酒後の酩酊・徘徊する時間帯に発生していることが想像できる(図3−2)。

図3−1 時間帯別人身事故件数
(平成4年)
図3−2 時間帯別死亡事故件数
(平成4年)


4.歩行者はどちら側からの横断中に事故に遭っているか


高齢者は夜間、
右側から横断中に事故に遭う


 車が直進している時に、歩行者は左右どちら側から横断してきて事故にあっているかを見ていく。全人身事故でみると、昼間では幼児・小学生を中心に全体として車の進行方向の左側から飛び出して事故にあっているケースが多く(60.7%)、高齢者の場合も左側からが多い(63.6%)。
 夜間においては高齢者は右側から横断してきて事故にあっているものが多くなり(55.2%)、夜間の高齢歩行者事故の特徴になっている(図4−1)。
 死亡事故では、昼間でも右側からの横断歩行者が増え、夜間になると全体としても右側から出てくる横断中のケースのほうが多くなっている(図4−2)。
 これは、夜間は歩行者にとって走ってくる車の速度が分かりにくいことと、車の運転者からは右側から出てくる歩行者が見えにくいことに起因するものと考えられる。

図4−1 人身事故における歩行者の横断方向(車両直進中) 図4−2 死亡事故における歩行者の横断方向(車両直進中)


5.歩行者はどんな違反をしているか?


子供の飛び出し、中年の酩酊・徘徊、
高齢者の信号無視


 歩行者の全人身事故82,048件の内50,465件(61.5%)、死亡事故3,004件の内2,301件(76.6%)と半数以上が歩行者側に何らかの交通違反行為があり、事故発生の原因の一つとなっている。
 死亡事故では「不適横断」が最も多く約56%を占め、特に高齢者にこの違反が多いのが目立つ。13〜39歳及び40〜64歳代に「酩酊・徘徊」が他の年齢層に比べて圧倒的に多いが、この中では、20歳以降の「酩酊」が大半を占めていると予想される。幼児と小学生では「飛び出し」が突出していることが分かる(図5)。

図5 死亡事故における歩行者の違反の内訳(平成4年)


まとめ


 子供は、交通安全教育等の効果で、人口10万人あたりの死者数が減少し、人口も減少している為、死者の絶対数は年々減少しているが、事故の特徴は、14時から夕方にかけ、飛び出し等によるものが多い。また、高齢者では、人口10万人あたりの死者数は横ばいであるが、人口が増加している為、死者数は年々増加している。高齢者事故の特徴は、夕方から22時に運転者から見て、道路を右から左に横断中の事故が多い。以上の分析結果から、夜間の歩行者は、車の運転者から見えにくいので、歩行者側も相手によく見えるよう、目立ちやすい服装や、反射材等をつける等、運転者にその存在を知らせる工夫等が、交通事故の回避に効果的であることがわかる。

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