シートベルト着用の効果
シートベルトは車外放出を防止
事故例調査1
事故例調査2
バリア換算速度と傷害の程度
前号では、世論調査等による「シートベルトを着用しない理由」に注目し、実際に発生した事故データ分析を通じて、それらの理由が的を射たものでないことを示した。
「シートベルトは事故発生時に人身に及ぼす被害を軽減する効果がある」こと、また「事故は以外に身近で起こっている」こと、「シートベルトによって運転が妨げられることはない」こと等をデータ分析の結果をもって示した。
今回は、「シートベルト着用の効果」について、事故統計データの分析によるものと、当センターが独自に実施している交通事故例調査の中から具体的な事例を通して実証し、ベルト着用の必要性を示したい。
シートベルトの着用効果としては次のようなことが考えられる。
@軽微な事故において、乗員の車室内部品との衝突を防ぎ、負傷を防ぐ。
A激しい事故において、乗員の車室内部品と衝突する際の衝撃を緩和し、被害を軽減する。
B車両単独事故等で衝突時に車両が複雑な挙動をするケースにおいて、乗員が車外に放出されることを防ぐ。
これらに関して、平成4年の交通事故統計データをもとに分析した。
軽微な事故において負傷を防ぎ、激しい事故において被害を軽減
シートベルト着用の効果を見るために、人身事故に関わった車両の運転者の傷害程度を、シートベルト着用の有無別で比較した結果を表1、図1に示した。
まず「軽微な事故において、負傷を防ぐ」という点では、事故に関わった車両運転者1,000人当たりの無傷者の数を比較すると、ベルト非着用では426人であるのに対し、着用では524人が無傷となっている。すなわち、ベルト着用によって運転者1,000人当たり約100人が怪我をまぬがれているということがわかる。
次に「激しい事故において、被害を軽減する」という点では、事故に関わった運転者1,000人当たりの死者数を比較してみると、ベルト着用では15.2人が死亡しているのに対し、着用では1.1人で約1/14となっている。また重傷以上となった人数の比較では、非着用では61.5人、着用では15.8人で、約1/4となっている。すなわちシートベルト着用によって、死亡、重傷という重大な被害が大きく軽減されていることがわかる。
| 死 亡 | 重 傷 | 軽 傷 | 無 傷 | 合 計 | |
|
非着用(人)
1,000人当り |
859
15.2 |
2,613
46.3 |
28,932
512.2 |
24,086
426.4 | 56,490 |
|
着 用(人)
1,000人当り |
261
1.1 |
3,380
14.7 |
106,059
460.7 |
120,510
523.5 | 230,210 |

●図1 運転者1,000人当たりの死傷者、無傷者数(人)
*集計対象:車両相互(二輪車、自転車との衝突は除く)及び単独事故の第1、2当事者、普通乗用車の運転者(右ハンドル車の1人乗車の場合のみ)


シートベルト着用は車外放出による死傷を防止する
自動車乗車中の事故による死者4,783人のうち、車外放出者は621人(13.0%)で、8人に1人の割合で発生している。特に高速道路では自動車乗車中の死者403人のうち、車外放出死者数は128人(31.8%)と、3人に1人の割合で、一般道路に比べて比率が高くなっていることがわかる。これをシートベルト着用の有無別で見ると、着用していて死亡した1,002人のうち、車外放出者は10人(1.0%)、非着用で死亡した3,678人のうち、車外放出者は611人(16.6%)となっている(図4)。すなわち、シートベルトを着用していればほとんど車外放出は起こらないが、非着用の場合、6人に1人が車外放出されて死亡していることになる。


分析センターが独自に実施している交通事故例調査(ミクロ調査)の中で、シートベルト着用か非着用かにより、自動車乗員の被害の程度に大きく差があった2つの事例を紹介する。
車両の損壊が比較的大きい事故であったにもかかわらず、シートベルトを着用していたことにより、乗員の被害が軽減された
ある国道において昼間、強い雨の降る中で発生した、右折中の車両A(若い女性aの運転する普通乗用車)と直進してきた車両B(中年男性bの運転する普通乗用車)との車両相互の右直事故である。(図6)

| ・写真A(車両A) | ・写真B(車両B) |
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車両の損壊程度が比較的小さかった事故にも関わらず、シートベルトを着用していなかったため、乗員が死亡した
高齢の女性が運転するボンネット型軽貨物車が走行中、交差点に飛び出してきた犬を回避しようとして、急ハンドルを切ったところ、交差点左角の石垣に衝突した単独死亡事故である。(図7)

・写真C

運転者、助手席乗員とも、3点式シートベルトを正しく着用したならば、被害を軽減できたものと推定される事故である。
シートベルトを着用していなければ、車室内での二次衝突による乗員の傷害発生に運・不運があり、比較的低い速度25km/h程度の衝突でも、大きな傷害を受けた事例である。
ベルト非着用の場合、30km/h未満でも死亡するケースがある
平成4年度運輸省の事故例調査の結果によると、バリア換算速度と傷害程度の関係は、図8に示す通りで、シートベルトを着用していない場合には30km/hでも重傷又は死亡するケースがあるが、シートベルトを着用していれば、軽傷程度となっており、50km/h程度でも死亡に至ることは少ないといえる。
このように、事故統計データの分析や実際の事故例調査でも実証されているとおり、「シートベルトの着用による効果」は、衝突時に運転者や乗員がハンドル、前面ガラス、ピラー等の室内部品へ二次衝突するのを防止したり、被害を軽減させるだけでなく、乗員の車外放出による被害を防止するなどがある。その「効果の大きさ」を再認識し、シートベルト着用をさらに推進、徹底すべきである。